17 かれしはたんてい
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「平次!あれ!あれ乗ろう!!」
「おっしゃ!全制覇したろうで」
今日は平次とトロピカルランドデート。遊園地ってだけでテンション上がるのに、彼氏と来ちゃってるもんだからいつも以上にハイテンションだ。
「待って!その前にあれ買おう!マスコットキャラの被り物!」
「はぁ?いらんやろ。あんな何の役にも立たへんもん」
「何言ってんの!楽しむための必需品だよ?!私、ウサギにするから平次はリスね」
「おい!これめっちゃ高いで?!」
「遊園地で値段気にしたら負けだよ!」
「コレで飯食えるっちゅうんじゃ」
「じゃあこっちでもいいよ!クマのお面!」
「あー、まぁ、このくらいならええか」
「やった!じゃあ私もお面にしよっと!」
それぞれお面を買って頭の横にかぶる。お店のショーウィンドウに映る私達の姿に思わず頬が緩む。
「嬉しそうやな」
「うん!バカップルって感じで嬉しい!」
「バカップルが嬉しいなんて変なやっちゃな」
「それだけラブラブって事じゃん!ね、あそこのスタッフさんに写真頼も!」
「あ、こら!走ると転ぶで!大はしゃぎやな」
「そりゃはしゃぐよ!彼氏と遊園地とか好きと好きのかけあわせだもん!」
「…くそ可愛ええ事言うやんけ。キスしてええ?」
「外では駄目でーす!あの、すみません!写真お願いしていいですか」
声をかけたスタッフさんは快く引き受けてくれて、無事にツーショットを撮った。お礼を言って立ち去ろうとした時、スタッフさんがインカムから聞こえてきた声に何やら驚く。
「え?!か、怪盗キッドから予告状?!」
「なんやて?!おいあんた!デタラメ言うとんちゃうぞ!あいつはもうおらん!俺らに何も言わんと予告状なんか来るわけあらへんねん!」
「ひぇっ…あ、あの、今サービスカウンターに届いたようで…私も詳しくはっ…」
「サービスカウンターやな?!美衣!すぐ戻る!そこで待っとれ!」
「え?!ちょっ、平次!」
私の声に振り返ることなく平次は走って行ってしまう。まさか遊園地でぼっちになる日がこようとは。
(え〜…。平次ってキッドと知り合いなの?俺らになんも言わんとって…かなり動揺してたし、仲良しなのかな)
とにかく言われた通り邪魔にならない壁際に移動して彼を待つ。楽しげに人々が通り過ぎるのを眺めながら。
(…いや遅くない?!もう15分経ちましたが?!遊園地来てるのに待ちぼうけとか勿体なさすぎる!)
「あれ。美衣?」
「え。紗奈ー!!えー!黒羽と来るの今日だったの?!」
「うん。でも黒羽どっか行っちゃって」
「同じだよー!平次もどっか行っちゃって待ちくたびれてたとこ」
「律儀に待ってんの偉すぎ。チュロス食べようよ。すぐそこのキッチンカーだから」
「食べるー!わーい!紗奈と出会えてよかったぁ!」
チュロスを買って近くのベンチに座る。遊園地で食べるチュロスってどうしてこんなに美味しいんだろう。
「服部、事件?」
「んー、わかんない。なんかキッドからの予告状がどうのって」
「一緒。黒羽もスタッフ達が話してたの聞いてどっか行った」
「仲良しなのかな?」
「さぁ。でも黒羽はファンなんだと思う。前そんなこと言ってた気がする」
「そっか。だからって一緒に来てる相手放置はひどくない?」
「それな。私はまだしも、美衣は付き合ってるから余計おこだよね」
「ほんとだよ!デート中に彼女放ったらかしとか!」
せっかく楽しみにしてたのに。乗り物全制覇しようって言ったくせに。連絡のひとつもよこさないし。
「そっちがその気ならこっちもだ!紗奈!ジェットコースター乗ろ!」
「ジェットコースターよりキッチンカー制覇したい」
「そう言わずにー!ポップコーンバケツ買ったげるから!」
「よし行こう」
「わーい!行こう行こう!」
平次から連絡がきたのは、ポップコーンバケツを買ってジェットコースターの列に並んでる時だった。
「もしもし」
「美衣!すまん!連絡遅なってもうて!」
「すぐ戻るって言ったのは誰ですか〜」
「ホンマにすまん!まだあっこおるか?」
「いません。紗奈と出会ったから、ジェットコースターの列に並んでる」
「堤と?そらよかった!実はその、偽のキッドから予告状が届いとってな。それで、悪いけどもうちょいかかりそうやねん」
「ふーん。もうちょいってどのくらい」
「え、えっと…20…いや、30…は、早くて30分くらいとちゃうかなって…感じなんやけど…」
煮え切らない態度。きっとその偽の予告状の犯人を捕まえるまで戻る気はないんだろう。
(平次は探偵だもんね。でも、せっかくの遊園地デートだったのになぁ…)
「あ、あの…美衣?聞こえとる?」
「聞こえてる。じゃあ終わったらまた連絡して」
「おう!そらもちろん!」
「順番来るから切るね」
平次の返事を待たずに電話を切る。そんなに偽の怪盗キッドが大切なのか。そう思うとどうしても、ムカつかずにはいられなかった。
かれしはたんてい