15 すきなひと
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「あ、やっと帰ってきた」
「なんや。わざわざ外で待っとったんかい」
服部の実家に帰ると、家の外で黒羽と紗奈が待っていた。手にはコンビニ袋。
「服部いねぇのに家入んのは気が引けてな」
「連絡してくれたら急いで来たのに」
「なんか黒羽が邪魔しちゃ駄目だって連絡させてくれなかった」
「それで?決めてきたんだろうな」
「ああ。おかげさまでな」
「マジか!!やったじゃねぇか!」
「何?何の話?」
「服部と野々村、やっと付き合ったってさ!」
「まじか」
「黒羽も気付いてたの?私が服部を好きって」
やっとって事は、前から好きだと知ってたってことだ。黒羽は得意気に笑う。
「まぁな。明らかに前と違ったし」
「そうだっけ?」
「そうだよ。朝一番に服部に声かけるようになったし、服部についての質問が増えたし、それから」
「く、黒羽!もういい!恥ずかしい!」
「なんだよ、照れなくてもいいだろ。なぁ?服部」
「さっさと家入んで」
「お前も照れてんのかよ」
「美衣、おめでとう」
「ありがとう、紗奈」
家の中に入るとお母様が出迎えてくれて、お風呂の用意してあるから自由に使ってと声をかけてくれた。
「ほな野々村と堤、先入りや」
「ありがとう。そうする」
「温泉だったりする?」
「せんわ。ハードルあげんな」
お言葉に甘えて紗奈と2人でお風呂へ向かう。シャワーと湯舟を順番に使うことにして、先に湯船につかる。
「は~気持ちいい〜」
「美衣、服部のこと好きなんだね」
「あ、うん。私も今日気付いたんだけどね」
「私と客間で寝る予定だったけど、変わろうか」
「変わらなくていいよ。なんかまだ、どんな顔したらいいかわかんないし…」
「恋する乙女だ」
「やめてー。恥ずかしい。ね、紗奈はなんもなかったの?2人になりたかってたじゃん、黒羽!」
「特に何も。普通にご飯食べてコンビニ寄って帰ってきたし」
洗い終わった紗奈と交代して湯船から出る。高そうなシャンプーだと思いながらポンプを押す。
「とゆうか、私と2人になりたいんじゃなくて、服部と美衣を2人にさせたかったのでは」
「そ、そうゆうこと?!私そんなにバレバレだった?!」
「うーん。気にしたことなかったから分からないけど、黒羽よく見てるし」
「たしかに。じゃあ工藤と志保にもバレてるのかなぁ」
「100%バレてるね」
「えー、恥ず」
お風呂から上がって持ってきたパジャマに着替え、保湿をしてドライヤーで髪を乾かしてからら服部達が待ってる客間へ向かう。
「お待たせ」
「ドライヤー借りたよ」
「あ、おう。かまへんで」
「んじゃ次、俺入ってくるわ」
「ほな、俺も部屋おるわ。布団敷いてあるし、好きに寝てええから」
「え。もう行っちゃうの?」
「彼女が寂しがってますぜ旦那」
「察してやれよお前ら。好きな女の湯上り姿なんて男には刺激が強すぎんだよ」
「やかましわ。とっとと風呂行け」
「いって!せっかくフォローしてやったのによ」
好きな女の湯上がり姿。そうゆうもんなのか。なんていうか、もっと可愛いパジャマにすればよかった。
「安心して服部。襲いそうになったらお母さん呼んであげるから」
「悪魔みたいな奴やな」
「じゃあ私もお母さんって叫ぶね」
「やめぇ!トラウマなるわ!ったく…明日は朝から京都行くんやろ?」
「うん。いい加減課題やらないと」
「今日は思い切り大阪満喫したもんね」
「ほな家で朝飯食ってそっから」
「あ、大丈夫。さっきコンビで朝ご飯買ってきたから、行きながら食べる」
「言えや。俺らも買うて来たのに」
「えーっと、だから、服部と美衣は着いて来なくて大丈夫。2人でデートすればいいよ」
何かを思い出すようにそう言う紗奈。不自然なその感じに、服部がじとっとした目をする。
「黒羽にそう言えって言われたんやな?」
「な、何故バレたし」
「余計な気使いおって。元々それが目的の旅行やろ」
「服部。それは違う。課題はあくまでついで。大阪と京都で美味いもの食うのが本来の目的だ」
「おいこら。開き直ってんちゃうぞ」
「大丈夫。課題は黒羽にやらせ…手伝ってもらうから」
「本音ダダ漏れやんけ」
服部と紗奈の会話を聞きながらスマホで京都のデートスポットを調べてると、黒羽が客間に入ってくる。
「上がったぜ〜」
「早。カラスの行水じゃん」
「男なんてみんなそんなもんだっての」
「ほな風呂入ってくるわ」
「私はもう眠いから寝る」
「堤はほんと何処にいても揺るがねぇな」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてねぇよ。何時に出る?」
「…起きたら」
「おいこら。寝坊する気満々じゃねぇか」
眠たそうな顔で布団にもぐり込む紗奈。1分も経たないうちに寝息が聞こえ出す。
「寝るの早」
「ねぇ、黒羽は紗奈のこと好き?」
「そりゃ友達としてなら普通に好きだけど」
「じゃあやっぱり、私と服部を2人にするためにあんな思わせぶりを?チャラ男め」
「待て待て待て。めちゃくちゃ心外だ!そもそも、気きかせてんのに気付いてねぇの野々村だけだからな?」
「気付いてても期待しちゃうよ!あんな思わせぶりな態度!」
「服部の好意に長らく気付かなかったお前にだけは言われたくねぇよ!」
そう言われてキョトンとする。特に根拠はないけど、服部も最近私を好きになってくれたんだと勝手に思ってた。
「長らく?」
「そうだよ。服部、ずっとお前のこと好きだったんだからな」
「嘘だ!そんな素振りなかったもん」
「はぁ〜。可哀想になるぜマジで。あのなぁ、何とも思ってない奴の飯食い終わんの長々と待つか?」
「え…」
「いつもお前の好きそうな菓子持ってんのも、ネイルだの髪だの変化に気付いて言うのも、あっちこっち飛ぶお前の話をそんまま聞いてやんのも、色んなとこに気が散るおまえに合わせて足止めて一緒に待ってんのも、全部お前を好きだからだろうよ」
「そ、そうなの…?」
「少なくとも俺なら絶対やらねぇな。そんな面倒な事」
もし黒羽の言うことが本当なら。服部はいつから、私を好きでいてくれたんだろう。
「上がったで。って、堤寝とるやん」
「おー。俺らも寝ようぜ」
「せやな。ほな野々村、また明日な」
「あ、服部!」
「ん?なんや」
「明日、しようね!デート!」
「…おん。行きたいとこ考えときや。おやすみ」
「うん。おやすみなさい」
少し驚いた後、ふっと優しく笑った服部。まだまだ私の知らない彼がいるんだろう。そう思うとなんだかワクワクして、早く明日になればいいと思った。
すきなひと