10 にどめの
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「うまっ!めっちゃ美味いやんこのりんご飴!」
それぞれ注文したりんご飴。宇治抹茶を頼んだ服部はそのままをかじり、チョコスプレーにした私は食べやすくカットしてもらった。
「こら確かに屋台のと全然ちゃうわ」
「でしょー!りんご自体も美味しいし、飴も薄くて食べやすいよね!」
「ほー。この店、本店は大阪にあるみたいやで」
「そうなの?」
「見てみい。本店ではりんご以外のフルーツ飴も常備やて」
「うわー!本当だ!美味しそう!」
いつの間にもらったのか、お店のパンフレットを見せてくれる服部。本店限定フレーバーなんかもあるみたいだ。
「わ!見て服部!ヨーヨーみたいなのある!可愛い!あ、ヨーヨーといえばさ、今度大学の近くでお祭りが…って、何笑ってんの?」
「いや…さっきまでムスッとしとったのに、りんご飴食った瞬間にご機嫌なったな思うて」
「すみませんね。単純で」
「せやな。めっちゃ単純で可愛ええわ」
「…恥ずかしいじゃん」
「なんや、照れとるんか?珍しい」
確かに服部の言う通り、珍しい。今まで可愛いって言われて嬉しくはあったけど、恥ずかしくなる事なんかなかったのに。
(なんだろ。変なの…)
「祭りな。神社のやつやろ?平日やけど、放課後行くか?」
「行きたい!」
「おん。まぁ大丈夫やろうけど、一応工藤達にも知らせとこか」
「え?2人じゃないの?」
「…2人で行くつもりやったん?」
「うん。嫌ならみんなでも全然いいけど」
「嫌なわけあるかい。むしろ、嬉しいわ。行こ、2人で」
なんだろう、この雰囲気。今までとは違う少し気まずいけど嫌じゃない感じ。
「なぁ、聞いてもええ?」
「え?何を?」
「今までやったら、絶対みんなで行こ言うてたやん。このりんご飴の約束する時も、そうやったし」
「…そういえば、そうだね」
「なんで2人で行こって思うたん?」
「なんでって……何でだろう?」
「質問に質問で返すなやアホ」
「だ、だって…自分でもよくわからなくて」
「…ほんまアホやな」
「もー。アホアホうるさ…」
言いかけて、思い出す。あの時バーで服部に言われた言葉。目の前の彼は、言葉とは裏腹になんだか嬉しそうな顔。
「…ね、服部」
「ん?」
「服部の言うアホには、愛がこもってるんだよね?」
「お、ちゃんと覚えとって偉いやん」
「今のも、こもってたの?」
「もちろん。ぎょうさんな」
そう言って笑う服部の顔は、とても優しくて。なんだか胸がいっぱいで、上手く言葉が出てこない。
「は、服部…なんかかっこよくなった?」
「は?」
「前から整った顔なのは知ってたけど…なんか最近磨きがかかってるというか…なんかしてるの?」
「いや、別に何もしてへんけど」
「えー、そうなの?絶対何かしてると思ったのになぁ」
「…お前それ」
「うん?」
「や、なんでもない。もうちょっと証拠集めるわ」
「え、なに?なんか事件?」
「ああ。大事件や」
そう言いながらも、呑気にりんご飴をかじる服部。何が何だかわからないけど、事件なら出来ることなんて何もない。気にせず私もりんご飴を食べた。
「喉乾いたね。自販機あるし、奢るよ!運転してもらったお礼に!何がいい?」
「おおきに。ほな緑茶で」
「私はココアにしよっと」
「ほんま、よう甘いもんに甘いもん合わせられるな」
「最高だよ。ね、緑茶ひと口飲んでみてもいい?」
「おお。ほれ」
久しぶりに飲んでみた緑茶は思ってたよりも苦くなくて、むしろほのかな苦味を美味しいと思えた。
「美味しい!え!びっくりなんだけど!」
「よかったやん。飲めるもん増えたな」
「うん!初めて飲んだ時すごい苦いって思ってそっから避けてたけど、飲めるようになったんだ私!」
「少しは大人になったんちゃう」
「大発見だ〜。服部のおかげだよ」
「気に入ったんならそっち飲むか?」
「あ、それは大丈夫。余裕でココアのが好き」
「あーそうですか」
ココアの甘さを噛みしめてると、服部の視線が手元に向けられているのに気付く。
「どうかしたの?」
「や、ピンキーリング、毎日つけとんなって」
「うん!超お気に入りだからね!これSNSでバスっててずっと欲しくてさぁ」
「へぇ。ほんなら、また買うて来よか?あのスーパーまだあったで」
「めっちゃ穴場だね!でも、いいや。何が出てもこれを貰った時の喜びには勝てないだろうし、結局こればっかつけちゃうと思うから」
「いっちゃん最初がやっぱ衝撃でかいもんな」
「うん!それにこの緑色、服部のキャップの色と似てない?さり気ないお揃いっぽくて超よくない?」
「は…はぁぁ?なんっじゃそれ!アホちゃう!ほんっまにお前は…!」
「えー。そんな思い切りため息つかなくても」
共感してくれると思ったのに残念だ。少し拗ねてココアを飲んでたけど、ふと思い直す。今アホって言った。
「…今のも愛こもってる?」
「いちいち確認すなボケ。こもっとるに決まっとるやろ」
「あはは。こもってるんだ!やった」
「人の気も知らんと…可愛すぎるやろ」
「ん?なんか言った?」
「なんも!野々村のせいで毎日キャップかぶらなアカンやんけ」
「え?既に毎日かぶってない?」
「やかましわ。さらにって事や」
なんだかんだ言いながら、さり気ないお揃いをしてくれる意思はあるみたいだ。嬉しくて、上機嫌でココアを飲み干した。
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