ストーカーの五条に依存する。
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なんで、生きているんだろう…
独りでそんなことを考えながら目的地も無く
ふらふらとした足取りで夜を歩いていた
バイトで稼いだお金を受け取りにだけ来た母親に
打たれてしまった頬がビリビリとして、痛い
お金は自分で降ろして封筒に入れてママに上げたし
お腹空いてると思ってご飯も用意した、お酒も…
だけど、お金が少ないって怒られちゃった
シフト前より増やしたって伝えても
嘘つくなって怒鳴られて、ママが嫌いなのって泣かれた
嘘ついてないし、嫌いになんかなってないのに…
親不孝者って殴られた。
謝っても謝っても許してもらえなかった…。
頑張っても、頑張っても…何の価値もない私って…
生きている意味あるのかな…?
これから、ずっと、今日みたいな……?
ぐるぐるとずっと同じことばかり考えていた
ドロドロと溶けていくように深い闇が広がっていく
「………――――しにたい」
ふと、自分の口から零れた言葉
あぁ、そっか、死んじゃえばいいんだ。私なんか
答えた出た瞬間、立ち止まっていた足が動き出す
どこか、高い場所を探そう、アパートは二階で
多分高さが足りないだろうから。落ちちゃえば…
落ちさえ出来れば…もう終わる。楽になれる。
「――――気持ち悪ッ……おえッ……!」
妙に耳に入ってきた声に反応して視界を動かすと
バス停のベンチで誰かが横になっていた
大きな身体に、真っ白な髪、真っ黒なサングラスは
かけていたのが落ちたのか地面に転がっている
おじいさん、かと思ったけど苦しそうな顔は若そうだった
睫毛も真っ白で、凄い綺麗な人、顔は真っ青だけど…
飲みすぎたんだろう、苦しんでいる姿には見覚えがある
ママもアルコール依存症でよく苦しんでいたから
どうせ、最期なら…誰かの役に立って死にたい
と思ったけどお金もなにも無いことに気付き
更に気分が落ち込んだ…ごめんなさいと声をかけながら
男の人の荷物を漁って財布も借りる。
札が一万円しかなくて羨ましいを通り越して
少し怖くなった。お金持ちの人だったかも…。
小銭が全然ないし明らかにカード払いが多そう
財布もいざ見てみるとブランド品な気がしてくる
まぁでも、死んじゃえば、何も関係ないか……
コンビニを駆け足で探して、色々なものを買う
下手に挙動不審でも警察呼ばれちゃう気がして
精一杯自分の財布だというフリをして店を出る。
職質とかされたら窃盗で掴まっちゃうだろうし
早くあの人のところに戻らないと…
体力がないからぜぇぜぇとなりながら
ベンチに戻ると変わらず真っ白さんは苦しんでいた
仰向けの耐性だったので慌てて横向きにする
嫌がるけど危ないからしかたない。
吐いてはいないみたいだけど、窒息したら死んじゃうし…
果汁ジュースか、スポドリ飲んでくれないかな…?
あ、お財布返そう。お金使ってごめんなさい…。
来ていた上着に財布を戻すと中にスマホがあるのに気付く
スマホ、持ってないけど電話くらいなら出来る気がする
財布と入れ替えてスマホを持つ、適当にボタンを押す
画面は光った…けど、なんか起動しない。
えと、あ、指紋認証…?
よく分かっていないまま真っ白さんの長い指を借りる
あ、起動した。色々あってよく分からないけど
バイト先の人が連絡先として聞いてきたアプリと
同じ名前のものがある。何とか操作して一番上の
〝伊地知〟という人に助けてと連絡を送った。
さっきから「いじち~いじち~…」って呻いてたし
多分助けてくれる…と思う。思いたい…。
「う…あたま、いたい…」
スマホと睨めっこしていると弱弱しい呟きが聞こえる
薬も、飲み物も結局飲んでもらえてないし…
…うーん、一回、起こす…?
「あの、起きられますか…?」
声をかけても帰ってくるのは呻き声だけ
ベンチから足が飛び出すほどに体格がいいからか
引っ張っても全然起き上がらなくて全力を入れる
「うぅ痛ェよばか~!」
と急に抱き着かれた。ぎゅっと大きな体に覆われる
慣れない感覚に思考が止まるがハッとして目的を思い出す
無理やり薬を飲ませると飲みきった後
「うえ~…にーがーい~!!」と騒がれた。
下手に暴れられて具合が悪くなられても嫌なので
果汁ジュースのストローを口に突っ込む。
甘いのが好きなのか今度は大人しくジュースを飲んだ。
スポドリ…はすぐには無理かな…。
というか…真っ白さん力強い…抜け出せない
抜け出そうとすると更に力を入れて
頭をぐりぐりと押し付けてくる。困った。
視界に映るふわふわな髪に少し興味が湧いて手を伸ばす
さらさらしてる、痛んだ私の髪とは全然違うのは分かる
ふわふわ…ふわふわ…ふ…あ、目が合った
まともに見れた、真っ白さんの顔
蒼い瞳は宝石みたいに綺麗で、吸い込まれそう
今まで見たことがないくらい、凄い綺麗な人だった
「……んあ? オマエ、だれ」
意識が少しマシになったのかやっと私を認識したみたい
自分の状況まではあまりわかってなさそうだけど…
「だいじょうぶ、ですか……?」
と声をかけるも質問の意図は伝わって無さそうで
「ねむい…」
といってまた抱き着かれた。ぽんぽんと背中を触る。
もう、離したほうがいいのに、温もりが心地よくて
私の方がこの人を離すことが出来なかった。
寂しい、離れたくないな…
もう死ぬのに、死にたかったのに…
そんな思いを抱き始めていた。
「五条さん! 五条さんどこですか!?」
急に誰かの大声が聞こえてきて肩がビクッと反応する
「いじち…?」
男の人が確かにそう呟いたのが聞こえた
それと同時にバッと私はその人から離れて逃げる
逃げたのは帰ってくる気なんてなかった狭いアパート
今日は、今日はもう寝よう。
誰かが聞いているわけでもないのに
そう自分に言い聞かせて布団の中に入る。
別に寒くないはずなのに
さっきまでの温もりが消えてどこか寂しくて肌寒い
自分自身を抱きしめるように布団の中で丸まった。