推しを応援してただけですが!?
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中学三年生、憧れの高校生活はもうすぐそこにやって来る
キラキラと眩しい理想郷へと辿り着くためには
地獄の受験勉強という名の鞭に撃ち続けられなければ
ならないのが我々、受験生なのである。
長期にわたる辛さを乗り越えた者には
第一志望校合格という格別な飴を手に入れることが出来る
その飴は自身の受験勉強への頑張り次第で
自分好みの味や糖度という美味しさに大きく関わってくる
未来の青春を謳歌するために
たった一度しかない我が人生にとって
とーーーーーっても大事な時期なのである!!
―――ま、ド田舎に住んでいる芋女には関係ないけどね!
ガハハ!と誰かに話すわけでもないのに一人で笑う
だって田舎はそこまで偏差値高くないし
可愛い制服を選べるほど選択肢も多くない
肝心の勉強はこのままいけば
そんなこんなでやる気スイッチを
フル稼働させるような必要がない現状
制服が可愛い~部活動が豊富~とか距離近くて通いやすい
などなど、せめて何かしらの目標があればモチベも上がる
…はず、だけど無い! ぜんっぜん目標なんて皆無!!!
と、机に突っ伏して嘆く。若人の青春は大事だ!
そんなことは私だってわかっているけれど……
長いため息を吐きながら、理想の高校生活を妄想する
刺激のある青春……勉強、部活に、と指を折って数えた
――そうだ、恋もして、ときめきを楽しみたいなぁ…。
ドラマみたいな初恋をしてみたいものだと思いつつ
テレビのスイッチをぽちっと押した
今の時間帯的にたいして面白い番組はやっていない
それは分かりつつも何か気分転換になるものを…
と、あまり内容には期待しないまま画面を見つめる
その瞬間、画面越しに〝
「話題の爽やか現役高校生、初主演!!」
明るいナレーションの声が聞こえると
こちらへと振り返る少年
どうやら人気少女漫画の実写映画の宣伝らしい
ヒロインは今人気上昇中の若手女優
彼女が恋するお相手は通っている学校の先輩
その先輩を演じている俳優の名が〝虎杖悠仁〟
所属しているのは夜蛾芸能プロダクションで
あの芸能界最強の一人である顔面国宝〝五条悟〟が
ロケ先で出会い、直々にスカウトしたという
彼がスカウトした人物は必ずヒットしており
有名なところだと〝伏黒恵〟あたりだ
虎杖悠仁は私より二つ年上の現役高校生
薄茶色のツーブロックの髪型、その髪色は
光の当たり加減のせいか映像には少し桃色がかって見える
色々な彼が移った映像が流れるけれど
どれも虎杖悠仁からは撮られることに抵抗が無いのか
一切の緊張を感じさせない。ありのままの彼の笑顔で
予告映像が終わった。CMが終わるとただのニュースが
アナウンサーによって、淡々と告げられている。
わたしは、無言でテレビを消した
「—————————か、かっ………こいい…………!!!!!」
はわわ、と興奮冷めやらぬ己の熱で昂る頬を両手で包む
心の臓が脈打っているのがハッキリと伝わってきた
え、虎杖悠仁……かっこよすぎるよね……!?
高校生……わたしの二個上の先輩…せんぱい…!?
仙台出身…え、いっしょじゃん…!? やばい嬉しい…!
もし先輩と同じ学校の生徒になったら
芸能活動をしている先輩を…推せる……………!?!?
は?????????????????????????
全て
ドタバタと階段を下りてリビングへと全力疾走
キッチンで絶賛お昼ご飯を準備中であるママの背中を発見
その背中に向かって、大きく息を吸った
「―――ママ! 東京の学校行きたいッッッ!!!!!!」
たんたんたん、とママはキャベツを切りながら
「そー、いいんじゃない?」とあっさり了承してくれた
よっしゃー!言質とったりー!!!!!
こちらを振り返ることなく娘の進路を即決!
それでいいのか我が母よと頼んだこちらが心配に
なってきてしまうが、これで第一関門は突破だ!!!
よし、次にわたしがやることは一つ―――――!!
「レッツ!!!!! 推し活だッッッッッ!!!!!!」
「お昼ね、手を洗ってきなさい」
「……………ウッス」
* * * * * *
それからのわたしの生活は勉強と推し活のどちらかだった
推しのSNSはしっかりと通知も入れつつ毎度確認して
出演するテレビは録画を決して欠かさなかった。
録画を残しすぎてママに消されそうになった時は
本気のギャン泣きをブチかましてしまい
ママに本気でドン引かれた。あの時はごめんよ。
その後は実費(お小遣い)でBlu-rayを買ってきて
推しの録画をしっかりと残すことにした
雑誌とかも買うから財布は常に寂しかったけど
それでも推しのため…と涙を流しながら貢いだ
高校生になったら都会の高時給のバイトするんや…!
もっと、推しに貢ぐんや……と、心に誓ったのだった。