15 すきなひと
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串カツ屋さんで晩御飯を食べてる間、なんだかずっとくすぐったかった。
「美味しい!服部!これめっちゃ美味しいよ!」
「せやろ。口の端、衣ついてんで」
「ん、マジか」
「ちゃう。こっちやこっち。アホやな」
服部がアホって言う度に、好きだと言われてる気がしてつい意識してしまって。
「…黙んなや。恥ずいやろ」
「ご、ごめん。なんかアホって言われると好きって言われてる気がしちゃって…」
「まぁ、合うとるけどな」
「え。合ってるの?」
「こっち見んなボケ」
ぺしっとメニューでおでこを叩かれ視界を塞がれる。次見た服部の横顔は耳まで赤くて、胸がきゅうっとなった。
「お腹いっぱいー!」
「ほな次行こか」
「え?次って?」
「デザートや。食うやろ?」
「食べる!さすが服部!好き!」
「そっ…そら、おおきに」
「照れてる…!」
「やかましわ」
頬を赤くしてフイっと顔を逸らす服部。新鮮だと思いながら、彼に連れられて夜しかやってないアイスクリーム屋さんに来た。
「なにこれ可愛い!」
「SNSで見つけて、好きそうやと思うてん。自由にトッピング出来るみたいやで」
「神ー!じゃあ私、ミックスのトッピングし放題で!」
「ほな俺はバニラで」
お互いアイスクリームを手に店先のベンチに座る。冷たくて甘くて美味しいそれは今の気分にピッタリだ。
「今何時だろ。黒羽達もう帰ったかな?」
「19時20分や。特に連絡はきてへんけど」
「…その待受け、変えてないんだね」
「あー…まぁ、面倒でな」
服部がスマホで時間を確認した時に見えた彼の待ち受け。一緒に花火大会に行った時に私が冗談で送った浴衣のソロショット。
「ねぇ、見て。私の待ち受け」
「…これ、あの女がSNSに載せてたやつやんけ」
「そう。よく撮れてるからお願いして送ってもらったの!めっちゃエモくない?」
「おー。誤解やなくなったな、カップルって」
「え?」
「せやから、俺とお前がカップルって噂。ホンマになったなって」
「へ…私と服部、カップルになったの?」
「はぁ?!おまっ…嘘やろ?!さっきのハグはなんやと思うてん!」
「え?!し、親愛のハグ?」
立ち上がり声を上げる服部に失言だったのだと気付いたけど、時既に遅し。彼は大きくため息をつきながら頭を抱えて座り込む。
「なんやねん、ほんま…」
「あ、あの、ごめんね服部!さすがの私もあの告白が友達同士の好きってことじゃないってのはわかってるよ!ただその…付き合おうとか言われてなかったから、あ、もう付き合ってるんだって思っちゃって…ごめん、バカで」
「…いや、すまん。ちゃんと言わんかった俺が悪いわ」
顔を上げた服部が、まっすぐ私を見つめる。その力強い眼差しに胸が大きく音を立てた。
「野々村。好きや。俺と付き合うてくれ」
「は、はい。私でよければ…」
「お前がええ。ガキっぽくてアホでお人好しで。いつもヘラヘラしながらなんでもない事みたいにすごい事やってのける。そんなお前が、どうしようもなく好きやねん」
「服部…嬉しいけど、買いかぶりすぎじゃない?」
「そうかもな。けど、別にええやろ。1人くらいアホみたいに可愛ええって思う奴がおっても」
「か、可愛ええですか」
「可愛ええで。世界一な」
「ど、どんな顔していいかわかんない」
嬉しいやら恥ずかしいやら、言葉に出来ない感情が体中を駆け巡る。どんな顔していいかわからず、ぎゅっと目を閉じた私。
「…やからって、ここで目閉じるとか。ほんま、アホやな」
そう服部の声が聞こえたかと思ったら、唇に暖かくて柔らかい何かが触れた。目を開ければ鼻の先に彼の顔。
「…ちゅーした?」
「目ぇ閉じたお前が悪いで」
「服部って手早いんだね…」
「随分我慢しとったからな。ちょっとくらい許せや」
「別に怒ってないよ。びっくりしただけ」
「ほな、もっかいしてええ?」
「それは駄目」
「なんでやねん」
「ここ外だし」
「ほな中ならええんか」
小さく頷くと、それを見た服部がまたも大きなため息と一緒に頭を抱える。また失敗してしまったのか。
「は、服部?」
「なんで宿が俺の実家やねん…!ホテルやったら…!」
「…変態」
「男はみんな変態じゃボケ」
溶けてしまっているアイスクリーム。トッピングのチョコと混ざってマーブルみたいなそれは、これでもかってくらい甘かった。