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掌篇集

「ケダマさんお待ちくださいちょっとま、あ、あー!」
 私の叫びに頓着することなく、健やかに成長した巨猫は自分の体のサイズを気にすることなく棚上の狭い隙間を通っていく。そこに置かれた小物をなぎ倒して。
 落下して真っ二つになった海外土産の置物は、対して気に入っても居ないからもういい。惰性で飾っていただけだ。猫が居る以上、猫が上がれる場所に置いておいた私が悪かった。いつの間に棚の上に上がれるようになっていたのかわからないが。
「ケダマさん、もうちょっと自分の体を把握して……」
 棚の上から、ケダマが落っことしたものを掃除する私を見下ろしていた彼は、棚上に残っていた置物を前足でちょいちょいと押し出す。
「ケダマさんだめだよ!?」
 私は素早く置物を取り上げて、ゴミ袋に入れる。どうせ他の場所に飾ることもないのでもう捨ててしまった方が早い。
 ケダマさん、今のは明らかに面白がってますね? ビー玉みたいなまん丸の目がキラキラと輝き、口元が膨らんでいる。完全に遊んでますね?
 私は、ありとあらゆる置物の類を撤去、または固定する事を決めた。
 猫に人の善悪を説いても意味がない。たとえそれを理解しても、それに従う道理は猫にはないのだから。
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