敵同士の恋5題
今日も今日とて、二人は嬉々として戦場へ繰り出していく。
ニ十数人居る王子の、下から数えた方が早い位置に居るアルフレッド王子は、それでも祖国に名を轟かせていた。血の狂王子という二つ名と共に。
人を殺すことだけは誰よりも上手かった彼は、ある日一人の女に恋をした。
生まれたときから人を殺す手段だけを教え込まれてきた。
特に其れが嫌でもないし、苦しいと思ったことも無い。
人を殺すことに特に感情の動かない、アンジェラはそういう人だった。
傭兵としていくつもの戦場を渡り歩いていた彼女は、ある日一人の男に恋をした。
血が飛沫き、腕や首が飛び、臓物が撒き散らされる戦場で。
辺りに恐怖と絶望をもたらす二人が出会った。
視線が合い、次の獲物はコイツだと、刃を交わした。
初めてだった。
互いに、10合以上打ち合って首が飛ばない相手は。
((こいつ、強い……!!))
二人は笑う。
強い相手と、対等の相手と戦うことを何よりも好む獣の顔で。
そして悟る。
互いが、同じ存在であると。
生きた災厄となった二人に近付く者は皆剣戟の合間に殺され、何時しか彼らの周りに人はなくなった。
何十、何百と剣をあわせ、それでも決着は付かない。
その二人を引き離したのは、戦の終結を告げるラッパだった。
「……この戦はこっちの負けらしいな」
「そうみたいね」
初めて交わした言葉はそれ。
アルフレッドはにやりと笑い、鍔ぜり合いに持ち込む。
「お前、名前は」
「アンジェラ。あんたは?」
「アルフレッド。アンジェラ、また次の戦で会おう」
そう言って身を翻した男を、女は追わなかった。
奪われた唇を片手で覆って、眼を白黒させていたから。
何処にでもある戦場の、その血煙の中。
一つの小さな、そして物凄く物騒な恋が生まれたことを、この時知るのは二人だけだった……。
ニ十数人居る王子の、下から数えた方が早い位置に居るアルフレッド王子は、それでも祖国に名を轟かせていた。血の狂王子という二つ名と共に。
人を殺すことだけは誰よりも上手かった彼は、ある日一人の女に恋をした。
生まれたときから人を殺す手段だけを教え込まれてきた。
特に其れが嫌でもないし、苦しいと思ったことも無い。
人を殺すことに特に感情の動かない、アンジェラはそういう人だった。
傭兵としていくつもの戦場を渡り歩いていた彼女は、ある日一人の男に恋をした。
血が飛沫き、腕や首が飛び、臓物が撒き散らされる戦場で。
辺りに恐怖と絶望をもたらす二人が出会った。
視線が合い、次の獲物はコイツだと、刃を交わした。
初めてだった。
互いに、10合以上打ち合って首が飛ばない相手は。
((こいつ、強い……!!))
二人は笑う。
強い相手と、対等の相手と戦うことを何よりも好む獣の顔で。
そして悟る。
互いが、同じ存在であると。
生きた災厄となった二人に近付く者は皆剣戟の合間に殺され、何時しか彼らの周りに人はなくなった。
何十、何百と剣をあわせ、それでも決着は付かない。
その二人を引き離したのは、戦の終結を告げるラッパだった。
「……この戦はこっちの負けらしいな」
「そうみたいね」
初めて交わした言葉はそれ。
アルフレッドはにやりと笑い、鍔ぜり合いに持ち込む。
「お前、名前は」
「アンジェラ。あんたは?」
「アルフレッド。アンジェラ、また次の戦で会おう」
そう言って身を翻した男を、女は追わなかった。
奪われた唇を片手で覆って、眼を白黒させていたから。
何処にでもある戦場の、その血煙の中。
一つの小さな、そして物凄く物騒な恋が生まれたことを、この時知るのは二人だけだった……。
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