13 にっしんげっぽ
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「それでどうしたのよ」
「どうって…普通に花火見て色々食べて帰ったけど」
祭りでの話を聞きたいと志保に言われ話したものの、何やらガッカリさせてしまったようだ。大きなため息をこぼしてる。
「紗奈は?あの後すぐ帰った?」
「や、黒羽に会って一緒に花火見た」
「え、そうなの?私は黒羽会えなかったな」
「違う学部の人たちと来てたよ。なんで誘わねぇんだって怒られた。てっきり他に行くやつがいるからなんも言ってこないんだと思ってたって」
「ありゃ。お互い遠慮し合っちゃってたんだ」
「全く…なんで一緒に行った美衣より紗奈のが進展してるのよ」
「え?私なんか進んだの?」
「私達は常に明日に向かって進んでるからね」
グッと親指を立ててそう言えば、紗奈も同じようにして見せる。呆れたように志保が言う。
「それで?スマホはやっぱり壊れてたの」
「無事だったの!バキバキに割れてたの保護フィルムだったし、帰って充電したらちゃんとついた!」
「あら、よかったわね。データも無事?」
「うん!大丈夫!」
「あの、野々村先輩」
「あ、読モの子だ」
「おお!昨日ぶりだね!どうしたの?」
「昨日のお礼に、これ。貰ってください」
「え?!い、いやいや!これトロピカルランドのチケットじゃん!貰えないよ!こんな高いの!」
差し出されたこは有名名な遊園地のチケット、慌てて手を横に振る。
「昨日、スマホが壊れたの、私のせいですし…本当は本体をプレゼント出来たら良かったんですけど…さすがに高すぎて、申し訳ないです」
「ん?!なんで?!あなたのせいじゃないし、スマホ無事だったから!」
「本当ですか?!よかった…!でもやっぱ申し訳ないですし、これは貰ってください!受け取ってくれるまで諦めませんから!」
「ええ?!何が申し訳ないの?!」
「美衣、受け取ってあげなさいよ」
「志保…えー、いいのかな…あ、じゃあ一緒に行かない?それなら」
「いえ!服部先輩と行ってください」
キッパリとそう言われ、引き下がる様子のない女の子の圧に負けてチケットを受け取る。
「じゃあ、お言葉に甘えてもらうね。ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます」
「ねぇ、あなた。大人しく引き下がることにしたのは、美衣に絆されたから?」
「それもありますけど…服部先輩が野々村先輩を見る顔、全然違うから。そこまで本気だった訳じゃないですし。お騒がせしました」
「服部が私を見る顔…?え?変顔とかしてたっけ?」
「さぁ。気にしたことない」
「ごめんなさいね。こうゆう子達なの」
「あはは。はい、昨夜で充分わかりました。天然物には敵いませんから。では、失礼します」
ぺこりとお辞儀をして去っていく女の子。肩にかけたトートバッグには、私のあげた防犯ブザーがつけられている。
「モデル、頑張ってね!応援してる!」
「…はい!先輩も、早く彼氏つくってくださいねー!応援してます!」
「ん?!お、おう!がってんだ!」
「そんなに彼氏欲しかったの」
「いや別に…なんで急にそんなこと言うんだろ」
「全く…ちゃんと誘いなさいよ、それ。服部くんを」
「もちろん!トロピカルランド久しぶりだな〜」
もらったチケットを大事に鞄にいれて、スマホを取り出しあの読モの子のSNSをフォローする。そして足取り軽く抗議へと向かった。
「とゆう事で!一緒に行こうぜトロピカルランド!」
「全く話し読めへんけど、トロピカルランドっちゅうと…遊園地やんな」
「うん!いつ行く?」
「お前の脳内には俺が断るっちゅう選択肢ないんか」
「え。断られるの?」
「…行くけど」
「なぁんだもー!びっくりさせないでよ!」
ほっと胸をなで下ろしてテーブルにお昼ご飯を置く。ふと、服部が変顔してないかと気になってじっと顔を見る。
「なんや。じろじろ見おって」
「うーん。普通の顔だよな…」
「はぁ?」
「トロピカルランドか。懐かしいな」
「お前、行ってたよな。幼馴染の子と」
「は?!工藤、なんで知ってんだよ!」
「あら。それは工藤くんもでしょ?思い出たっぷりの場所じゃない」
「お、俺達も行くか?トロピカルランド」
「嫌よ。呪われそうだもの」
「そんな楽しいの?トロピカルランドって」
「え?!紗奈、行ったことないの?」
もぐもぐと口を動かしながら頷く紗奈。それは是非とも連れて行ってあげたいけど。
「じゃあ行くか?トロピカルランド」
「く、黒羽ったら!大胆!」
「さすが一緒に花火を見ただけあるわね」
「うるせぇな!そうゆうんじゃねぇっての!今度トロピカルランドで新しく始まるショーに演出でちょっと協力したから、お礼にってチケット貰ったんだよ」
「へぇ。ちょうどいいじゃねぇか」
「タダやで、タダ。堤」
「うん。行く。ありがとう黒羽」
「おー。じゃあ行けそうな日決めようぜ」
「服部!私達も決めよ!」
「先に飯の手動かさんかい」
ご飯を食べ進めてると、何やら視線を感じて当たりを見ると、ヒソヒソと話しながらこっちを見てる人が数人。
「…ねぇ、なんか見られてない?背中に貼り紙とかしてある?」
「ないわよ、そんなの」
「けど確かに視線感じんな」
「ちょい聞いてくるわ」
「行っちゃった…黒羽ってほんとコミュ力高いよね」
「口が上手いからな、あいつは」
「あ、帰ってきた」
「服部と野々村がついに付き合ったって話題になってるみたいだぜ」
「はぁ?なんでそないな事になっとんねん」
「あ。ねぇ、これじゃない?」
紗奈が見せてきたのは、さっきフォローしたばかりの読モの子のアカウント。その最新投稿。昨日のお祭りでの私と服部の後姿の写真と推しカプとゆう文章。
「あー、100%これだな」
「後ろ姿だけど見る人が見りゃ誰か一目瞭然だしな」
「何してくれとんじゃあの女」
「推しカプってなに?」
「推してるカップルの略ね」
「ほほう。私と服部ってカップルなの?」
「ちゃうやろ。やっぱ1発ガツンと言ったらなあかんか」
「え?なんで?別に良くない?推してるって事は褒められてるんでしょ?」
「まぁ、そうやけど…ええんか?勘違いされても」
「今さらじゃない?最近よく付き合ってるのかって聞かれるし。私は何も問題ないよ」
それよりこの写真、いつのまに撮られていたんだろう。全く気付かなかった。
「それに、チケットくれたのあの子なんだ。なんかよくわからないけど、お詫びにって」
「…ほーん。まぁ野々村がええなら、ええわ」
「にしても、それでこんな注目されるなんて、ハットリってやっぱモテるんだねぇ」
「自分は微塵も関係ないと思ってるあたり、さすがだな」
「野々村のこと狙ってるやつ多いのにな」
「黒羽くん、黒羽くん。私の事狙ってる人に心当たりは?」
「ねぇな」
「ジーザス」
「この嘘つきが」
「うるせぇよ」
そういえば、私は問題ないけど服部は大丈夫なんだろうか。好きな子とかたら、勘違いさせてしまうのでは。そう思ったけど、何となく聞く気にはなれなかった。