2 再会
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どんなラブロマンスな展開があるかとドキドキしてた数分前の私を殴りたい。
「無理!無理だって!私テニスなんてやったことないよ?!」
「ボール来たらラケット振ればいいだけだって」
「絶対嘘じゃん!!越前くん相当テニス強かったじゃん!腕もげる!!」
「ごちゃごちゃうるさい。いくよ」
「鬼ー!!」
コートに招き入れられてラケットを手渡され、私は今越前くんとネットを挟んで立っている。どんな強力なボールがくるかと思えば、山なりのゆっくりなそれは私の手元目掛けて落ちてくる。
(こ、これなら打てるかも!)
「ナイス。もう1回」
見様見真似でラケットを降れば、ボールは見事越前くんの方へ飛んでいく。そしてまた、私の手元目掛けてボールが返ってくる。
「す、すごい!私、出来てる!テニスしてる!」
「やるじゃん。その調子」
でも日頃の運動不足のおかげで、私の息はすぐにきれる。そんなに動いたわけでもないのに。
(え…てゆうか、私ここから動いてなくない?だってボール、絶対ここに返ってくるし…)
越前くんがそうしてるのだと気付いたのは、もう腕が限界に近くなった頃。彼は下手くそな私のせいでコートをあっちこっち走り回っていたのに。
「いや凄すぎない…?!さすがテニス部顧問…!」
「どーも。水いる?」
「ありがとう…いただきます…!」
ベンチに座って乱れた息を整えてる私に越前くんがペットボトルを差し出す。有難くそれを受け取って体に流し込む。
「めっちゃ腕疲れた…明日絶対筋肉痛…」
「あれだけで?もっと運動した方がいいんじゃない」
「ご最もです…。にしても、越前くんが先生か〜。正直めっちゃ意外だった」
「別になるつもりなかったからね」
「え。そうなの?」
「そう。片付けてくる。休んでて」
「あ、うん」
詳しい話を聞かせて貰えるほどの仲じゃない。気になるけど、何も言うまいともう一度水を飲んだ。
「ところで野々村は結局何しにここ来たわけ」
「越前くんが働いてるって知って会えるかなって思って。まさか本当に会えちゃうなんて、私超ラッキーじゃない?」
「…だね。でもそうゆうの、普通本人に言わないんじゃない」
「あはは。嘘つけないもんで」
「ふーん。じゃあなんで俺に会いたかったわけ?」
「それは、友達と昔好きだった人に会いに行ってみようって話になって…知ってた?私、越前くんのこと好きだったんだよ」
片付けを終えた越前くんが再びベンチの方に戻ってくる。どんな反応するかとワクワクしながら顔を覗き込めば、彼はふっと笑う。
「知らないと思った?」
「…負けました」
「まだまだだね」
昔からかっこよかったけど、大人になって色気も加わった気がする。クールさの中に余裕も感じる。
「いい男になっちゃって〜。彼女さんが羨ましいよ」
「いないけど」
「え?!なんで?!は!嫁がいるとか?!」
「いない」
「なぜ?!そんないい男なのに!はっ!!もしかして、彼氏が…?!」
「違うから。そんな驚く事?恋人いないくらい珍しくないでしょ」
確かに恋人がいないのはそんなに珍しくないけど。越前くんほどの優良物件なら話は別なのだ。
「ねぇ、また練習付き合ってくれない」
「え?そりゃいいけど…私で練習になる?」
「初心者に教えるのって結構難しくてさ」
「なるほど!教える練習って事か!んー、でもそうなるとちゃんとテニスするんだよね…」
「もちろん、タダでとは言わない」
越前くんが私の持ってるペットボトルをひょいと取り上げて、残った水を飲みきる。CMみたいだと、その姿から目が離せない。
「なにが欲しい?言ってみてよ」
「な、なんでも…いいの…?」
「いいよ」
まっすぐこちらを見つめる越前くん。王子様みたいな台詞とその力強い眼差しに胸が高鳴る。
「じゃあ…写真、撮って欲しい」
「…は?写真?」
「そう。ツーショット」
「いいけど…本当にそんなんでいいわけ?」
「いいの?!うん!それでいい!やった!ありがとう!」
いそいそとスマホを出す。越前くんはペットボトルをベンチに置いて、私の横に並ぶように座る。近づいた距離にまた胸が音を立てた。
「じゃあ撮るよ…うん!バッチリ!」
「ん。連絡先教えて。詳しいことはまた連絡する」
「はーい」
これで勝負は私の勝ちだ。近いうちにケーキバイキングが食べれる喜びと、写真でもイケメンな越前くんに顔がにやける。
(これで恋人なしって…信じられな…って、ちょっと待って。写真なんてお願いせずに彼女に立候補させてもらった方がよかったのでは?!)
「帰るよ、野々村」
「あ、うん。…ねぇ、越前くん。ちょっと聞くんだけど…さっきの欲しいものってさ、彼女にして欲しいとかでも、ありだったりした?」
そう聞くと、彼はキョトンとした顔をして。それからふっと笑った。
「気付くの遅すぎ」
「そっ…そんな…!も、もう1回やり直させて!写真消すから!」
「駄目。ほら帰るよ」
「あー!そんなぁ!!」
なにが今会えばもっと上手くアプローチ出来るだ。大チャンスを逃しておいて。先をあるく越前くんを追いかけながら、自分の馬鹿さ加減を恨んだ。
1/1ページ