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スピカを置き去り

 数週間後、銀星は食堂の窓から外の景色を見ていた。すると彼に近づく足音が聞こえた。銀星が振り向くとそこには旭が立っていた。
「久しぶりね。銀星」
「旭さん。どうしてここに?」
「初瀬君から聞いたの。この時間はここにいるって」
「ああ湊から……」
 湊とはあれから変わらない関係のままだ。銀星は湊から水銀の血を預かり大切に持っている。
「今日は銀星に話があってきたの」
「…話ってなんですか?」
「うちでアルバイトしない?」
「アルバイト?」
「そう。私ね、駅の近くで骨とう品とかを扱っている店をやっているの。ちょうど男手が欲しくてね。そう考えたら銀星の顔が浮かんでね…。どうかしら」
 銀星は少し悩んで旭の顔を見た。
「大切な質問があります。時給はいくらなんでしょう?」
 彼女は初めて会った時のあの微笑みで、人差し指を立てた。
 彼の心は決まった。

それは、何かが終わるカウントダウンと気付きもせず。

       「スピカを置き去り 完」
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