4 とれーどまーく
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映画館を出た私達は昼ごはんを食べるべく、近くのレストランに入ったけれど。
「もうお腹いっぱい…なんで?!いつもならこのくらいペロリなのに!」
「ポップコーン食ったからやろ」
「はっ…!も、盲点だった…!うう…頼んだものを残すなんて心苦しい…!」
「アホやな。食ったるから皿寄こし」
「いいの?!ありがとう服部!」
相変わらず食べるのが早い彼はとっくに食べ終わっていて。私の残した分もあっという間になくなった。
「リップだけここで塗ってもいい?」
「おう。…今日、なんでそないお洒落して来てん」
「え?そりゃデートだから」
「そうか」
「おやおや?照れてますか服部さーん」
「照れてへんわ。早う塗れ」
「はーい」
「まだ日暮れまでは時間あるし、どっか行くか?」
「あ、じゃあ私服屋行きたい!」
「ほな行こか」
リップと手鏡を鞄に入れながら言う。それを見て服部が伝票を持って立ちあがる。
「わーい。ご馳走様でーす」
「奢らんわボケ」
「無念。今日さ、服部珍しく綺麗めな格好してるじゃん」
「悪かったな。普段は綺麗やなくて」
「あはは。ひねくれてる〜。普段のカジュアルも似合ってますよ!魔王様」
「魔王やめい」
「綺麗めなのもかっこいいじゃんって思ってさ。だからもっと違う系統も見てみたくなったの」
「…かっこええと思うとん?」
「え?うん。モノトーンコーデ初めて見たけどかっこいいよ。似合ってる!」
少し驚いたような顔をして、それから服部はフイっと顔を逸らしてしまう。褒めようが足りなかっただろうか。
「服部?本当にかっこいいと思ってるよ?」
「別に疑ったわけちゃうわ。その、おおきに」
「…もしや照れてらっしゃる?!えー!そうなの?!服部ってば可愛いー!」
「やかましわ!!ピーピー騒ぐな!」
「てっきり言われ慣れてるもんだと思ってたよ〜!もっと早く褒めれば良かった!」
「慣れとか関係あらへん。…野々村に言われんのが、嬉しいっちゅうか…」
「ほんと?私も服部に可愛いって言われて嬉しかった!お揃いだね」
「あ、アホちゃう!お揃いやないわ!」
「そこはお揃いでいいじゃーん」
想像以上の反応にこっちまで嬉しくなってしまう。照れてる服部はなんだか可愛いし、これからも積極的に褒めていこうと思った。
「わ、似合う!スポーティ系もいけるね」
「これ黒羽が好きそうやな」
「確かに。あ、ねぇねぇ!あのカーディガンもいい感じだよ!」
「野々村、似合うんちゃう」
「ほんと?じゃあちょっと羽織ってみよっと」
「お、ええやん」
「うん、可愛い!これにスカート履いてスニーカーと帽子合わせた、ら…」
「ありやな。帽子の店ちょうどそこにあんで」
「行こう!!今すぐ!」
「お、おお。せやな」
すっかり本当の目的を忘れてしまっていた。服部の好きな帽子をリサーチする為のデートなのに。
(普通に楽しんじゃってた!危なー!)
「これとか合うんちゃう?」
「可愛い!じゃない!服部、帽子似合いそうだよね!」
「そうか?昔はよう被っとったんやけどな」
「辞めちゃったの?」
「辞めたっちゅうか、事件の時になくしてもうて」
「嫌なこと思い出しちゃうとか?」
「ちゃうちゃう。別にこれといった理由はないねん。新しいの買う機会がなかっただけで」
言いながら、服部がひとつ帽子を手にとってかぶる。慣れた手つきで髪を整えてこちらを見る。
「どや?」
「似合う!バケハもかぶってみて!」
「これは初やな」
「いいね!でもやっぱキャップかな〜。この中ならどれが好き?」
「せやな…。これがええわ」
「黒と深緑のバイカラーかぁ。うん、かっこいいね。ロゴも控えめで合わせやすそう。今日の服にも絶対合うよ!」
「…これほんまええな。買おかな。いくらやろ」
「は、早まるな!他も見よう!」
服部の手から素早くキャップを奪い取る。プレゼントするつもりなのに自分で買われては台無しだ。
「あ、こら!返さんかい!」
「短気は損気です!あっちの店も見てみよ!」
「ちょ!引っ張るなて!」
服部の腕を引いて違うお店へ移動する。色々見たけど、やっぱり最初に見たあの帽子が1番気に入ったようだった。
(後はいかにバレずに買うか…!)
「喉乾いたしちょお休憩しよ」
「ナイスアイデアだよ服部くん!」
「お、おお。どっか入るか?」
「あそこ!あそこのタピオカ飲みたい!」
「はー?並んどるやんけ」
「いいじゃん、並ぼ!あそこのタピオカ美味しいんだよー!」
嫌そうな服部を強引にタピオカ屋さんの列へ並ばせる。この隙にさっきのお店に行って帽子を買えばミッションコンプリートだ。
「ね、ちょっとトイレ行ってくる!」
「なんやとー?さてはお前、俺だけ並ばせるつもりやな?」
「ち、違うって!やだなー、もう!すぐ戻る!」
「…トイレ逆やわ。アホ」
全速力でお店に向かい、服部が気に入ってた帽子を買う。ラッピングしてもらいたかったけど、遅すぎると怪しいと思ってエコバッグにいれたけど。
(こ、このエコバッグどうやって誤魔化せば?!)
「やっと戻ってきおったな」
「ご、ごめん。ちょっと混んでて…」
「思っきり買い物しとるやんけ」
「これは、違うよ!その、ゴミだよ!」
「小学生でももっと上手い嘘つくで」
「無念…」
しらっとした目で見られたけど、深くは聞かれず胸を撫で下ろす。もう渡してしまいたい衝動を我慢しながら、列に並んだ。
とれーどまーく