ベレニケと真珠星【スピカを置き去り スピンオフ】
髪の毛を燃やしたその次の日から、それはだんだんと日常を崩していった。
始めは小さな種だった。
あるとき、大学の授業前に暇そうに待っているときだった。口内に一本の糸のようなものが歯に引っかかっているような感覚がした。口に手を入れ糸のようなものを取った。それは糸ではなく一本の長い髪の毛だった。俺は自分の髪の毛が長いので、何かの拍子に口に入ったのかと気にも留めなかった。
俺は大学の教室の隅にあるゴミ箱に髪を捨て、もうすぐ授業が始まると慌てて授業の準備をした。この日の授業は座学ではなく学生実験だった。医学部の教授と実験をサポートする学生が教室に入り、今日の概要を説明した後、学生たちは実験を始めた。俺は単位が危なかったのでこういう講義ぐらいはまじめに受けようとした。何気なく一緒に実験をする学生たちを見る。向かい側に座っている男子学生は何だか上の空だった。しばらくすると男子学生は教授のサポートをする先輩の学生に何やら話しかけられていた。
俺はその男子学生の近くにある薬品が必要だったため彼にとってもらおうとした。彼の名前を手元のプリントで確かめて呼びかけた。
「すまない。曙君、そこの薬品をとってくれないか」
曙くんが返事をして薬品に手を伸ばした瞬間、彼は床に倒れこんだ。
「……えっ?」
周りは突然のことに騒めいた。教授は学生たちに支持を出し、どこかに連絡をし始めた。曙くんと話していた先輩が曙くんの容体を見た。
「心配しないで。脈は安定しているし、ちゃんと息はしているよ」
しばらくすると大学の保健室の人が来て彼を運んで行ってしまった。
その後、授業は再開された。期日までにレポート書いてくるように課題を言われその日の講義は終了した。
俺は曙くんが心配になって彼の様子を見ようと保健室に向かった。
保健室の廊下で友人と偶然会った。
「陸……。どうしたんだ。こんなところで」
「それはこっちのセリフだよ。珍しいじゃないか保健室に来るなんて」
「実はさっき実験中に倒れた奴がいて、同じ班だったから心配して見にきたんだ。陸は?」
「俺も実は、同じ研究室の先輩に講義中に倒れた学生がいたから、水を買ってきてって言われたんだ。目的は一緒ってとこか」
「そうみたいだな。で、曙くんの様子どうだった?」
「彼だったら目を覚ましていたよ。水もちゃんと飲めていたみたいだから心配しなくてもいいかも」
「なら、安心した」
「じゃあ、僕は講義があるから」
「ああ、またな」
そう言って俺は陸と別れた。そして曙くんがいる部屋に入ろうドアノブに手をかけた瞬間、いきなりドアが開いた。
「うおっ!」
曙くんらしき人が保健室の部屋から飛び出ていった。
俺は驚いて彼を見送ることしかできなかった。
「えっと……。なんだったんだ一体」
しばらく放心状態でいると、背後から声をかけてきた人物がいた。
「銀星くんの様子を見に来てくれたんだね、ありがとう。でも彼なら大丈夫だよ。ほら今飛び出して出で行ってしまっただろう。元気な証拠だよ」
「あっ……はい。大したことがないならよかったです」
俺は適当に誤魔化して保健室から出ていった。
そして今日は授業がないから帰ろうかと思ったその時、口に違和感を覚えた。
「んべっ……なんだ、また髪の毛か」
俺は気にも留めなかった。しかし、それは始まりに過ぎなかった。
始めは小さな種だった。
あるとき、大学の授業前に暇そうに待っているときだった。口内に一本の糸のようなものが歯に引っかかっているような感覚がした。口に手を入れ糸のようなものを取った。それは糸ではなく一本の長い髪の毛だった。俺は自分の髪の毛が長いので、何かの拍子に口に入ったのかと気にも留めなかった。
俺は大学の教室の隅にあるゴミ箱に髪を捨て、もうすぐ授業が始まると慌てて授業の準備をした。この日の授業は座学ではなく学生実験だった。医学部の教授と実験をサポートする学生が教室に入り、今日の概要を説明した後、学生たちは実験を始めた。俺は単位が危なかったのでこういう講義ぐらいはまじめに受けようとした。何気なく一緒に実験をする学生たちを見る。向かい側に座っている男子学生は何だか上の空だった。しばらくすると男子学生は教授のサポートをする先輩の学生に何やら話しかけられていた。
俺はその男子学生の近くにある薬品が必要だったため彼にとってもらおうとした。彼の名前を手元のプリントで確かめて呼びかけた。
「すまない。曙君、そこの薬品をとってくれないか」
曙くんが返事をして薬品に手を伸ばした瞬間、彼は床に倒れこんだ。
「……えっ?」
周りは突然のことに騒めいた。教授は学生たちに支持を出し、どこかに連絡をし始めた。曙くんと話していた先輩が曙くんの容体を見た。
「心配しないで。脈は安定しているし、ちゃんと息はしているよ」
しばらくすると大学の保健室の人が来て彼を運んで行ってしまった。
その後、授業は再開された。期日までにレポート書いてくるように課題を言われその日の講義は終了した。
俺は曙くんが心配になって彼の様子を見ようと保健室に向かった。
保健室の廊下で友人と偶然会った。
「陸……。どうしたんだ。こんなところで」
「それはこっちのセリフだよ。珍しいじゃないか保健室に来るなんて」
「実はさっき実験中に倒れた奴がいて、同じ班だったから心配して見にきたんだ。陸は?」
「俺も実は、同じ研究室の先輩に講義中に倒れた学生がいたから、水を買ってきてって言われたんだ。目的は一緒ってとこか」
「そうみたいだな。で、曙くんの様子どうだった?」
「彼だったら目を覚ましていたよ。水もちゃんと飲めていたみたいだから心配しなくてもいいかも」
「なら、安心した」
「じゃあ、僕は講義があるから」
「ああ、またな」
そう言って俺は陸と別れた。そして曙くんがいる部屋に入ろうドアノブに手をかけた瞬間、いきなりドアが開いた。
「うおっ!」
曙くんらしき人が保健室の部屋から飛び出ていった。
俺は驚いて彼を見送ることしかできなかった。
「えっと……。なんだったんだ一体」
しばらく放心状態でいると、背後から声をかけてきた人物がいた。
「銀星くんの様子を見に来てくれたんだね、ありがとう。でも彼なら大丈夫だよ。ほら今飛び出して出で行ってしまっただろう。元気な証拠だよ」
「あっ……はい。大したことがないならよかったです」
俺は適当に誤魔化して保健室から出ていった。
そして今日は授業がないから帰ろうかと思ったその時、口に違和感を覚えた。
「んべっ……なんだ、また髪の毛か」
俺は気にも留めなかった。しかし、それは始まりに過ぎなかった。