3 さくせんかいぎ
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「本日はお越しいただきありがとうございます」
大学近くのカフェ、テラス席。頼んだカフェモカが届いてから紗奈と志保に向けて深深と頭を下げる。
「珍しいわね。美衣が女子会しようなんて言うの」
「それを6人のグループトークに送ってくるあたり、流石だよね」
「いやいや、それほどでも」
「褒められてないわよ」
「今回お集まりいただいたのは、ご相談がございまして」
「相談?」
「先日、服部にメレンゲクッキーをもらいまして。それがもうめっちゃくちゃ美味しくて」
「あら。なに?恋の話かしら」
コーヒーを飲んでた志保がカップをソーサーに置いて、少し身を乗り出す。紗奈はオレンジジュースをストローで啜ってる。
「いや、メレンゲクッキーの話です。あまりに美味しかったから調べたんですね。何処のかなって。そしたらめっちゃ高くて!そりゃ美味いわ!こーんな小さな袋に入ってたのに1800円て!!」
「急激に興味を失ったわ」
「1800円とかもはや2000円だね」
「そうなの!!もはや2000円なの!」
「何でよ。1800円でしょ」
「私何もしてないのに、2000円のクッキー貰うとかさすがに申し訳なく無い?!ってなって!しかも服部その日私の課題まで手伝ってくれて!むしろ私が2000円払うべきでは?!」
「別にいいじゃない。彼の好意でしょ。素直に受け取っておけば」
「そうゆう訳にはいかないの志保!ギブアンドテイクよ!」
力説すると、ため息混じりにコーヒーを手にする志保。絵になるな、なんて思いながらその姿を見つめる。
「それで?どうすれば気が済むの」
「うん!なにかお礼をしようと思って!サプライズで!」
「いいんじゃない。どんなお礼にするか相談したいわけ?」
「そう!さすが志保!理解が早い!」
「デートでもしてあげたら。喜ぶわよ」
「あはは。志保ったら!そんな訳ないじゃん!それより、服部の欲しい物とかなんか知らない?」
「驚くほど伝わってないのね…」
「服部の欲しいものかー。そもそも服部って何が好きなの?事件?」
「まぁ推理系なら外さないでしょうけど、並大抵のものじゃきっと駄目ね」
服部の好きな物。私も色々考えてみた。たこ焼き、お好み焼き、バイク、推理、暗号、剣道。でもどれもピンとこない。
「よし。私が服部に何が好きか聞くわ」
「待ちなさい。サプライズだって忘れたの?」
「あ、そっか。バレちゃ駄目なのか。じゃあ黒羽に聞くわ」
「なんでそうなるのよ。聞くならせめて、プレゼントで何もらったら嬉しい?くらいにしときなさい」
「工藤は今まで志保があげたプレゼントの中で何が1番喜んでた?」
「そうね…。時計かしら」
「あー!いつもつけてるあれ?志保からのプレゼントだったんだ!」
「ええ。前に使ってた物が壊れたから、似たような物を贈ったの」
必需品は喜ばれるかもしれないけど好みもあるし、そもそも友達が贈るようなものでもない気がする。
「あ、黒羽から返事きた。このスニーカーだって」
「それ黒羽が今欲しいものでしょ」
「だね。バイト代入ったら買うって言ってたやつだ」
「靴は割と場所とるし、そもそも足のサイズ知らないし」
「帽子なんていいんじゃない?」
「え?帽子?」
「服部って帽子被るの?イメージない」
「高校生の時はよく被ってたわ」
「へぇ。そうなんだ。知らなかった」
「帽子、いいかも!あっても困らないし、値段もお手頃だし!志保、服部が昔被ってたのがどんなだったか覚えてる?」
「ええ。似たような画像探すわね」
言いながら、志保がスマホを取り出して手を止める。不思議に思いながら首を傾げると、彼女が笑う。
「悪いわね。やっぱり全く覚えてないわ」
「ええ?!この短時間で記憶喪失?!」
「大丈夫?病院行く?」
「行くわけないでしょ。でも大丈夫。いい考えがあるの」
「いい考え?」
「デートするのよ。そして彼本人に選んでもらえばいいわ」
「えー?!それじゃサプライズにならないじゃん!」
「バカね。プレゼントだって言わなきゃいいのよ。あれ似合いそうとか言って試しに被らせて、どれが好き?ってさり気なく聞き出すの。そしてそれを後からこっそり買えば、どう?完璧でしょ」
「てっ…天才なの?!」
まさに青天の霹靂。確かにその方法なら好みじゃないなんて最悪の事態にはならない。やはり美人はすごい。
「いい?サプライズがバレない為に、デートに誘うのよ。カモフラージュの為に映画でも見るといいわ」
「な、なるほど!!」
「私も映画見たい!ヒーローアニメのやつ!」
「あ、じゃあみんなで行く?」
「駄目よ。本来の目的は彼の好きな帽子をリサーチすること。人数が増えれば誘導は難しくなるわ。2人で行きなさい」
「いえっさ!志保先生!」
「ちぇー。じゃあ志保、一緒に行こうよ」
「私はパス。黒羽でも誘えば?」
「えー。じゃあ黒羽でいっか」
プレゼントが決まるだけでなく、確実に喜ばせる為のプランまで決まった。後は服部をデートに誘うだけだ。すっかりご機嫌になった私は、カフェモカに手を伸ばした。