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掌篇集

 初めて、告白されたの。
 彼女はそう言ってはにかんだ。
 その表情に心臓を凍りつかせながら、私は、なんて答えたの? と尋ねる。
 うん、付き合うことになった。
 そっか、おめでとう。
 貼り付けた笑顔は、引きつってはいなかっただろうか。

 手を繋いで帰る彼女と男の後ろ姿を見送る。
 ああ、吐き気がする。
 私のほうが先に彼女を好きになったのに。
 私のほうが、お前なんかよりもずっと彼女の事を愛しているのに。
 誰よりも、なによりも、ずっと前から彼女の事を愛しているのに。
 それが負け犬の遠吠えにしか過ぎない事はわかっている。
 私は、彼女に告げる勇気などなかったのだから。

 ああ、吐き気がする。
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