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掌篇集

 25×30×20cmの小さな空間。
 それが、この美しい魚たちの世界の全て。
 そろそろ手狭になってきたこの水槽を、もう一回り大きな水槽に入れ替えようと準備してきた。水草や流木などの設置は終わったので、休みの明日に生体の入替えをしようと思ったのだが、そこでふと思ったのだ。
 この魚たちにとって、水槽の入れ替えは今居る世界が無くなるようなものではないだろうか、と。
 明日君の居る世界は無くなるよ、と伝えたとして。
 この魚たちは何を願うだろうか。
 何を願おうとも、明日世界は消え失せ。彼らは新たな世界に移されるのだが。私によって。
「ごめんね?」
 君たちのためだから、許してほしい。
 そう言ったところで、理解は出来ないだろうけれど。
 もしかしたら、私達だって、『誰か』の作った箱庭の中で、生きているだけなのかもしれない。
 『誰か』の胸先三寸で、私達の世界だって終わるのかも。君たちのためだから、なんて言いながら。
 そうなったら、私が願うのはただひとつだ。

 お前の世界も、終わっちまえ!
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