1 いつめん
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「おはよう、諸君!」
「おー、野々村。はよ」
「あれ?珍しい。黒羽だけ?」
荷物をテーブルに置きながら言えば、黒羽が自分のスマホの画面をこちらに向けながら答える。
「服部と工藤は登校中に遭遇した事件の捜査中だと。宮野から写真付きで送られてきた」
「本当だ。てかグループラインじゃん。全然気付かなかった」
「また持ってくんの忘れてんじゃねぇの?」
「いや、今朝は確かにポケットに入れて…あは。これモバイルバッテリーだわ」
「ほら見ろ。堤は既読つかねぇからどうせ寝坊だろうよ」
「昨日バイトって言ってたし、多分そうだね」
スマートウォッチをつけてても、本体を忘れているのでは意味が無い。ただの時計と化したそれで時間を確認すると同時に、教授が入ってきた。
「ね、見て黒羽!ネイル変えたの」
「ん?変わったか?」
「ねぇ酷い!明らか変わったよ!前はこれ…スマホないんだった」
「ばーか。そうゆう間違い探しは服部とやれよ。いちいち爪なんて見てねぇっての。探偵じゃあるまいし」
「女の変化に気付かない男はモテないんだから」
「うるせぇ。好きな子の変化にだけ気付けりゃいいんだよ」
「それはそう!黒羽好きな子いるの?」
「いたらお前の隣で講義うけてねぇよ」
黒羽も服部もモテるのに、何故か2人とも彼女はいない。工藤含め、志保とは高校の時からの付き合いらしいから目が肥えてるのかもしれない。
「そうゆうお前は?好きな奴いねぇの?」
「いたらとっくに話してるって」
「それもそうだな。お前思ったことすぐ口に出すし」
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてねぇよ」
「暇だなー。黒羽、なんかマジック見せてよ」
「お前今講義中だってわかってるか?」
「小腹すいたからお菓子出して」
「話聞け。あとマジックは魔法じゃねぇの。そんな都合よく菓子なんて持ってるかっての」
「えー。服部なら持ってるのになぁ」
「バカ。そりゃお前、あいつは…」
黒羽の言葉を遮るように、ドアが開いて服部が入ってくる。事件絡みで遅刻や早退をするのはいつもの事だから、教授も特に気にした様子なく授業を再開する。
「おはよ、服部。事件解決した?」
「ああ。簡単な事件やったで」
「工藤と宮野は?」
「今向かっとるやろ。俺はバイクやからな。3人は乗られへんし」
「ああ、そういやそうだったな」
「堤は寝坊か?」
「そうみたい。はい、服部の分のプリント」
「おおきに。お、ネイル変えたんか」
「可愛いでしょ!ブラウンネイル」
「ああ。前のよりこっちんが美味そうでええやん。お好み焼きの色やな」
「ねぇー!褒め方0点!」
思わず少し大きな声を出して、教授に静かにと注意されてしまう。ジトっとした目で服部を睨む。
「なんやその目は。せっかくお前の好きそうな菓子持って来たっちゅうのに」
「え!ほんと?!」
「野々村ー。次大きな声出したら退場な」
「はい!すみません!」
「相変わらず声とリアクションがでかい奴やな」
「だって嬉しくて…ちょうど小腹空いてたし」
「やと思うたわ。絶対この時間小腹空かすんやから、もっと朝飯食え言うとるやろ」
「朝からそんなに食べれないもん」
「しょうがない奴やなぁ。ほれ」
服部がコンビニ袋ごとこちらへ差し出す。それを受け取って中身を見れば、パッケージの可愛いグミが入っていた。
「可愛い〜…!しかも桃味…!最高かよ〜。ありがとう、服部」
「お礼は新しいヘルメットでええで」
「対価が高すぎる…!」
「冗談や」
「すみません。遅れました」
「おお。工藤と宮野か。座りなさい」
服部からもらったグミをひと粒口へ放り込んだ時、再びドアが開いて工藤と志保が入って来た。
「志保、工藤。おはよ」
「おはよう、美衣。何食べてるの?」
「服部がくれたグミ。1個いる?」
「思ったより早かったやんけ、工藤」
「高木刑事が送ってくれたんだよ」
「相変わらずお前に甘いなー、あの刑事」
警察直々に協力を要請される事もある服部と工藤と志保は、私達より遅刻も早退もするのに、常に成績トップで単位もきちんと取得している。
黒羽もなんだかんだ頭はいいし、この男は何より要領がいい。つまり、今教授が話してる課題について頭を抱えるのは私だけ。
(あ、紗奈もか。まだ夢の中の同士よ…)
「ほれ」
「え?何このUSB」
「今出されとる課題の資料や。プリントの礼に貸したるわ。お前、要点まとめるん下手くそやから時間かかるだけやし、これあれば余裕やろ」
「か、神様!!ありがとう服部!!」
「はい、野々村退場な」
「ああ!!やっちゃった…!教授!どうかお慈悲を!」
「じゃあ講義終わり私の部屋に来なさい。まとめてほしいプリントが山のようにある」
「よ、喜んで」
せっかくの空きコマが潰れることを確信して、テーブルに力なく項垂れる。隣から服部のアホって声が聞こえた。
いつめん