11 へんか
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「ねぇ、見て服部!この近くの美容院で浴衣レンタル出来るよ!お祭りの日着ようよ!」
「汚して泣き見る未来しか見えへんな」
「失礼な!大丈夫だし!たぶん!」
「そこは言いきらんかい」
レンタル浴衣は色んな柄や色があるみたいで、テンションがあがる。服部に似合いそうなのもたくさん。
「服部、これとか似合いそう!」
「別になんでもええわ」
「あ、でも普段着ない色にするのもありだよね!ピンクとかどう?」
「どう考えても似合わんやろ」
「えー?そうかな?浴衣なら似合うと思うけど…ね?志保」
「そうね。ありだけど、そんなことよりあなた達、随分仲良くなったのね?」
そう言われてキョトンとする。私と服部は前から仲良しだし、みんなもいつも一緒にいるんだから知ってるはず。
「つーか、野々村が前より服部に懐いたって感じするな」
「それだ!さすが工藤」
「懐いたって…私はペットか」
「まぁ犬っぽくはあるわな」
「ないし!ね?紗奈!」
「え?ごめん、聞いてなかった」
「さっきから何見てるの?」
「新聞」
「堤が、新聞?!」
「明日は雨かしら」
「嵐じゃねぇの」
「天災がおこんで」
紗奈がスマホで見てた新聞記事には、数年前に起きた爆発事件について書かれている。
「出席日数危うくて、教授が救済処置でこの事件の犯人の心理についてまとめてこいって言うから」
「あー、そうゆう」
「ビビらせおって」
「この爆発事件って確か、キッドが犯人って騒がれてたやつだよね?」
「え、そうなん?」
「違ったっけ?服部、工藤」
「偶然、予告状の場所と被っとったからな。確かに世間じゃそう騒がれとった」
「けど、犯人はキッドじゃねぇよ。あいつはそんな事しない」
「ふぅん。そうなんだ」
さすが探偵。過去の事件にも詳しいな、なんて思ってると紗奈がパンっと手を叩く。
「そうだ。京都行こう」
「どうしたのよ急に」
「この爆発された施設、今調べたら当時のまままだ残ってるっぽいから。見に行こうと思って」
「わざわざ現場に行くんか?何のために」
「課題をやっつけるついでに旅行に行く為に!」
「よくそれでドヤ顔出来るよな」
「えー!楽しそう!私も行きたい!」
「俺も行こうかな」
「え…黒羽もか?」
「なんだよ工藤、その顔は。京都なら服部の実家に泊めてもらおうぜ。宿代浮くし」
「おいこら。勝手に決めんなや」
珍しく乗り気な黒羽と3人で、いつ行こうかと話し合いながらスケジュールを確認する。
「ちょお待て!ホンマに家に泊まる気か?」
「野々村、いけ!上目遣い!」
「私はポケモンか!」
「宿代かかってんだぞ!本気でいけ!」
「いえっさー!服部、お願い」
「…オカンに聞いてみるからちょお待っとけ!」
「効果はバツグンだ!!」
「でかした美衣!」
「いえーい!」
「工藤と宮野は?来るか?」
「私はパス」
「俺もいいや。人数多いと服部ん家も大変だろうし」
無事に服部のお母様から宿泊の許可が出て、私達の京都旅行計画はあっという間に決まった。
「意外だったぜ。お前が自ら行くって言うなんて。あそこにはいい思い出ないんじゃねぇの」
「だからだよ。いい思い出作りに行ってくる」
「…そうだな。それがいい」
「やからって俺の家宿にせんでもええやろ」
「むしろ感謝しろよ服部。おかげで野々村とひとつ屋根の下だぜ?」
「お前らもオトンもオカンもおんのに喜べるか」
「あらやだ。服部くんってば何する気だったの」
「しばくどこそ泥」
「まぁでも、ちょうどいいんじゃねぇか。服部も最近全然実家帰ってねぇだろ。元気な顔、見せて来いよ」
そう言って工藤が立ち上がり、缶コーヒーをゴミ箱に捨てて去って行く。その背中を見つめる黒羽。
「なんや。変な顔しおって」
「いや、ちょっとセンチメンタルな気分になっちまってさ。探偵と怪盗、だからこそあった俺とあいつの絆はもうない。あの頃の方が名探偵と近かったような気がしちまうんだよ」
「はぁ?何を言うてんねん。あの頃のお前らに他にはない絆があったんは確かやけど、どこまでいっても犯罪者と探偵。交わる事なんかなかったんやで」
「そうだけどよ。あの頃のが遠慮なかった気がするっつーか…」
「当たり前や!隙あらばとっ捕まえたろ思うてたんやから。それにや、その絆はあのボウズとキッドのもん。今のお前らは工藤と黒羽、従兄弟で同じ大学に通う友達やろ」
アホらし、と服部も同じように立上り缶コーヒーをゴミ箱へ投げ入れる。まだ飲み途中の缶コーヒーを手に、黒羽も立ち上がる。
「なんかお前、ちょっと野々村に似てきたよな」
「はぁ?どこがやねん」
「当たり前みたいに嬉しい言葉くれるとこ。ありがとな、服部。お前がいてくれてよかったぜ」
「宿代も浮くしな?」
「いやぁ、感慨深いね。キス未遂で刀向けられた相手とお泊まりなんて」
「思い出させんなや!気色悪い!それ絶対野々村に言うなよ?!」
「言うかよ!俺までとばっちり食らっちまう」
「あ、いた!服部!黒羽!講義はじまるよー!」
曲がり角のところで手を振る野々村。軽く手を挙げて答えて、窓から差し込む優しい午後の日差しの中を歩いた。