10 にどめの
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「この日曜日、言うてたりんご飴行かへん?」
服部に誘われてもちろんふたつ返事で即答した。ずっと行きたかったお店、しかも初めてバイクの後ろに乗せてもらえる。上機嫌な私に、志保が耳打ちした。2度目のデートは初回とのギャップが大事だと。
(デート…そうだよね。これも立派なデートだ。ギャップ…)
前日の夜に頭を悩ませて考えたパンツスタイルのコーデ。デートだから可愛らしさも欲しくて肌が透けて見えるシアーシャツをチョイスした。
(服部にもらったピンキーリングの緑に合わせて、ヘアアクセもミント系にして…うん!いい感じ!)
タイミング良く、服部からスマホに着いたとメッセージが届く。わざわざ家まで迎えに来てくれたのだ。
ショルダーバックを肩からかけて、スニーカーを履いて家を出れば服部が私に気付き、軽く手を上げる。
「よう。おはようさん」
「おはよう!迎えに来てくれてありがとね」
「お、偉いやんけ。ちゃんとズボンで来たな」
「うん!ヘルメット被るから髪もダウンスタイルにしてきた!」
「花丸やな。…前とちょっと化粧ちゃう?」
「え!よくわかったね!前に志保に選んで貰ったやつなの!」
「ああ、あん時の。そっちも、可愛ええな」
「ありがとう!服部も今日の服もよく似合ってる!かっこいい!」
「お、おお。おおきに」
「…なんか照れるね、このやり取り」
「…おん。ほな、行こか」
渡されたヘルメットを被って、バイクに跨り服部の背中にしがみつく。自分とは違う、大きな背中。
「しっかり捕まっときや」
「はい!」
バイクが走り出して体に風を感じる。どんどん流れていく景色。ジェットコースターに乗ってるみたいだ。
(楽しいー!もっと怖いかと思ったけど、全然だ!)
「大丈夫か?」
「うん!めっちゃ楽しい!」
「そらよかったわ」
信号で止まった時、服部とそんな会話を交わす。ヘルメットで顔は見えないけど、またあの優しい目をしてるような気がした。
「ほい、到着。疲れてへん?」
「うん!超元気!」
「みたいやな」
「ジェットコースターみたいで楽しかったし、服部なんかいい匂いした!」
「感想小学生か」
「だって本当にそう思ったんだもん。あの、ヘルメットってこの日の為に買ってくれたとかじゃないよね?」
「いや、元々持っててん。高校ん時はよう人乗せとったから」
「そうなんだ。よく乗ってた人って元カノ?」
「な、なにを言うてんねん急に」
わかりやすく動揺する服部。昔服部と付き合ってた人って、どんな人なんだろう。なんだかすごく気になる。
「図星でしょ、その反応は!」
「どうでもええやろ!そんなもん!」
「ねぇ、どんな人?服部の元カノって」
「はぁ?!なんでそんなもん教えなあかんねん!」
「気になるんだもん!写真とかないの?!」
「誰が見せるか!」
「あるんだ!!持ってるんだ写真!」
「ちゃうぞ?!未練あって残しとるとかやなくて!幼馴染やから何かと写っとること多くてやな!!」
「幼馴染なの?!すごーい!」
「別にすごないわ!」
幼馴染がいたのも、元カノがいたのも知らなかった。今まで特に聞いた事もなかったから。
「ねー、見せてよ写真!」
「嫌や!そもそも見てどうすんねん」
「想像する!こんな子とあんな事やこんな事してたんだって!」
「それの何がおもろいねん!ちゅうか、それ思いきり脈なしやんけ、腹立つわ」
「え?なんの脈がないって?大丈夫?元気?」
「元気じゃボケ。あー、アホらし。好きなだけ見たらええわ」
「え!いいの?!やった!」
なんだかやさぐれた服部がスマホを渡してくれる。カメラロールを開いて手を止める。1番新しいのは彼が休んだ時、黒羽が撮って送った私がダブルピースしてる写真。
「…服部」
「なんやこのスカポンタン」
「これ保存してくれたんだね」
「は?…あ!!そ、それはあれや!間違うてん!熱あったもんでな!!」
「あ、なるほど。あるよね、気づかずに保存しちゃう時。じゃあ消しとくね」
「待たんかい!!お前が見たいんは和葉やろ?!ほら、これや!」
勢いよく私の手からスマホを奪った服部。高校の卒業式の時の写真を画面に写して見せてくれる。
「そん中のポニーテールの奴や」
「あー、この子!可愛いじゃん」
「もうええやろ。注文の順番来るで」
「その時はまだ付き合ってたの?」
「いや、もう別れとる」
「ふぅん」
別れてるのに、隣に並んで集合写真を撮ったのか。幼馴染ってそうゆうもんなんだろうか。それとも、服部とその子が特別仲良しなのか。
「俺だけ不公平やろ。お前も見せんかい」
「え?あー、見せたくても見せるもんがないもので」
「なんや。1枚も残ってへんのか?元彼の写真」
「とゆうか、元彼がいない。前に話した付き合ったつもりない男をカウントするなら一応いるけど」
「いや、それはせんでええやろ。自分にそのつもりなかったんなら。ちゅうことは、あれか。彼氏いた事あらへんのか」
「どうせモテませんよ。可愛い元カノがいた服部と違って」
ポニーテールの良く似合う、明るそうな女の子。あんな可愛い子と、あんな事やこんな事したのか。
(…なんか、嫌かも)
「好意に気付かへんかっただけちゃう。野々村、めっちゃ鈍いし」
「うるさいやい、この色黒関西弁」
「それ悪口のつもりか?弱いの〜」
「服部、ムカつく」
「なんや。急に不機嫌になりおって」
「別になってないし」
言いながら視線を逸らす。自分でも何をそんなにイラついてるのかわからないまま、注文の順番がまわってきた。