スピカを置き去り
「これが僕の罪さ」
湊は全てを話し終えた。
「……」
銀星はなんて声をかければいいのか分からなかった。
「僕は長い間、罪を償い続けた。本当にこれが正しかったのかわからない。僕の罪はなくなっただろうか」
銀星は答えられなかった。ただ立ちすくむ銀星の前に旭がスッと立つ。
「あなたは永遠といえる間、罪を償い続け、この場で罪を告白した。もう、あなたは許されているわ」
は凛とした声で言った。旭は上着のポケットから何かを取り出した。
「それは…」
「よく知っているはずよ。「水銀の血」。あなたを開放するもの」
彼女の手には小さな小瓶に入った赤い液体があった。
「それは何ですか。旭さん」
「これは『水銀の血』。不老不死となった咎人を救う唯一の光」
「それはつまり……」
「そう。不老不死の人間を殺す毒よ」
それは、湊がこの毒を飲み死ぬことで罪から解放される。湊にとって『水銀の血』を飲むことが最善かもしれない。でも、彼は大切な友人だ。身勝手かもしれないができることなら死んでほしくない。
「水銀の血……。本当にそんなものがあるとは。それを飲めば僕の罪は……」
湊は迷いながらも小瓶を受け取った。
「僕はね、正直生きるのに疲れたんだ。罪を償い続けると誓ったけど心の片隅で許されたいって思っていたんだ。本当に僕はどうしようもない奴だよ」
「湊……!」
銀星が湊に手を伸ばした瞬間。
湊に腕をつかまれて体を寄せられた。
そして、銀星の耳元で秋の夜風のような寂しい声で囁いた。
「これは、君が持ってて。君が僕の死を決めるんだ」
「……!」
脊椎を貫くような鮮烈な言葉に銀星は固まった。
銀星の手には水銀の血があった。
「生きるのに疲れた、許されたいって言ったけど、死にたくはないんだ。まだ……ね。だから、友である君に持っていて欲しんだ。銀星が僕を死なせたいときに死なせて」
「そんな。勝手な奴だよ。湊」
「君はどんなに僕が勝手なことをしても許してくれるんだろう。銀星。」
彼は満点の星空のような笑顔で言った。
*****
ふと、湊は自分の腕時計を見た。
「……ちょうど8時だ。南の空を見てみて」
彼が指さす方を見る。そこには前日までの雨が嘘のような星空が広がっていた。
「あの星とあの星……つなげるとできるのが乙女座。そして、一番輝いているのがスピカ。スピカは乙女が手にしている穂を現しているんだ。」
銀星はスピカを見つめる。湊は小さな、囁くような声で言った。
「あの光景と一緒だよ。彼女は小さな手で穂を握りしめて……。ああでも、やっぱり違う。彼女はスピカを置き去りにして僕の前からいなくなったんだ」
湊は全てを話し終えた。
「……」
銀星はなんて声をかければいいのか分からなかった。
「僕は長い間、罪を償い続けた。本当にこれが正しかったのかわからない。僕の罪はなくなっただろうか」
銀星は答えられなかった。ただ立ちすくむ銀星の前に旭がスッと立つ。
「あなたは永遠といえる間、罪を償い続け、この場で罪を告白した。もう、あなたは許されているわ」
は凛とした声で言った。旭は上着のポケットから何かを取り出した。
「それは…」
「よく知っているはずよ。「水銀の血」。あなたを開放するもの」
彼女の手には小さな小瓶に入った赤い液体があった。
「それは何ですか。旭さん」
「これは『水銀の血』。不老不死となった咎人を救う唯一の光」
「それはつまり……」
「そう。不老不死の人間を殺す毒よ」
それは、湊がこの毒を飲み死ぬことで罪から解放される。湊にとって『水銀の血』を飲むことが最善かもしれない。でも、彼は大切な友人だ。身勝手かもしれないができることなら死んでほしくない。
「水銀の血……。本当にそんなものがあるとは。それを飲めば僕の罪は……」
湊は迷いながらも小瓶を受け取った。
「僕はね、正直生きるのに疲れたんだ。罪を償い続けると誓ったけど心の片隅で許されたいって思っていたんだ。本当に僕はどうしようもない奴だよ」
「湊……!」
銀星が湊に手を伸ばした瞬間。
湊に腕をつかまれて体を寄せられた。
そして、銀星の耳元で秋の夜風のような寂しい声で囁いた。
「これは、君が持ってて。君が僕の死を決めるんだ」
「……!」
脊椎を貫くような鮮烈な言葉に銀星は固まった。
銀星の手には水銀の血があった。
「生きるのに疲れた、許されたいって言ったけど、死にたくはないんだ。まだ……ね。だから、友である君に持っていて欲しんだ。銀星が僕を死なせたいときに死なせて」
「そんな。勝手な奴だよ。湊」
「君はどんなに僕が勝手なことをしても許してくれるんだろう。銀星。」
彼は満点の星空のような笑顔で言った。
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ふと、湊は自分の腕時計を見た。
「……ちょうど8時だ。南の空を見てみて」
彼が指さす方を見る。そこには前日までの雨が嘘のような星空が広がっていた。
「あの星とあの星……つなげるとできるのが乙女座。そして、一番輝いているのがスピカ。スピカは乙女が手にしている穂を現しているんだ。」
銀星はスピカを見つめる。湊は小さな、囁くような声で言った。
「あの光景と一緒だよ。彼女は小さな手で穂を握りしめて……。ああでも、やっぱり違う。彼女はスピカを置き去りにして僕の前からいなくなったんだ」