もし貴方と出逢わなかったら
「……おい」
ラップバトルが終わった後、話しかけてきたのは俺からだった。
「なに、僕は一兄じゃないですけど」
大きい瞳、だが鋭く敵を見る目。明らかに警戒していた。
コイツはBustersBross!!!の三番手、山田三郎だ。まだ中学三年生にも関わらずラップバトルをしている。神童と言われるのも何となく分かる。始めたばかりにも関わらず実力はかなり有り、練習していけば一郎並みには強くなるだろう。
初めて山田三郎を見た時、ドクリと俺の中で何かが溢れる音がした。リリックは上手く刻めてはいないものの心に鈍い痛みと体に電流のような衝撃を受けた。
気になる、その想いから始まったんだろう
TDDが解散した後、一郎が兄弟でグループを組んだ事を知った俺は元々小さい頃に顔を見合わせていた山田二郎と山田三郎を思い出した。
「……あいつらか」
「なんだ左馬刻、怖気付いたか?」
「ンな訳ねぇだろ、ウサポリ公吹っ飛ばすぞ」
…確かに兄弟だし、いずれ次男も三男もラップにてを出すだろうと思っていた。
だがしかし、三男は今年中3、14歳だった気がする。俺もそのぐらいにはラップをやっていたが果たしてすぐラップバトルに出れるほど実力があるのか。期待はしてなかった。
…が、三男は俺の予想をはるかに超えるほど強い威力を持っていた。心を喰われる、そんなリリックだった。じんわりと相手を追い詰めて崩壊させる。俺のぶつけて壊すリリックとは違う。
「別にクソダボだと勘違いしてるわけじゃねえ」
「じゃあなんですか?喧嘩なら買いませんよ、疲れてるんですから。」
「喧嘩を売りにきた訳でもねえ」
「…はあ、もう帰って良いですか?僕だって時間がある訳じゃないんですから……?!」
俺は山田三郎の目の前で膝をつき、好意を持っている事を伝えた。
山田三郎は俺の行動があまりにも急過ぎて、意味が分からないと呟いた。
「俺様が言ってるんだ、ちょっとは付き合えやクソガキ」
「はっ、あ?い、意味分からないんだけどてかなんで僕なの?!接点ないでしょ、ちょっと、ぇ、なに?!」
ふんわりと抱きしめて山田三郎に呟く
「減るもんじゃねえから少しは付き合えって言ってんだよ…俺もよく分かってないし」
「きゅ、うに…はあ…」
ぎゅ、と自分の腰に山田三郎の手が回った。
「え、は、おい」
「僕も貴方に興味があっただなんて…バレたのかと思ったんですよ。あなたがTDDで一兄と居る事は一兄からも聞いているし、知っています。今日初めてラップバトルをした時、力強いリリックで貴方には勝てないと思った。ずっと気になっていた貴方のラップが聴けてよかったって思ってますよ。でも、僕たちは敵同士だし貴方に興味があるって自覚した時怖くて怖くて仕方がなかったんです。……まさか、お互いに興味があって惹かれてたなんて…ふふ」
俺を抱きしめながらポツリポツリと山田三郎の好意が溢れる。ドクリドクリ、とラップバトルの時に感じた感覚が蘇る。ふわりと香る柑橘系と石鹸の香りがふわふわと伝わって、俺自身が俺じゃなくなるんじゃないかと思うぐらいドキドキしてしまって、こんな感覚は初めてだと山田三郎を強く抱きしめた。
「ん、苦しい、やめろ」
苦しかったのか、埋めた顔を上げる。
山田三郎と目が合う。お互いが顔を真っ赤にして、お互い笑ってしまう。
「なあ」
「な、なんですか」
ふわりと柔らかい頬を撫でて唇に触れる。
「キス、していいか」
「……いちいち聞かないで下さい」
山田三郎が笑みを浮かべるとゆっくりと目を閉じる。
初めてキスは触れるぐらいの、とても甘い。
溶けてしまいそうなキス。
25になってまともな恋愛もしてない自分が、11個も下のガキに何でこんなにドキドキしているかは分からない。
だが、そのキスはこれまでしたキスより幸せで甘かった。
ラップバトルが終わった後、話しかけてきたのは俺からだった。
「なに、僕は一兄じゃないですけど」
大きい瞳、だが鋭く敵を見る目。明らかに警戒していた。
コイツはBustersBross!!!の三番手、山田三郎だ。まだ中学三年生にも関わらずラップバトルをしている。神童と言われるのも何となく分かる。始めたばかりにも関わらず実力はかなり有り、練習していけば一郎並みには強くなるだろう。
初めて山田三郎を見た時、ドクリと俺の中で何かが溢れる音がした。リリックは上手く刻めてはいないものの心に鈍い痛みと体に電流のような衝撃を受けた。
気になる、その想いから始まったんだろう
TDDが解散した後、一郎が兄弟でグループを組んだ事を知った俺は元々小さい頃に顔を見合わせていた山田二郎と山田三郎を思い出した。
「……あいつらか」
「なんだ左馬刻、怖気付いたか?」
「ンな訳ねぇだろ、ウサポリ公吹っ飛ばすぞ」
…確かに兄弟だし、いずれ次男も三男もラップにてを出すだろうと思っていた。
だがしかし、三男は今年中3、14歳だった気がする。俺もそのぐらいにはラップをやっていたが果たしてすぐラップバトルに出れるほど実力があるのか。期待はしてなかった。
…が、三男は俺の予想をはるかに超えるほど強い威力を持っていた。心を喰われる、そんなリリックだった。じんわりと相手を追い詰めて崩壊させる。俺のぶつけて壊すリリックとは違う。
「別にクソダボだと勘違いしてるわけじゃねえ」
「じゃあなんですか?喧嘩なら買いませんよ、疲れてるんですから。」
「喧嘩を売りにきた訳でもねえ」
「…はあ、もう帰って良いですか?僕だって時間がある訳じゃないんですから……?!」
俺は山田三郎の目の前で膝をつき、好意を持っている事を伝えた。
山田三郎は俺の行動があまりにも急過ぎて、意味が分からないと呟いた。
「俺様が言ってるんだ、ちょっとは付き合えやクソガキ」
「はっ、あ?い、意味分からないんだけどてかなんで僕なの?!接点ないでしょ、ちょっと、ぇ、なに?!」
ふんわりと抱きしめて山田三郎に呟く
「減るもんじゃねえから少しは付き合えって言ってんだよ…俺もよく分かってないし」
「きゅ、うに…はあ…」
ぎゅ、と自分の腰に山田三郎の手が回った。
「え、は、おい」
「僕も貴方に興味があっただなんて…バレたのかと思ったんですよ。あなたがTDDで一兄と居る事は一兄からも聞いているし、知っています。今日初めてラップバトルをした時、力強いリリックで貴方には勝てないと思った。ずっと気になっていた貴方のラップが聴けてよかったって思ってますよ。でも、僕たちは敵同士だし貴方に興味があるって自覚した時怖くて怖くて仕方がなかったんです。……まさか、お互いに興味があって惹かれてたなんて…ふふ」
俺を抱きしめながらポツリポツリと山田三郎の好意が溢れる。ドクリドクリ、とラップバトルの時に感じた感覚が蘇る。ふわりと香る柑橘系と石鹸の香りがふわふわと伝わって、俺自身が俺じゃなくなるんじゃないかと思うぐらいドキドキしてしまって、こんな感覚は初めてだと山田三郎を強く抱きしめた。
「ん、苦しい、やめろ」
苦しかったのか、埋めた顔を上げる。
山田三郎と目が合う。お互いが顔を真っ赤にして、お互い笑ってしまう。
「なあ」
「な、なんですか」
ふわりと柔らかい頬を撫でて唇に触れる。
「キス、していいか」
「……いちいち聞かないで下さい」
山田三郎が笑みを浮かべるとゆっくりと目を閉じる。
初めてキスは触れるぐらいの、とても甘い。
溶けてしまいそうなキス。
25になってまともな恋愛もしてない自分が、11個も下のガキに何でこんなにドキドキしているかは分からない。
だが、そのキスはこれまでしたキスより幸せで甘かった。
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