推しを応援してただけですが!?
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何となく決めていた志望校を白紙に戻し
わたしは公表されいる先輩の学校を調べ
通常の普通科があることにガッツポーズをした
もし芸能系だったら絶対諦める未来しか見えない…
偏差値もちょっと上がるし、何より倍率が高い…
何故か現役で芸能活動をしている子たちが
普通に高校生活を送っていることが多いらしく
男女ともに「あわよくば…」といったような
欲望を抱き受験する人で受験者は埋め尽くされている
もちろん、わたしもその一人であった。人間、醜い。
様々な期待と不安を抱きつつ日々を過ごしていると
あっという間に受験日はもう次の日となってしまった。
* * * * * *
わたしは初めての飛行機に、初めての大都会〝東京〟と
初体験がぎゅっと詰め込まれた一日はどっと疲れてしまい
一人ホテルに引きこもり英気を養っていた。
都会、怖い…人多い…と原始人のように片言で呟く
それもこれも「女は度胸」とか言って
可愛い愛娘をひとりぼっちへ都会へと送ったママのせいだ
あなたの子ですから手に取るようにわかりますよ
ママ、あなた東京に来るのめんどくさがったな…!?
大都会の夜景をバックにサムズアップする幻影が見えて
どこかそれを遠い目で見つめる。なにわろてんねん。
一人でぼけーっとしていたがスマホの通知音に
本能レベルで身体が反応をして画面をサッと確認する
その表示された内容にギョッと目を見開き、叫んだ
速度は変わる筈はないけれど前のめりになって
スマホに顔をこれでもかというほどに近づける
今までされたことがなかった推しのゲリラ配信に
誰よりも早く開けるように画面を何度もタップする
「おっす!」
推しの顔面がガチ恋距離の近さで写り、ピョッと画面から
顔を離す。推しはこちら側に配信がちゃんとされているか
確認をするために手を振っている。向こうに聞こえる
はずはないと分かっていつつも声を出し返答しながら
同じ内容をコメントで打ち、推しからの確認に答える
唐突なゲリラ配信に何故、といった質問が多く
それを読んだ推しは「明日受験する人多いじゃん?」と
答える。どうやらお仕事中にその話題になったらしく
ゲリラ配信をやりたいと言ったところ
その許可が下りたみたいで、神様ありがとうと手を合わせ
OKを出してくれた事務所に涙を流し感謝をした
わたし以外にも受験生は数多くいると思いつつも
何だか自分のためなんじゃないかとニヤついてしまう
そう勘違いしたくなるほどにはタイムリーすぎた
コメントも受験します!というアピールいっぱいで
推しはそれを眺めながら菩薩の笑顔で手を振って
「おー! 皆、頑張ってね!!」と応援してくれる
推しは…仏様や…と震える手でコメントを打つ
素早く流れていくコメント欄、特に読んでもらおうとか
そんな期待をしていなかった。だけど…
「〝仙台から今日東京に来ました!
明日、受験頑張ります!!〟」
自分が打ったコメントを一言一句違わずに読まれて
「バッ!?!?!?」と大きな声で反応してしまう
え、まじ? わたしの!? わたしのコメントだよね!?
うわうわうわ! 読まれた読まれた読まれた読まれた
心臓が急速に脈を速めて、身体が沸騰しそうになる
「仙台って出身一緒じゃん! すげー大変だったよな?」
目をキラキラとさせて楽しそうに笑う推しと目が合う
「頑張ってね! 東京で待ってまーす!!
って、東京はもう来てんのか!」
決壊した涙腺から水が溢れ出し、液晶がまともに見えない
しかし、脳というものは不思議なもので指は無意識に
証拠を残そうとスクショを撮っていた。
推しからの確定ファンサに放心状態となる
そんな間にゲリラ配信は終わっていた。
アーカイブ明日までか、見なきゃ…
そう思いつつ真っ暗になってしまった画面に
火照った額をコツンとくっつけて
息を吸って、思いっきりクソでかため息を吐いた
火が出るんじゃないかと思えるほど熱い吐息が漏れる
溢れる想いはどんどんと大きさを増していく
何度も何度も何度も、先輩にだけ感じるこの熱は
明確な言語化は出来ない。ただ分かっているのは
心がぽかぽかとする、ということだけ
「せんぱい…かっこいいなぁ………」
火照るで呟いた独り言は小さく、情けない
しかし、部屋にしっかりと響いていたのだった。
* * * * * *
受験日本番は孤独の戦いすぎて吐きそうなほど緊張した
だけど昨日の配信だったり、朝に呟かれた
推しの応援の言葉だったりがわたしの背中を押してくれる
ぶるぶると震えた身体に自然に笑みが零れて
力が抜けるのだから推しから貰うパワーは偉大だ
推しの存在って凄い…!!
と、感動しながら校舎内へと足を進めていった
―――ぜーーーったい、合格するぞ……!!!!!
と、気合を入れて臨んだ本番当日から月日は経ち
ついに合格発表日となっていた。
「は? 行かないけど」
ママにそう言われ、二度目の絶望とデジャヴを感じながら
飛行機とホテルを予約して、再び大都会を訪れた。
都会、人多い…と慣れない環境に体力を削られながら
自分自身を奮い立たせられるのは自分だけなので
若干やけくそになりながらも高校に向かっていた
けど流石にぼっちでの確認は…辛いです……。
うぅ、めちゃくちゃ頑張ったし、手応えもあったよ…?
自己採点でも大丈夫だったし…
でも…もし、結果が……そう考えてしまうと
どんどん薄暗い、最悪な結果しか想像出来なってしまう
俯きながら歩き、人が進んでいく方向へと歩く
少しして多分目的の場所近くにやって来れた
だけど、怖い。怖くて、顔を上げられない。
これ、無理だ。どうしよ、見れない。嫌だ、怖いッ…!
まだ地面しか見ていないというのに不安がどんどん大きく
なって、わたしの身体をその場へと縛り付けていく
勝手にたまっていく涙は今にも溢れ出しそうだ
けど、今は独りだからわたしの背中を押してくれる人も
いなくて、永遠に見れないんじゃないかって思えてくる
〝頑張ってね!〟
不意に先輩の声が聞こえてきて、優しい笑顔を思い出す
いつの間にか目は開いて、導かれる様に顔が動く
そこには合格者の番号が張り出されており
沢山の数字が視界いっぱいに広がった
自分自身の番号を呟きながら見逃さないように
一つ一つの数字を確認していくと13…と近い数字に
緊張からゴクッと大きく喉がなった。
1311……1317…1319…―――――
「――――13…20…………!」
あった。あったよ。わたしの受験番号。
何度も手元の紙と貼り出された番号に視線を往復させる
それが幻覚ではないと間違いではないと確信を得ると
ぶわわっと涙が溢れだした。合格した…出来たんだ…!
周りの視線なんて気にならないほど、えぐえぐと泣き
わたしはすぐにお母さんに電話をかけた。
合格したことを伝えると「おめでとう」と
優しい声で母は電話越しにお祝いをしてくれた。
垂れ続ける鼻水をチーン!とティッシュで拭いていると
号泣するわたしに何でそんなにないてんのよと笑った
「ずっとA判定貰ってたじゃない」
「だってぇ……先輩に会えなかったら嫌じゃん゛!!」
わたしの返答に母は「はぁ?」と素っ頓狂な声を出す
もちろん推しはお仕事頑張ってるし、SNSも更新する
いつでも見れるよ? 見れるけどね??
先輩の学校生活で青春を謳歌しているその姿は
限られた人にしか見れないプレミア級の激レアなことで
テレビでの爽やかな推しも勿論素晴らしいものだ
だけど、等身大の学校生活を見守るっていうのは
わたしにとって至高の推し活であり、生きる希望なの
だけど、もし不合格だったら?
自分が高校生活を送っている間にふと先輩のことが
思い浮かんできちゃって先輩の姿を探すけれど
そこには先輩は存在していない
そんな…そんな生活…耐えられるわけがないッッッッ!
だから必死に頑張ったんだよ!?
友達にも、先生にも、親にも、塾の先生にも
あらゆる人にお墨付きを貰っても
かもしれないは無限に存在しており
わたしの人生最大の力を注いだといっても過言ではない
そうして今、こうして合格を掴み取ることが出来た
ということは先輩を近くで見れてしまうっ!
それこそ授業中、ふと外を眺めると
そこには体育をしている先輩の姿が……!
カーーーーーーーーッ最高かッッッ!?!?!?!?!?
「この幸せは……アレ、ママ…? おーい?」
五分前に、電話切られてる。
トーク画面にはママ御所望のお土産リストのみ
解せぬ。