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掌篇集

 これは、単なる日常。
 君とおしゃべりして、笑いあって、食事をして、一緒に眠る。
 毎日の繰り返しのその先。
 その先、が無いだけ。
 世界の終わりが来るならば、そんなものがいい。
 遠い昔にそんな話をした。
 実際はそんな、途切れた映画のフィルムみたいに、ある日いきなり世界が終わるなんてことなくて。
 少しずつ、少しずつ、生き物の住める場所が消え、人は住処を替え、少ない食料を求めて争い、自らその数を減らした。
 君と私はなんとか生き残って、僅かな食料を分け合って身を寄せ合って暮らしていた。
 ある日、とうとう食料も手に入らなくなって、代わりに君が私に見せたのは2つのカプセル。
 これを飲んで眠ったら、二度と目が覚めないんだって。
 私達は、手を繋いでカプセルを飲んだ。
 緩やかに訪れる眠気に抗うように、ぽつりぽつりと思い出話をした。
 世界が終わるまで生きるより、私達は私達の世界を終わらせる事を選んだ。
 穏やかに。
 最期は君と居られて幸福だったと、笑えるうちに。
 昔夢見た最期に、少しでも近付けただろうか。
 そうして、私の意識は途切れた。
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