12 おまつり
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ボンヤリと温かみのある光を放つぼんぼり。香ってくる香ばしい匂いと人々の喧騒。太鼓や笛の音。
「お祭りだー!テンションあがるー!」
「走るなや。転ぶで。ただでさえ下駄履きなれてないんやから」
「わかってるって!」
「浴衣、ええな。めっちゃ似合うとる」
「ありがと!服部もめっちゃ似合うよ!服部の平さんって感じ!」
「なんやそれ。さっき美容院の人が撮ってくれた写真、送っとけや」
「うん。忘れないように今送るね」
スマホを取り出して写真を送る。完成後に2人で撮ってもらったやつだとわかっていながら、悪戯心で自分のソロショットを。
「なかなか盛れとるやんけ」
「でしょ?!アイコンにしようかな」
「ほな俺は待ち受けにしたるわ」
「え?!それは恥ずかしい!」
「わざとソロショット送ってきよった罰じゃ」
「ごめんなさい!今すぐツーショット送ります!」
「手遅れや」
「あー!そんなぁ!」
お祭りのある神社が見えてきて、石段の前に1人でぽつんと立っている女の子に気付く。その子は私達に気付くとぱっと明るい顔で駆け寄ってきた。
「服部先輩!よかった!会えて!」
「おー。どないしたんや」
「それが、友達とお祭りに来たんですけどはぐれちゃって…スマホも忘れて来ちゃったし、探しに行きたいんですけど、その、さっきストーカーを人混みの中で見かけたような気がして、怖くて…」
うるうると瞳を滲ませる女の子。ストーカーで悩んでるって服部に相談をしにきた読者モデルの子だ。
「それで、服部先輩もお祭りに行くって言ってたの思い出して、ここにいたら会えるかなって…友達に会えるまででいいので、ご一緒しちゃ駄目ですか?」
「もちろん、いいよ!ね?服部」
「まぁ、野々村がええならええけど」
「ありがとうございます!助かります!」
「じゃあ早速行こっか!あ、友達の格好とか教えて?探すの手伝うよ!」
「えっと、浴衣を着てて、髪はおろしてて…お2人も浴衣なんですね。すごくお似合いです」
「ありがとう!あなたもすごく可愛いよ!ね?服部」
「それより、もっとわかりやすい特徴ないんか。浴衣の柄とか、髪飾りとか」
すっかり探偵モードになってしまってる服部。女の子も少し困ってるように見える。せっかくのお祭りを楽しめないなんて勿体ない。
「まぁまぁ!とりあえず行こうよ!ほら、わたあめあるよ!」
「わたあめに食いつくんは幼稚園までやと思うてたわ」
「綿の飴だよ?夢が詰まってるでしょうが」
「真面目な顔で言うことちゃうて」
「可愛いですよね、わたあめ!私も好きです」
「だよね!ほら見ろ服部!」
「ええから、前見て歩きや。ぶつかんで。ほらそこ、段差」
「わ!危な!」
「アホやな」
言われた段差につまづく私を笑う服部。浴衣だからか、いつもと少し雰囲気が違うように見える。
「え、凄い!チュロスあるよ!」
「美味しそうですね!食べますか?」
「んー。あ!イカ焼きもいいね!はし巻きも捨てがたい!焼き鳥も食べたい!」
「じゃあ順番に…」
「わー!射的!射的やりたい!」
「え?あの…」
「待って。あの仮面ヤイバーのお面クオリティえぐい高い」
「あの!話をっ」
「お面、クオリティ高いだけあって値段もそこそこやな。射的やりたいなら先やんで。食うたら絶対手汚すやろうし」
「確かに!よし!射的やろ!」
服部の提案に頷いて、意気揚々と射的の屋台に向けて歩き出す。
「はしゃぎおってガキみたいやろ」
「あ、いえ。お祭り楽しいですもんね!はしゃぐ気持ちわかります」
「すまんな。悪いやつやあらへんから、許したってや」
「全然気にしてませんよ。ところで服部先輩って…先輩?どうしたんですか」
「ああ、すまん。野々村が金魚に気とられて立ち止まっとるから、ちょお待ってな」
「え?あ、本当だ」
「野々村、金魚すくいやるんか?」
「ううん。思い出してたの。小さい頃1つも釣れなくてよく泣いたなって」
「今と全く変わらへんやん」
「ちょっと!今はさすがに泣かないし!」
射的の屋台について、3人で並んで景品を狙う。思いのほか難しくて3発全て外してしまう。
「無念…!」
「難しいですね。私も全部外しちゃいました。服部先輩は…わぁ、すごい!取れたんですね!」
「ちっさい菓子やけどな」
「でも凄いです!次は何か食べに行きませんか?お腹すきましたし」
「せやな。野々村、行くで」
「私もう1回やってくから、2人は何か食べに行っていいよ!」
「そないムキになるほどええもんあったか?」
「服部先輩!野々村先輩もああ言ってますし、チュロス買いに行きましょ!」
「あ、おい!野々村!戻ってくるさかい、そこおれよ!」
腕を引かれて歩き出す服部の声にぐっと親指を立てて応えて、お店のおじさんにもう一度お金を払った。