京都校の一年だったけど東京校の一年になりました
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「緊急要請っス、名字さん頼めるっスか!?」
それは、東京での任務を終えた直後であった
今回の補助監督であった新田明が緊張した声色で尋ねる
要請の内容は呪術高専東京校の一年生が担当する任務にて
特級相当の呪霊の出現を確認。二級術師を含む一年生では
任務遂行は不可能との判断が下され、現場の近くにいた
名字へと連絡が回ってきたのだった。
難易度は最大の特級案件。同じく名字はまだ一年生。
ミラー越しに名字の姿を見つめる新田
ある程度の説明を受けた名字は顔を上げる
「……救助であれば可能です」
彼女の言葉に新田は驚いたあと、二ッと笑い
「十分っス…!!」
と、言って車のスピードを上げ全速力で現場に向かった。
* * * * * *
現場近くまで辿り着いた時、呪霊の気配の強さを察した
名字は新田に自分の足でこれからは向かうと伝え
彼女が制止する声も聞かずに大雨の中を駆けた。
今まで感じたのことのない禍々しい気配
微かに戦闘している音が聞こえてくる
予想よりも救助が難しい状況だと感じながらも
名字自身の足は止まることは無かった。
名字が辿り着いた時、彼は目の前で息絶えた
ゆっくりとその身体が地面に倒れていくのを見つめながら
彼女の足が止まった。目の前には倒れた彼の正面にいた
――伏黒恵の口は悔しそうに噛みしめられている。
名字は何も声をかけることはないまま傍に近づいた
お互いに話すことは無く、そこにあるのは雨音のみ
心臓の部分にぽっかりと穴が開いて地面を血で染める
たった今、死んでしまった少年の名前は虎杖悠仁
宿儺の器と呼ばれ、上層部に恐れられていた。
うつ伏せに倒れた身体をそっと優しく触れた名字は
初めて間近な人の死に触れた。まだ少し温もりを感じる。
仰向けに動かすとまだ微かに閉じられていない瞳が見えて
優しく弔うように手を添えて瞼を閉じさせた。
間に合わなくて、ごめんなさい
そんな風に名字は反転術式を虎杖に施していた
天与呪縛により、悲しみは涙となることはないが
大雨がそのかわりを引き受けたように頬を伝い
虎杖の顔へとぽたぽたと零れ落ちた。
「……治せるのか」
様子を見ていた伏黒はゆっくりとしゃがみ込み
名字の姿を見つめながら小さな声で問いかけた
「いいえ」
淡々と機械のように返事をして呪力を流すのをやめて
顔をあげ、伏黒の顔を見る。彼は少し驚いたようで
少し目が開き、身体が仰け反った。
長い前髪の隙間から覗く包帯を無言で見つめた
「……だよな」
どこか寂しそうに視線を虎杖の顔へと移し
彼は雨音にかき消されそうな声で呟いた
そんな彼の顔を見ていた名字はその顔と翡翠の瞳に
何年も前に出会った男の姿を思い出していた。
その後、伊地知や新田が現場へと到着して
虎杖の遺体は回収され伏黒は高専へと戻ることとなる
その間作業を手伝っていた名字は分かれる直前
「…ありがとな」と伏黒恵にお礼を言われた。
お疲れ様でしたという思いを込めて名字は
深く、そして長くお辞儀をして伏黒を見送ったのち
新田の車へと乗りこみ、現場を後にしたのだった。