京都校の一年だったけど東京校の一年になりました
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「やばいやばいやばいやばいやばいよ七海ィ!!!」
「マジで黙れお前」
ある日、ひょんなことから修業していると
物凄い気配を感じ訪れたその場所にて
一級相当の土地神と戦闘している二人と出会う
緊急事態だったため
天眼でしっかり相手を視る暇もなく
地面に呪力を付与させそれを操りながら二人を守った
突然の援軍に二人は驚きつつも避難態勢を整える
が、何故か少女は逃げずに呪霊を相手しようとして
直後その片腕が吹っ飛ぶ光景を見て
灰原は特に考えることもなく無意識に名字を抱っこし
その灰原を何とか全力で死守した七海
そして二人は全速力で走り、先ほどの会話へと繋がる
もはやここまでかと内心考えている二人とは対照的に
名字はどこかぼーっとしながら断面を眺めつつ
反転術式で腕を回復していた。
「腕ッ! 腕切れちゃったよね!?」
「大丈夫です」
「わぁ凄い! 反転術式だよ七海!!」
「少しは冷静になってくれ灰原」
「無理!!! 死にそうだよ七海!!!!」
「それは私もですよ…!!」
刹那、呪霊がこちらへと攻撃をしかけ
まずいと二人が後ろを気にすると
いつの間にか視界が逆さまになり
空が地面へ、地面が空となる
突然の浮遊に灰原は「なんで!?」と叫んだ
宙へと浮かんだ無防備な三人に呪霊が狙いを定める
灰原と七海よりも前に立っているのは名字だった
呪霊の射線上に明らかに立っている少女に
二人は逃げろと声をかけるが名字はただ呪霊を見つめる
鋭い一撃が放たれ、高火力の呪力が放出された
それと同時に広い空間に名字の呪力が馴染んでいく
細かく刻まれた起点に呪霊の呪力が全ての起点に重なった
「―――念力術式、極の番〝反〟」
こちらに放たれた呪力が跳ね返り、呪霊の元へと帰る
そのまま土地神は自身の呪力によって祓除された
抉れた範囲に先ほどの呪霊の強さを体感しつつ
二人は小さな背中に、どこか先輩の背中を思い出す
地面へと降りている間に、負傷していた傷も治っており
少女を保護する暇もなく、彼女は姿を消してしまった。
走り去る自身の背中にかけられる声を聞きながら
今日もまた、少しは役に立てる呪術師になれただろうか
と、少女は考える。あの人たちは元気だろうか。
視たことがあるから無事であるのは確かだが
実際に見たことはないため、実感が無かった
もし、また会えたらいいな
少女は秘かにそんな思いを抱いていた。
「―――――離せッ!!!」
どうして、どうして、どうして
少女の頭の中は疑問で埋め尽くされる。
「私は、猿を殺すんだ――――――!」
どうして、と少女は誰かに問う
この人を―――夏油傑を止めているんだろう、と。
赫の瞳に映るのは、怒りに表情を歪めた彼の顔だった
* * * * * *
ある日、呪霊の気配を辿り
村へとやってきた名字は
呪霊の祓除をしようとしていた時
村の住民である非術師に接触してしまい
急に後頭部を殴られ気絶
目を覚ました時には牢屋へと閉じ込められていた
部屋の隅には二人の少女は
お互いを守るように抱きしめ合っていた
酷い怪我だと名字は起き上がり手を伸ばす
伸ばされた手にキュッと目を瞑る二人だったが
和らいでいく痛みにゆっくりと目を開けた
ありがと、掠れた声で二人が感謝を述べると
名字は首を横に振った。
しかし、怪我が治った双子を見た村人は
それを良しとはせずに、化物だと喚き散らし
三人を襲おうとした。それを何とか名字は
自分自身の身体を犠牲にして双子を抱きしめ守る
相手は非術師であり、力を使うべき相手ではない
今はこの二人を守らなければ
〝……私はね、弱者を守りたいんだ〟
少女は、夏油の言葉を思い出す
思い出しながら、二人を最後まで庇いながら
気を失い、冷たい地面へと倒れ込んだ。
そんな名字を今度は双子が必死に庇い
三人は出会った日よりぼろぼろになってしまった。
気を失った名字は知らなかった
任務で村へとやって来た夏油が
その光景を見ていたことを
沢山、自分の仲間を助けてくれた少女が
非術師の馬鹿な妄想のせいで小さな双子が
大事な呪術師が猿によって殺されそうになっている
その事実が、夏油の本音を選ばせた。
「皆さん、一旦外に出ましょうか」
懐かしい声に意識を失っていた名字の意識が浮上する
身体が起き上がると同時に天眼の未来視が発動した
急に眼を抑える名字に双子が心配になって
声をかけるが名字は急いで牢屋の鍵を破壊し
夏油の背中を追うのだった。
――――夏油傑が、村民を皆殺しにする景色を、
視えてしまった未来を、否定するために
* * * * * *
「―――――離せッ!!!」
次々と召喚される呪霊を止めながら名字は
夏油と向き合い、彼の言葉を受け止める。
「私は、猿を殺すんだ――――――!」
記憶にある姿とは正反対の彼の姿に名字は
何が起きているのか理解が出来なかった
村人は声を荒げる夏油に困惑する者や
村の救世主である夏油が
名字によって止められている様子に
一連の事件に関係あると思い込んでいる村人は
名字の殺害を必死になって懇願していた。
そんな非術師の言葉に
「この猿がッ―――!」と夏油は顔を歪ませる。
痺れを切らした男が手に持った棒で名字を殴ろうとし
牢屋から出てきた双子、菜々子と美々子が体当たりで
それを止める。それを別の村人が怒りのままに
乱暴な手で髪を掴み、引っ張った。
二人の痛みによる悲鳴に名字が意識が逸れる
その隙に体当たりで体勢を崩していた男は
棒を握り直し名字の頭を殴った。
夏油はその瞬間、自身の中にある呪力をわざと全放出させ
馴染んでいた名字の呪力を消費し、術式を解除させる
そのまま拳を握り、村人を殴ろうとするが
正面から名字が止めるように抱きついたため動けない
「殺す殺す殺すッ――――!!!」
名字はそんな呪いの言葉を聞きながら呪力を放出
双子と夏油に再び呪力を馴染ませ
〝動〟で強制的にその場から三人と退避
ずっと声を荒げている夏油を気絶させると
名字は遠く人のいない場所を目指した。
* * * * * *
森の中へと移動し、怪我をした双子に再び反転術式を施す
その間に目を覚ました夏油がハッとして名字に詰め寄った
「何故止めた!? 君は殺されそうになったんだぞ!?」
黙ったままで何も言わない少女に夏油はカッとなり
猿への殺意をぶつけるように彼女に掴みかかった
軽い身体は簡単によろめき、背後にある木にぶつかる
名字が酷いことをされると思ったのか双子は
か弱い腕で夏油の身体を叩くが、何も意味はない。
しかし、その助け合うための姿に夏油はくしゃと
泣きそうな表情で顔を歪めた。食い込んだ手が緩む。
「なぜ、なぜだ………」
どこか虚ろに、自問自答するかのように夏油は項垂れた
地面へとずるずるとしゃがみ込み、膝をつく
その様子に双子は叩く手を止めてお互いに身を寄せ合う
「大丈夫です」
名字は視線を双子へと移しそう言うと双子は少し不安
そうに、途方に暮れて動かなくなってしまった夏油を
見つめた。そんな彼に名字は両手を広げて抱きしめた
夏油はゆっくりと目を見開いたあと、震える息を吐くと
名字の背中に腕を回し、彼女を包み込んだ。
彼女の肩に顔を埋めるとすすり泣き始める
「……あなたが教えてくれました
あなたみたいな呪術師になりたいです」
名字がそう伝えると返事として帰ってきたのは
より強い抱擁だった。そんな様子を見ていた双子は
お互いに顔を見合わせ、ゆっくりと頷くと
少し様子を伺いながらも抱き合っている二人に
くっつくように彼女たちも夏油を優しく包み込む
夏油は積もってしまった思いを吐き出すように
抑えていた声を我慢することなく優しい温もりに
縋りつきながら声を荒げて涙を流したのだった。
夏油はしばらくして落ち着いたあと
ぽつりぽつりと自身のことを彼女に話した。
星漿体の事件があってから五条悟は〝最強〟になり
夏油も一人での任務が増えた。夏には沢山の呪霊が湧き
祓い取り込むの繰り返しの日々の中で
誰のために、何のために頑張ればいいのか
非術師を見下す自分、それを否定する自分
彼が選んだ本音は前者だった。
「君やこの子たちが痛めつけられたのを見て
もう、私は非術師が嫌いになってしまった…」
ごめんね、と夏油は名字を見て謝った
憧れてくれたのにね、そんな風に呟き彼は自嘲する
「いいえ」
首を振る彼女に夏油はまた少し泣きそうな顔で笑う
「…もう悟の隣には、並べないな」
寂しそうに夏油はそう呟いた。
彼女に止められなければ彼は呪詛師と堕ちただろう
二人で最強、過去にそう言い合った親友との思い出が
遠い過去の様に思えてくる。もう、誰も救えやしない。
これからどうしようかな…遠い目で星空を眺める夏油
「……夏油様」
名前を呼ばれ、え、と夏油は急な様付け戸惑う
「この子たちを救ってください」
そう言った名字の膝元にはスヤスヤと眠っている双子
名字の言わんとしていることが分かり
「…いや……私には…」
出来ないよ、と自信なさげな夏油は親友の姿が思い浮かぶ
「二人には、あなただけです
あなただけにしか、できません」
「……私にだけ…出来る事…………」
確かにその瞬間、迷いで揺れていた彼の瞳に光が宿る
「やってみるよ、精一杯」
いつかだか、真っ直ぐな後輩と交わした会話を思い出し
夏油は名字を見て微笑んだ。コクリと頷いたあと
さぁ寝ようと夏油は声をかけ、二人とも眠りについた。
* * * * * *
次の日の朝、名字はまだ寝ている三人を起こす
寝ぼけ眼でされるがままに名字によって
空中散歩へと連れ出される。呪霊も使わず
浮遊出来るのはいいなと涼しい風に吹かれて
夏油は大きく深呼吸をした。任務を作業のように
こなしていたからかこんな風に心を落ち着かせるのは
久しぶりで疲れが浄化されていく感覚が心地よい。
美々子と菜々子も楽しそうに浮遊を楽しんでおり
夏油は自然と笑みが零れた。
雲に隠れていた朝日が顔を出し、眩しさに手で光を
遮りつつも細目で景色を眺め、綺麗な景色に息を吐く
「めっちゃ綺麗だね、美々子!」
「気持ちがいいね、菜々子」
夏油は元気な顔の二人に口を開き、すぐに閉じてしまう
そんな様子を見ていた名字は彼の場所を移動させ
双子の近くへと導く、夏油は驚いたように名字を見るが
一度深呼吸をして二人の名前を呼んだ。
「……美々子ちゃん、菜々子ちゃん
――――私に君たちを守らせてもらえないかな」
もう二度とあんなことにならなくていいように
自分が君たちを守りたいんだと、緊張して声が震える
しかし、真っ直ぐに双子を見つめる
その瞳にはもう迷いはなかった。
少し、呆然とした同じ顔からぽろっと涙が溢れた
一度溢れ出すともう止まることは無いようで
二人はわんわんとないた。
そんな二人にもう大丈夫だよと
優しく声をかけて夏油は頭を撫でる
優しく閉じられた目尻には一粒の涙
それが朝日に照らされて輝きながら地面へと落ちていった
* * * * * *
夏油は一度高専に戻り、しばらくお休みをすることに
したようで、今日みたいに色んな景色を双子と見に行き
出会った呪術師が困っていたら手を差し伸べてみるよと
これからの話を名字へと話す。
「…一応聞くけど、君は一緒に来るかい?」
「いいえ」
「はは、冷たいね」
「申し訳ありません」
「いや、いいんだ…そんな気がしていたからね」
そう言って笑った夏油はどこか、寂しそうだった
天内や黒井、灰原と七海、周りの人間を救ってきた彼女
そんな彼女を今の自分では救ってあげられない
夏油は心の中でそう思いながら名字を見つめた。
「じゃあね」
夏油がそう言うと名字は深くお辞儀をして
振り返ることなくどこかへと歩いて行く
寂しそうに彼女の後姿を見つめる双子の頭を撫でて
「いつか、あの子にまた会おう」
自分自身に誓うように夏油はそう言って二人に微笑み
夏油たちは高専へと向かうために彼女とは
反対の道へと一緒に歩みを進めたのだった。