18 やくそく
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ジェットコースターに乗った後、紗奈が食べたがったホットドッグのキッチンカーに並んでる時、黒羽から電話がきた。
「もしもし。黒羽?どうしたの」
「おー、悪いな野々村。堤と一緒なんだろ?あいつ全然連絡つかなくてさ」
「ずっと何か食べてるからね。スマホ見る暇ないんだよ」
「だと思ったぜ。その様子じゃ気にしてねぇだろうけど、偽キッド捕まえたら戻るって言っといてくれるか」
「うん。伝えとくね」
「あとさ、服部の事なんだけど…ごめんな」
「なんで黒羽が謝るの?」
「詳しくは言えねぇけど、俺のせいなとこもあるからさ。他の事件ならまだしも、キッドが絡んじまってるから俺も服部も、引くには引けねぇんだ」
やっぱり平次とキッドは友達なんだろうか。黒羽もファンらしいって紗奈が言ってた。詳しく言えないってことは、それを確かめる術はないけど。
「黒羽、なんだって?」
「紗奈に偽キッド捕まえたら戻るって伝えてくれって」
「ふーん。私に連絡すればいいのにね」
「連絡つかないからって言ってたよ。さっきから1回もスマホ見てないでしょ」
「あ、たしかに。ポップコーン食べた手で触れないからしょうがない」
「紗奈はさ、黒羽とキッドがどうゆう関係なんだろって気になる?」
「いや全く。熱狂的なファンだと思ってるから別にそれでいい」
「あはは。さすが!さ!次行こ次!」
私もきっと、服部が友達だったなら気にならない。でも今は。変に勘繰ってしまう自分がいる。
「黒羽。どこ行っとってん」
「ちょっとな。なぁ、服部。本当にいいのか?ここにいて。野々村とやっと付き合えたのによ」
「よりによってキッドを名乗っとんで?見過ごせるわけないやろ。美衣には、ちゃんと謝る。それで駄目やったら、それまでや。やっぱり俺に恋愛は無理やったって笑うてくれ」
「…笑えるかよ、バカ」
「ほら!そんな辛気臭い顔しとったら捕まえられるもんも捕まえられへんで!シャンとせぇよ!」
「おう。絶対捕まえてやろうぜ」
「当たり前や」
今までは気にならなかった部分が、気になりだす。知らなかった欲が、顔を出す。人を好きになるとこんなにも、人は変わるんだ。
「お腹いっぱいかも」
「でしょうね!本当にキッチンカー制覇したもんね?!」
「美衣も、あと1個で乗り物制覇じゃん」
「え?あー、観覧車はいいや。ただ高いだけってなんか怖いし」
「そ?じゃあどうする?お土産買う?夕飯食べる?」
「さっきお腹いっぱいって言ってなかった?!」
「夕飯は別腹」
「聞いたことない別腹!!」
結局、平時から連絡はないまま夕方になってしまった。何も届いてないスマホを見て小さくため息をこぼす。
「…パレード見る?好きじゃん、そうゆうの」
「あ、見たい!けど、あと30分はあるよ?」
「いいよ、待とう。ポップコーン補充してくる」
「まだ食べるんかい!」
1箇所でじっとしてるの苦手なのに、紗奈に気を遣わせてしまった。けど気分が落ちこみそうだから、素直に甘えることにした。
(あ、あの人ショーのスタッフかな?タキシードにマント…あれ。あの格好、どっかで…)
向こう側から走ってくる男。見覚えのあるその格好を、どこで見たのか考えてると、男が目の前で足を止めた。
「え…」
「こんにちは。可愛いウサギさん」
「あ、こ、こんにちは!ショーのスタッフさんですか?」
「ええ。実はショーに参加していただくゲストを探してまして。良ければどうです?」
「え!やりたいです!!」
「では一緒に行きましょう。すみませんがあまり時間がないので、駆け足で」
「あ、ちょっ!あの、友達が!」
「大丈夫。ポップコーンワゴンにいるお嬢さんでしょう?別のスタッフが説明に向かってますから」
「あ、そうなんですね」
ぐいっと手を引かれ戸惑いながらも後方のワゴンを見れば、確かに紗奈がスタッフさんと話してる後ろ姿が見えた。
「お客様、なにかお困りですか?」
「え?いえ、何も」
「あれ。先程お連れ様だとおっしゃる男のお客様から彼女が困ってるから話しかけてやってくれとお声掛けを頂いたのですが」
「私じゃないです」
「そうですか。それは失礼しました」
スタッフが首を傾げながら離れていく。ポップコーンバケツを満タンにしてもらって、美衣の待つ場所へ向かったけど。
「…美衣?」
そこに彼女の姿はなくて。近くを探してみたけど見つからない。電話をかけても、繋がらなかった。