6 はぴねす
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「君達のおかげだよ!ありがとう!今日は僕の奢りだ!たくさん飲んでいきなさい」
叔父さんの好意に甘えて、私達はその後も大いに楽しんだ。なんせバーなんて普段行かないから珍しいものばかりで。
「完全に酔い潰れてるわね」
「だからやめとけって言ったのに…」
「ちょっとだから大丈夫って聞かなかったもんな」
「情けないんだから、美衣」
「お前は飲みすぎや。ザルか」
「ううん。全てノンアル。勤務中なので」
「いや真面目か!俺めっちゃ普通に飲んでたけど?!」
「黒羽はいいの。今日はショーが仕事だったんだし」
「おやおや。彼女、大丈夫かい?途中からこっそりノンアルに変えてたんだけど」
「こいつは雰囲気で酔ってまうくらい単純やからな。気にせんで大丈夫やで、マスター」
少し遠くの方で、みんなの話してる声が聞こえる。会話に混ざりたいけど瞼が重たすぎて無理。
「そろそろ帰りましょうか」
「そうだな。マスター、ご馳走様です」
「またおいで。彼女、1人じゃ無理だろうしタクシー呼ぼうか?」
「ああ、ええです。俺が連れて帰るんで」
「そうか。気をつけてね」
「俺は堤送るしもうちょい残るわ」
「おう。ほな、またな」
「ばいばーい」
「いやぁ、若いっていいね。おじさんキュンキュンしちゃったよ」
「志保と工藤のこと?」
「ん?ああ、あの2人も素敵なカップルだったね」
心地よい揺れの中、肌に冷たい風を感じる。外に出たんだとわかる。
(あー、服部がおんぶしてくれてるんだろうなぁ…明日、お礼言わなきゃ…)
今言いたくても全く口が動かせそうにない。そう思ったのを最後に、意識を手放した。
「美衣。生きとるか?」
「…今生き返った」
枕元に充電してあったスマホからなったコール音で目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。時計を見ればもう昼の13時だ。
「お腹空いた…」
「今お前ん家の近くおんねんけど、飯行くか」
「行く。10分で準備する」
「急がんでええで。ほな、また後で」
電話が切れて、大きく伸びをする。テーブルに置かれた昨日持っていた鞄。充電されたスマホ。落とされたメイク。
(いたせり尽くせり…ご飯奢らせていただこう)
シャワーを浴びて髪を乾かして、ベースだけの化粧をして、水を飲みながら服部にメッセージを送る。
(服部、近くのコンビニにいるのか。急ご)
スマホを鞄に放り入れてスニーカーを履く。駆け足でコンビへと向かうと、ガラス戸越しに服部と目が合った。
「服部!お待たせ!」
「急がんでええ言うたやろ。頭は?痛ないか」
「うん、大丈夫」
「ならええけど。ほれ飲み」
「スポドリだ。ありがとう」
「一応薬も買うたから、持っとき」
「何から何まで…ありがたや」
「拝むな」
今買ってくれたんだろう。手に持っていたコンビニ袋から出てくるスポーツドリンクと二日酔いの薬。心が暖かくなる。
「何食う?胃に優しいもんにしよ」
「うどんとか?」
「ええな。そうしよ」
「今日は私に奢らせてください。服部様」
「なんや急に」
「昨日送ってくれたうえに、スマホ充電したりメイク落としてくれたりしたうえに、今日起こしてくれて、アフターケアまで…いたせり尽くせりすぎて感謝で震えるので」
「…昨日送ったんが俺やって、なんでそう思うん?」
「え?ううん。そういやなんでだろ…勝手に服部だと思ってた。違った?」
「いや、合うとるけど」
確かに昨日、服部が送ってくれたのを見たわけじゃないのに。なんの疑いもなく彼だと思った。
「服部、いつも私の事助けてくれるから。たぶん今回もそうだと思ったのかも」
「…そうか。勝手に色々触ってすまんかったな」
「え?いやいや、むしろありがとうだってば。何杯でもうどん奢りますぜ、旦那」
「なんやその喋り方。ほな、お言葉に甘えて奢ってもらうわ」
「いえっさー!にしても、本当面倒見いいよね、服部って」
「はぁ?アホなこと言いな。野々村だからや」
「…なるほど。私ほど手のかかる奴は他に居ないと」
「…この脳内お花畑」
呆れたような顔の服部。その理由はわからないけど、怒ってるわけじゃないみたいだから気にしない。
「そういえば、この時間までお昼ご飯食べてないなんて、服部も寝てたの?それとも事件?」
「まぁそんなとこや」
「え!どっち?!この辺で事件起きてたの?!」
「あー、寝とったねん。昨日は遅かったしな」
「なぁんだ、そっか!お揃いだね」
「一緒にすなボケ」
「あ!そういえばあそこのうどん屋さんドーナツ始めたんだった!食べたい!」
「買って帰って3時に食い」
「あ、あそこ新しいお店出来てる」
「飯食ったら行ってみるか?」
「うん!そういえば、この前紗奈が…ちょ、見た?!今の猫!ハート柄だった!」
「忙しいやっちゃな〜」
なんてことない昼下がり。だけど天気はいいし、仲良しな友達もいるし、食べたうどんは美味しかった。今日も最高に幸せだ。
はぴねす