20 えんどろーる
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「なぁ、服部と喧嘩でもしたのか」
珍しく工藤に呼び止められたと思ったら、少し顔を寄せて小声でそう聞いてきた。
「え?してないよ。昨日もお泊まりしたし」
「そうか。喧嘩じゃないとすると…まさかオメー、浮気とかしてねぇよな?」
「するわけないじゃん!工藤ってば失礼な!」
「悪い悪い。あいつがあんな頭抱えて悩むなんて野々村関連だろうって思ってさ。なんか心当たりねぇのか?」
「え…平次、頭抱えて悩んでるの?」
「おう。朝からずっと考え込んでるみたいだぜ」
確かに朝から何か考えてるなとは思ってたけど。てっきり事件だと思ってた。けれど心当たりは全くない。
「えー、なんだろう。昨日も沢山イチャイチャしてそのまま寝落ちしたくらいなのに…」
「そ、そうゆう話は言わなくていいっての!」
「あら。案外そこ絡みなんじゃない?恋人の別れの原因の1番は性行為問題だって言うし」
「志保!え!もしかして平次、満足出来てないのかな?!」
「おいおい、志保!んな訳ねぇだろ?だってあいつ初めての後俺らに散々惚気けて…って、やべ。今の内緒な」
「そうね。満足云々より、性癖とかなんじゃない?」
「せっ…性癖…!!」
「そうと決まった訳じゃねぇからな?!野々村!おい、聞いてっか?!」
確かにそれなら頭を抱えて悩むのも無理はない。特別な性癖があったとしたら、打ち明けるのには勇気がいるだろうし。
(ここはひとつ、私から話題をもちかけてあげなければ…!)
理解できるかどうかは別として、受け入れてあげなくては。でも出来れば心の準備をしたい。
「だから、黒羽何か知らない?平次の性癖について」
「全く話の流れ見えねぇし知るわけねぇだろうが。俺が服部の性癖なんて」
「駄目か〜。工藤も志保も何も知らなかったし…黒羽ならワンチャンと思ったのに」
「お前俺をなんだと思ってんだ。つーか、そんなの本人に聞きゃいいだろ。付き合ってんだから」
「だって変な反応して傷つけたりしたくないし。ある程度知っとけばそうはならないかなって」
「俺が知ってんのは、あいつは誰よりも野々村を好きだって事と、変な反応の一つや二つで傷つく様なちいせぇ男じゃないって事だな」
確かに黒羽の言う通りかもしれない。でもとてもディープでデリケートな問題だからこそ慎重になってしまう。
「…服部と美衣って喧嘩中?」
「いいえ。お互いそれぞれ何かを思い悩んでるみたいだけど」
「ミイラ取りがミイラになっちまってんじゃねぇか」
「ったく。悩む事ねぇって言ったのによ〜」
「服部、もしかして帽子の被り方が違うから調子出ないんじゃないの」
「は?帽子がなんやて?」
「いつもつばを後ろにして被ってるのに、今日前じゃん。そのせいで調子出ないのかなって」
「た、確かに!紗奈天才?!」
「アホ。たまたまや、たまたま。それにずっと後ろ向きなわけちゃうし」
確かに前までは割と前向きで被っていたような気がする。ずっと後ろ向きだったのはここ最近だ。
(帽子と性癖…関係ある…?)
「わかった。キスしないようにする為だ」
「なっ…」
「キス?それと帽子の被り方となんか関係あるの?」
「前キャップ被ってた時、つばが前にあるとキスしにくいって黒羽が言ってたから」
「ばっ!おまっ…!」
「…紗奈、キスされたの?黒羽くんに」
「あー!!お、俺!用事あんだった!ほら、堤もだろ?!じゃお先!」
「…逃げやがったなあいつ」
紗奈の手を引いて慌ててその場から立ち去った黒羽。その行動がもうイエスと言ってるようなものだ。
「それで?お前はお前で図星って顔だな、服部」
「そんな顔してへんわ」
「あら。素直になった方が身のためよ。邪魔者は退散してあげるから」
「じゃあな。ちゃん解決しろよ」
工藤と志保も気を利かせて席を立ってくれて、私と平次は2人きりになる。自然と目が合う。
「…あの、平次。帽子、本当にキスしないように前に被ってるの?」
「せや。気休めくらいにしかならへんけどな」
「どうして?したいならすればいいじゃん」
「お前が言うたんやんけ。あんまキスせんとってくれって」
「……へ?」
「昨日寝る前、やり終わった後にあんまキスせんとってくれって言うたやろ。理由聞こ思うたら、寝てまうし」
「そ、そういえば…言ったね」
「あれからずっと理由考えてんけど、わからへんくて。なんでなんか教えてくれへん?」
今の今までそんな事を言ったのすら忘れてた。なのにそれでずっと頭を悩まさせてたなんて、申し訳なさが募る。
「俺の事嫌いになってもうたんか?」
「まさか!!違うよ!あれは、好きって言いたいのにキスいっぱいして口がふさがって全然言えなかったからで!」
「な…なんやてぇ?」
「いや本当にごめん!まさかそんな悩ませてるとは思わなくて!キスしたくないとかじゃ全然ないの!」
「はぁー、もー。なんやねん。めっちゃ悩んで損したわ」
「ご、ごめんね」
「キスしてくれたら許したる」
甘えるような平次の瞳に胸が高鳴る。帽子を一度脱がせて、後ろ向きに被らせる。そしてちゅっと、キスをした。
「そんなんじゃ足らへん」
「んっ…!ちょっ、ここ大学だよ?!」
「誰も見てへんしええやろ」
「だ、駄目…って、ま、まさか!これが平次の性癖?!」
「は?」
「見られたい願望的な?!そうゆう感じ?!」
「おいおいちょお待て!何を1人で暴走しとんねん!そんなんとちゃうぞ!」
「大丈夫だよ平次!私どんな性癖でも引いたりしないから!正直に言って!ばっちこい!」
「せやからちゃう言うとるやろ!!人の話聞けこのアホ!!」
せっかくのムードも台無しになってしまったけど、帽子を後ろに被りなおさせたおかげで。アホって言いながらも笑う彼の顔が、よく見えた。
えんどろーる
(ちゅうか、好きって言えへんでもキスしとるんやから伝わるやろ)
(たっ…確かに…!!)
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