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横暴な姉に虐げられる弟のなんだかんだ仲の良い話

「シャボン玉の中に入って空飛べないかなー」

 僕は縁側に座って、庭に出てわざわざ買ってきた(ストローで作れば良いのに)シャボン玉セットでぷかりぷかりと透明な玉を空に浮かべている姉を見た。
 やけに真剣な顔でシャボン玉を見つめている。高校三年にもなって、今の発言は至極本気らしい。我が姉ながらアレな人だ。
 ……受験勉強からの逃避だろうか。かわいそうに。
「……ちょっとあんた、そんな哀れみを込めた視線向けないでくれない。可愛らしい夢じゃない、空想じゃない!」
「顔がマジすぎ」
「くぁー! 夢がないわね、中学生の癖に!」
 酔っ払った親父のような声を上げて、ばしりと肩を叩かれた。痛い。
「夢くらい僕だってあるよ。サマージャンボ三等くらいで良いから当たらないかなーとか」
「それもまたどうかと思うけど……。一等を夢見ないところがあんたよね」
 逆に姉から可哀想なものを見る目を向けられてしまって、僕は慌てて反論する。
「僕は現実主義者なんだよ。一等より三等の方が確立は高いだろ。シャボン玉の事だって現実をみちゃうんだよ」
 あの中密閉されてるから酸欠になるだろうとか、人に触れても割れないだけの強度をもつシャボン玉をどうやって作るのかとか、そもそもシャボン玉自体に飛ぶ力はないとか。
 姉のじとっとした目が突き刺さる。
「じゃぁ、あんたの意見聞かせてみなさいよぉ。現実主義者とやらの意見をね」
 僕は少し考えてから言った。
「姉さん重いから無理……ぐぁ!」
 ……姉さん、頭部にとび蹴りは止めて……。

 ……その日の夕食後、僕は痛む頭をさすりながら、ダイエット宣言をした姉さんの分のデザートである最中あんみつ(ゲロ甘)まで食べる羽目になったのだった。……甘すぎて更に頭と歯が痛くなった。
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