推しを応援してただけですが!?
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「で? 本命の推しには?」
「……………アッテマセン」
ジトーッと見つめてくる視線から逃げるように顔を逸らす
そんなわたしに呆れたため息がハッキリと聞こえてきて
精神的ダメージにうぐっ…と顔をぐしゃっとさせる
チラッと相手の顔を伺うと優雅に足を組み、片肘をついた
高校で初めて出来た友達がこちらを見つめている。
クラス恒例自己紹介にて虎杖悠仁が推しですと話したあと
同じ事務所所属である〝釘崎野薔薇〟が推しだと
話した彼女に運命的な出会いを感じ勇気を出して
話しかけてみたら田舎者であるわたしを邪険にせず
わたしと同じ受験理由だったのもあり
高校生活も推し活組として意気投合したのだった。
こんな美人さんと馬が合うなんて…どんな確立ですか?
釘崎野薔薇、虎杖悠仁、伏黒恵という三名は
同じ事務所であり、同じ高校、つまり私たちの先輩
釘崎様と伏黒様を見た時はモノホン感がえぐくて
呼吸の仕方忘れてしまった。
そんなわたしとは違って友達は手が早く()
既にプレゼントを貢ぎサインとツーショをゲットしていた
は、判断が早い…!!!(渋い声)
たいして判断の遅いわたしは学校に存在しているであろう
推しを見に行くことすら出来ていないというか
しようと試したことも無かった。
いや…ね、だってさ…!?
実際に先輩に会えるってなったら
「…アッ、マッテ、ムリ」ってなるよね……!?
そんな常に限界オタクなわたしには授業中
たまに先輩らしき人物を薄目で確認する
そのくらいしか出来ませんでした………ははは…
どうやら推しが存在しているという現実に対して
脳がその負荷に耐えきれないため
認めることを拒否してしまっているのだ
もし無理にでも理解しようとすれば処理が追い付かず
宇宙の全てをわたしは背負うことになる(ゲンドウポーズ)
「アンタ、写真盗りたいって言ってなかった?」
「写真は趣味…盗撮、駄目、絶対…ケド…トリタイ…」
「何かしらのモンスターみたいになってるわよ」
ツッコミを聞きながら「うぅ…」と呻き
溶けるように机に突っ伏した。せっかく合格したんだもん
わたしだって先輩に会いたいさ! 当たり前だろう!!!
「先輩に会いたいよぉ……うぅ、推しがすぐそこに…」
悲しさから目に涙を溜めながら項垂れていると
「……へぇ、無自覚か」と声が聞こえてきて
「なにがぁ…?」と視線を上げて教えてアピールをする
けど帰ってきたのはただのにやけた友人の表情だけで
何にも答えてくれなかった。この意地悪な顔には
見覚えがあり、何をやっても無駄だと知っているため
答えは得られないと早々に切り捨てると
敗北を告げるコングの様にチャイムが鳴って
わたしはのそのそと次の授業の準備を始めた。
* * * * * *
お昼を食べたあとにやってくる魔の五時間目の授業
窓際の席なせいもあって太陽の光が暖かく
気持ちの良い夢へとわたしを誘ってくる
うえ~……眠い…眠いよぉ~…!
抗いきれない睡魔に船を漕ぎ始めていたところで
「虎杖! 決めろ~!!」という言葉が聞こえる
〝虎杖〟その単語が聞こえてきただけで脳は覚醒して
バッとグラウンドを見ると何度も見たことのある姿が
どうやら体育でサッカーをしているようで
ドリブルでゴールまで突き進んだ先輩がシュートを放つ
綺麗にゴールに収まったボールは留まることを知らず
その勢いのままネットを突き破って遥か彼方へと…
人生で一度見れるか見れないか
そんな景色に呆気に取られていると
体育の先生の怒鳴り声と
「ヤッベェ!?」という焦る先輩の声
あ、やっぱりアレが先輩なんだ
「スンマセンしたァ!!!!」
遠くで走る後姿、明確には見えないはずなのに
繊細に網膜に焼き付けている自分がいた
認識、してしまったんだ。ついに。
お、推しが………推しが……!!!!!!!
推しが生きとるぅうううううううううううううう
うわあああああああああああああああああああああ!!!
はぁ、鼓膜を生声が揺らした。よく通る声だなあ…。
推しが、生きてる実感…想像以上に……やばい…!
身体能力が高いっていうレベルじゃない
え、何あのシュートの威力。弾丸か???
天は二物を与えずという言葉がある筈なのに
天は推しに何もかもを与えておりませんか???
あ、天も推しを推してるのか! 仲間じゃん!!!
あの距離での認識だというのにこの推しの破壊力
より間近で生きている質感を感じてしまったら……
え、ワシ死ぬんかな?????????????????
睡魔なんて消え去り、現実に惑わされていると
あんなに長いはずの授業があっという間に終わっており
板書がぐしょぐしょになったままで
ほぼほぼ真っ白なノートが完成してしまった。
すぐさまご友人様の元へ駆け寄りノートを写させてもらう
目聡い友人はわたしに何があったのか察しており
わたしは自分から自白するように文字を書きながら
「推しって…生きてるんだね…」としみじみ呟いた
少し無言のあと、当たり前でしょっと笑われた
それにうへへへとにやけていると
「キモイ」と絶対零度の瞳で蔑まれた。
ヒエッ、平伏します