7 りゆう
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「なぁ、服部のお見舞い行かね?」
講義終わり、黒羽がリュックを背負いながら言う。勢いよく手を上げて賛成する。
「行く!」
「そうだな。特に予定もねぇし」
「あー、ごめん。私バイトだ」
「私もパス。風邪菌移されたくないし」
「んじゃ3人で行くか」
「服部によろしく〜」
工藤と黒羽と3人で服部の家へと向かう。そういえば彼の家に行くのは初めてだ。
「なんか買ってくか?」
「たこ焼きとか?」
「なんでだよ。服部、風邪引いてんだぞ。果物とかだろ」
「あ、そっか。つい好きな物って思っちゃって」
「スーパーのカットフルーツとかでいいんじゃねぇの」
「そうだな」
こうゆうところが、バカだって思われるんだろうな。いつもなら気にしない事が、今日は胸に引っかかる。
(この辺あんま来ないな…。あ、あのお店可愛い!なんのお店だろ?)
足を止めて見慣れないお店をじっと見つめる。どうやら雑貨屋さんのようだ。
「おい、野々村。何してんだ。置いてくぞ」
「あ、ごめん!可愛いお店見つけちゃって」
「はぐれんなよ。迷子になんぞ」
「大丈夫!いざとなったらマップあるし!」
「迷子になること前提じゃねぇか」
「そういえば工藤って、うわ!あの人超イケメン!」
「え?あー、向かい側の道の人か?」
「あれ安室さんじゃね?」
「お、本当だ。梓さんといるし買い出しかな」
「まだポアロのバイト続けてんのか?もう必要ねぇんじゃねぇの」
「気に入ってる場所なんだってさ」
目に付いた向かい側の道を歩くイケメンは工藤達の知り合いのようだ。すれ違った人のワンピースがオシャレで思わず立ち止まって振り返る。
(可愛いー。どこのだろう。聞きたいけど聞いたら怪しいよね)
「で?結局俺が何…って!またいねぇし!」
「野々村ー!何やってんだよ!早く来い!」
「え?あ、ごめん!」
「ったく。なんでそう定期的に立ち止まるんだよ」
「いやぁ、つい気になるものがあると足止めちゃって」
「そんで?さっきの話。俺が何だって?」
「…なんだっけ?」
「忘れたのかよ?!さっきの事だろ?!」
「まぁまぁ工藤。落ち着けよ。相手は野々村なんだから」
色んなものに目移りして2人を困らせて、さっきしたかった話すらすぐに忘れる。バカで幼稚。その通りだ。
「ごめんね、工藤。たぶん大した事じゃないと思うし気にしないで」
「おー。そうする。あ、スーパあったぜ」
「果物といえばリンゴだよな」
「けどカットりんごってあんまないよな」
「あー、確かにな。お、これでいいんじゃねぇの。なんか色々入ってるし」
「だな。よし、レジ行くか」
2人の傍を離れないよう気をつけながらスーパー内を歩いてると、お菓子コーナーの棚が目に入る。
(え!!あれSNSで話題になってたチョコエッグ!売ってあるの初めて見た!!欲しい!)
「野々村?どうかしたか?」
「あのね!このチョコエッ…」
「ん?ちょこえ?」
「な、なんでもない!早く買って行こ!」
チョコエッグが欲しいなんて、まさに子供みたいだ。これ以上2人を呆れさせまいと、後ろ髪ひかれながらもスーパーを出た。
「よう、服部!見舞いに来たぜ」
「顔色も悪くねぇし元気そうだな」
「おー、黒羽、工藤。わざわざすまんな」
「野々村もいまーす」
「…おったんかい。小さくて見えへんかったわ」
「熱下がった?服部」
「ん?ああ、もう平熱や」
「そっか。良かった」
「果物買ってきたしちょっと上がらせてもらいまーす」
「あ、こら!黒羽!もう上がっとるやんけ!ったく…しゃあない奴やな。2人も入りや」
「ああ。お邪魔します」
私の姿を見て、服部が一瞬目を逸らした。いつもならきっと気にもとめないのに。今日は駄目だ。ぐっと拳を握る。
「私はいいや!もう帰るよ」
「え?何でだよ。せっかく来たんだし上がってけって」
「お前の家ちゃうぞ黒羽」
「なんかあったのか?野々村」
「ううん、何も!ただちょっと用事思い出しちゃって!じゃあみんな、またね!」
「あ、おい!野々村!」
服部の声に振り返ることなく、走ってその場から逃げた。自分が自分じゃないみたいで、怖かった。
「…なんやあいつ。何があったん?」
「さぁ?さっきまでは普通だったよな、工藤」
「あー、いや、スーパーでなんか言いかけてたな。ちょこえ、とか」
「ちょこえ?何やそれ」
「わからけぇけど、言いかけて辞めちまって」
「男だらけの部屋に入んの嫌だっただけじゃねぇの?」
「野々村がそないなこと思うと思うか?俺ら相手に」
「ねぇな。大丈夫かよって思うほど警戒心ゼロだもんな」
「そういえば、今日やたらスマホを気にしてたな」
「ああ、それは服部からのメッセージ待ってるって言ってたぜ。昼ん時」
嬉しさを隠しきれない男は口元を隠すように手で覆う。けれど彼女の様子がおかしかった原因は恐らくそれとは関係ない。
「なんだよ、仲良しじゃねぇか」
「やかましわ。そんなんちゃう。きっと誰が休んでも、あいつは同じことするやろ」
「どうだか。さすがの野々村にも、好きに順位くらいあんじゃねぇの」
「今はそれより、様子がおかしかった原因突き止めるんが先や。わかったら今日一日の流れ細かく話さんかい」
「うわー。来るんじゃなかったぜ」
こうして、服部による原因がわかるまで決して帰してもらえない取り調べが始まったのだった。
りゆう