スピカを置き去り
その日は大嵐で一歩も外に出られる状態ではなかった。ゴウゴウと着のドアを雨と風が叩く。
「この様子じゃ畑の様子も見れないな」
ミナトは畑の様子を見に行こうとしたがこの大嵐では外に行くのは危険と思い、家で大人しく絵でも描こうと思ったそのとき、
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえた。
こんな時に誰だろう。ミナトは不振に思いながら立ち上がり、外に出た。
「すみません。私は旅をしながら商いをしているものです。一晩だけでも泊めてもらえませんか?」
そこに立っていたのは長い赤髪の女だった。フードをかぶっており顔が見えないが声からして若い女のようだ。
「どうしたのですか?」
「私は旅をしていて、この国の国境を今日越えようとしたのですが、嵐にあってしまって……宿も見つからないまま夜になってしまったのです。一晩だけでいいので止めていただけませんか?」
ミナトは女を見た。頭も先から足の先まで濡れていて寒さで凍えている哀れな女を見捨てることはできなかった。
「そういうことでしたらどうぞ。何もない家ですが。この嵐では一晩ではいけないでしょう。好きなだけいてください」
女はパッと顔を上げた。
「ありがとうございます。このお礼は必ず返されていただきます」
*******
嵐の夜が明けた。
村の畑はどこも壊滅状態で、小麦などほとんど農作物が流されていた。
「これからどうするんだ」
「今年の冬は越せるのだろうか」
「もう終わりだ。みんな飢え死になってしまう」
村人たちは口々に心配する声をあげた。
ミナトも自分の畑を見に行った。やはりほかの村人の畑の同じくほとんどの小麦は収穫できる状態ものではなかった。
「……これからどうすればいいのだろうか」
ミナトは膝をつき畑の土を握りしめる。そして目線を上げると、そこには2株の穂がまるで恋人同士が寄り添うように支えあって立っていた。
彼は何か運命を感じ、この二つの小麦の株を持って帰った。家に戻り途方に暮れていた。古い椅子に座るミナトに女が遠慮がちに話しかけていた。
「ごめんなさい。こんなときに来てしまって」
「いえ……気にしないで下さい」
これはミナトの本心だった。
「あら。これは?」
赤い女はミナトの手に握られている2株の小麦を指した。
「これはあの畑で、生き残った小麦の株です」
「それは……大切にしなければいけないですね」
「はい。いつまでもくよくよしてるわけにもいかないので……。ただこれからどうしたものか……」
ずっと下を向き、項垂れているミナトを赤い女は見ていた。そして、赤い女はささやいた。
「嵐の中泊めていただいたお礼です。あなたに知恵を授けましょう」
それは聖女の姿をした悪魔の声だった。
「この様子じゃ畑の様子も見れないな」
ミナトは畑の様子を見に行こうとしたがこの大嵐では外に行くのは危険と思い、家で大人しく絵でも描こうと思ったそのとき、
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえた。
こんな時に誰だろう。ミナトは不振に思いながら立ち上がり、外に出た。
「すみません。私は旅をしながら商いをしているものです。一晩だけでも泊めてもらえませんか?」
そこに立っていたのは長い赤髪の女だった。フードをかぶっており顔が見えないが声からして若い女のようだ。
「どうしたのですか?」
「私は旅をしていて、この国の国境を今日越えようとしたのですが、嵐にあってしまって……宿も見つからないまま夜になってしまったのです。一晩だけでいいので止めていただけませんか?」
ミナトは女を見た。頭も先から足の先まで濡れていて寒さで凍えている哀れな女を見捨てることはできなかった。
「そういうことでしたらどうぞ。何もない家ですが。この嵐では一晩ではいけないでしょう。好きなだけいてください」
女はパッと顔を上げた。
「ありがとうございます。このお礼は必ず返されていただきます」
*******
嵐の夜が明けた。
村の畑はどこも壊滅状態で、小麦などほとんど農作物が流されていた。
「これからどうするんだ」
「今年の冬は越せるのだろうか」
「もう終わりだ。みんな飢え死になってしまう」
村人たちは口々に心配する声をあげた。
ミナトも自分の畑を見に行った。やはりほかの村人の畑の同じくほとんどの小麦は収穫できる状態ものではなかった。
「……これからどうすればいいのだろうか」
ミナトは膝をつき畑の土を握りしめる。そして目線を上げると、そこには2株の穂がまるで恋人同士が寄り添うように支えあって立っていた。
彼は何か運命を感じ、この二つの小麦の株を持って帰った。家に戻り途方に暮れていた。古い椅子に座るミナトに女が遠慮がちに話しかけていた。
「ごめんなさい。こんなときに来てしまって」
「いえ……気にしないで下さい」
これはミナトの本心だった。
「あら。これは?」
赤い女はミナトの手に握られている2株の小麦を指した。
「これはあの畑で、生き残った小麦の株です」
「それは……大切にしなければいけないですね」
「はい。いつまでもくよくよしてるわけにもいかないので……。ただこれからどうしたものか……」
ずっと下を向き、項垂れているミナトを赤い女は見ていた。そして、赤い女はささやいた。
「嵐の中泊めていただいたお礼です。あなたに知恵を授けましょう」
それは聖女の姿をした悪魔の声だった。