14 おおさからばーず
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「嘘やん!平次そんなモテてんの?!」
「そりゃあもう。道を歩けば皆が振り返り」
「彼が微笑めば全ての女が倒れ出す」
「おいこら。盛るにも程があるやろ」
「もはや怪奇現象の域だな」
みんなでお好み焼きを食べながら服部の大学での様子を遠山さんに話す。明るくてよく笑ういい人だ。
「楽しくやってんねんな、平次。安心したわ」
「俺より自分の心配せぇアホ。また1人でメソメソ泣いてへんやろな」
「泣いてへんよ!平次と別れて強うなったからな」
「そら何よりや」
「え。2人って元恋人?」
「あ、せやねん。って言っても、高校の時の話やけど」
「へぇ。服部は事件が恋人かと思ってた」
「なわけあるか。…っと、すまん。工藤から電話や」
服部がそう言って電話に出る。何を話してるのかは知らないけど、雰囲気で事件絡みだとわかる。
「よっしゃ、待っとけ!すぐ調べたる!すまん、ちょお野暮用や!すぐ戻るさかい!」
「あ、おい!服部!…行っちまった」
「変わらんなぁ平次は。事件や工藤やって、何度置いてかれた事か」
「昔からああなんだね、服部」
「せやで!剣道の大会もデートもテストも、ぜぇんぶ事件や工藤くんが絡むとほっぽり出してまうねんから」
「探偵の性ってやつですな」
「そら本人はええかもやけど、残された方はめっちゃ寂しいねんで?って、そんな話はええわ!なぁなぁ!ホンマは平次と付き合ってんちゃうの?」
身を乗り出して、興味津々といった様子で遠山さんが聞いてくる。残念ながら期待に答えられる関係ではない。
「いやいや、本当に違うよ。仲良しだけど」
「…黒羽くん、まさか平次まだ伝えてないん?あんなバレバレやのに?」
「そのまさかだし当の本人は気付いてねぇの」
「恐ろしい子やなぁ。…そんくらい鈍感な方がええんかもな。平次には」
「確かに野々村は鈍感だけど、そこは別に重要じゃないんだよな」
「そうなん?」
「ご馳走様でした!美味しかったー!」
「今まで食べたお好み焼きの中で1番だった」
「さて!次行こ次!遠山さんも来る?」
「え?けど、平次が…」
「服部は服部で勝手にしてるんだし、私達も勝手にしよ!時間は有限!そうだ!遠山さんのオススメスポットとかある?」
「…あはは!そうやな!その通りやわ!よーし!ほんなら、うちのとっておき連れてくわ!」
「いえーい!」
私達は遠山さんの案内で大阪の街を観光した。彼女おすすめの激安店や穴場カフェに行ったり、いかにもな観光名所にも行けて大満足だ。
「どや?ええとこやろ、大阪は」
「うん!めっちゃ楽しかった!」
「安くて美味いが溢れてて素晴らしい」
「堤、マジでずっと食ってたな」
「あ、服部から電話だ。もしもし、こちら野々村。今?えっと…どっかの展望台!え?遠山さんに変われ?」
「さすがの服部もどっかの展望台だけじゃ居場所はわからねぇみたいだな」
「もしもし、平次?うん、せやで。そう、そこや」
わかった。もうええから和葉に変わってくれ。そう服部が言ったのは正確な位置を知るためだってわかるのに。
(…なのに、なんか面白くない)
「はい、野々村さん。スマホ返すな」
「あ、うん。服部来るって?」
「うん。あと5分くらいで着くって。…なぁ、聞いてもええ?」
「ん?」
「平次のこと、好き?」
「うん。いつもめっちゃ助けてもらってる!」
「そっか。信じたってな、平次のこと。うちには、出来ひんかったから」
「…これは自論なんだけど、信じる信じないってそんな重要じゃないと思うんだ」
2人がどうして別れたのか、その詳しい理由は知らないけど。彼女は悔いているように見える。
「大切なのは、許すか許さかないか。信じれなかった自分も、信じれない相手も、許してあげられるかだと思う」
「許す…そっか、そうやね。うちは自分が辛くて、平次のこと責めただけやったなぁ」
「なんの話ししてんの?あの子達」
「外野は黙っとこうぜ」
「お、おったおった!すまんな、思ったより時間かかってもうて」
「平次…もー!ほんまやで!旅行来て友達放ったらかすとかありえへん!」
「せやからすまんて言うとるやんけ!お前が案内してくれたんやろ?おおきにな」
服部が戻ってきて、遠山さんは何かを伝えようとしている。もしかしたら、まだ好きだと、やり直そうと、そう言うのだろうか。
「あ、あんな、平次…」
「…な、なんやねん。どないしたん?」
「…え?なんで私の方見るの」
「なんでってそらお前…」
「美衣が服部の手握ってるからじゃない?」
「手ってゆうか指だけどな」
「うぇ?!本当だ!いつのまに!!」
「なんで本人がいっちゃん驚いてんねん」
「…なんや、誤解させたかな?うちは謝りたかっただけやで、野々村さん!あん時、許してあげれんくてごめんって」
服部の指先を少しだけど確かに掴んでる自分の手。そんな事しようなんて、考えてなかったのに。
「…和葉が謝るようなことなんか、なんもないけどな。ちゅうかお前、例のハイスペ年上彼氏とは続いとんか?」
「あったり前やん!超ラブラブやで!」
「え?!和葉ちゃん彼氏いるの?!」
「おんで!見る?!めっちゃイケメンやねん!」
「見る!!」
「私も!!え、待って。ガチイケメン」
「超美白!!」
「せやろ?!時代はやっぱ色白やで!」
「悪かったなぁ、色黒で」
「今はちょっと赤いけどな」
「やかましいぞ黒羽」
遠山さんのスマホを見る勢いで離したけど、まだ手に残ってる気がする。指先だけだったけど、彼の体温が。
「ほな、うちはもう帰るわ!一緒に遊んでくれてありがとう!」
「こちらこそ。楽しかった」
「私も!服部も謝るようなことなんかないって言ってたし、自分のことも許してあげてね。ドロドロに甘やかして生きていいと思う!私のように!」
「お前はもうちょっと自分に厳しくあれよ」
「あはは。おおきに!!会えてよかったわ。平次のこと、よろしゅうな!」
「俺はガキか。ま、元気でやりや」
「またねー!」
去って行く遠山さんに大きく手を振る。窓から差し込んだ夕日がその背中を柔らかく照らしていた。