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ベレニケと真珠星【スピカを置き去り スピンオフ】

閉館時間になり美術館を出て、二人で駅に向かう。俺はズボンのポケットにあった家の鍵がないことに気が付いた。
「すまない、カルロス。家の鍵多分、美術館で落としたみたいだ。取りに戻るわ」
「大丈夫?一緒に行こうか?」
「いや、ひとりで行ける。悪いがここで解散でもいいか?」
「それは構わないけど……。何かあったら連絡するんだよ」
「ああ。じゃあまた、大学で」
そう言いって俺は鍵を取りに美術館まで戻った。
美術館に着くと閉館時間が過ぎているため、正門は閉まっていた。俺は周りを見てまわると一つ扉が開いているのを見つけた。それは職員用の出入り口らしかった。俺は申し訳ないと思いながら、その扉から入ろうとした。自分の傘はどうしようかなと、思って見渡すと、入口の前に傘を入れる袋があった。それに傘を入れて俺は中へ入っていった。
薄暗い中、スマホの明かりを頼りに鍵を探していると、ちょうど第一展示室と第二展示室を繋ぐ入り口の近くに鍵を見つけた。
「あった。よかった」
俺は鍵を拾い上げさっさと帰ろうとした瞬間。
「誰かいるのか!」
突然、第一展示室のほうから男の声がした。俺はとっさに壁に隠れてしまった。
俺はあまりにも唐突なことに心臓をバクバクさせながら息をひそめた。ふと、足のほうから何か気持ち悪い感覚がした。見るとどうやら傘を入れていたビニール袋がずり落ち、とっさに隠れたときに靴で引っかかり、ビニール袋が破れて中から水がこぼれたようだ。俺は申し訳ないと思いながらも取りあえず足でこぼれた水を散らばせた。
しばらくして壁からそっと顔をのぞかせると男が絵の前をじっと見ていた。しばらく動く様子もないと判断してその隙に美術館から出ていき、駅まで帰った。
「あ~怖かった。でも鍵は見つかったし取りあえず一安心だな」
俺は、明日一限目から授業があることを思い出し、足早に家に帰った。
一限目の授業は寝坊した。
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