京都校の一年だったけど東京校の一年になりました
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夏油と出会いから一年ほど経った頃
少女は独り沖縄にて呪霊を祓っていた。
〝五条悟〟に会わないことを最優先事項として
単独行動での修業をするよう命令されており
まだ生まれて五、六年ほどだが
何もかも一人で行っていた
そうしなければならない状況であるからか
何とか少女は日々を過ごすことが出来ていた。
沖縄に来てどのくらいの時間が経っただろうか
早朝、騒がしさが耳に入り少女の目が覚める
丁度良い木に寄りかかり野宿で睡眠をとっていたのだが
気配を消して小さな体を木に隠し様子を伺う
呪力は感じない。周りに呪霊も存在しない。
何やら複数の大人が色々話をしているようだ
人との接触は当主に禁止されているため
コソコソと場所を移動しようと思ったが
直後、女性の悲鳴が聞こえてきて少女の動きが止まる
「オイ、黙らせろ!」
「いや、たすけッ――――!」
口を塞がれたのか女性の声はすぐに聞こえなくなる
少女はよく聞いた声だから手に取るように状況が分かった
男たちは怒っている声色をしており
きっとこのままだと女性の声の主が危ない。
そう判断した少女は奇襲をする形で
男たちに触れて呪力を馴染ませると
自身の生得術式である〝念力術式〟を発動させた
呪力を動かす術式順転〝動〟
その反対となる術式反転〝静〟は呪力を固定する
〝動〟で男たちの瞼を閉じさせ視界を塞ぎ
直後〝静〟を発動させ、身体の動きを止める
口は動かせる状態の男たちは
困惑したまま声を荒げるが
少女は淡々と女性の元へ向かい呪力を流し
そのまま〝動〟で遠くへと移動した。
辺りに気配を感じない場所で少女は
女性の口に巻かれていた口枷を外すと
男たちと同様に瞼が開かない女性――黒井は
警戒心を怠ることなく誰だと尋ねる
少女――名字は名字家の人間であることは名乗れず
偽名どころか名前さえ彼女には存在しないため
黒井からの質問に答えることはせずに
手足の拘束も解いていく
瞬間、黒井は気配を辿り名字へと襲いかかった。
しかし、身体の細さや感触から
自身の守るべき存在である天内を思い出し
今自分が抑えているのは幼い子供だと気付き手が緩む
見えないまま立ち上がって
ふらついた足が近くの木の根元にひっかかり
彼女のバランスが崩れた
「大丈夫ですか」
機械のような声が急に聞こえ、黒井は少し混乱した
「……た、助けてくれたのですか?」
伺うように黒井は尋ねると
「はい」と淡白な返事が返ってくる
「Qの方でも、盤星教でも…ないですよね?」
黒井が見えない視界で名字は「?」とでも言うように
少し首を傾げつつ「はい、知りません」と質問に答えた
名字は星漿体について何も知らない。
その内容がどれだけ重要であるか
全く分かっていないまま黒井を救出したのだった
黒井は星漿体へ取引のための人質であった
本来ならば星漿体の護衛を任されている
特級術師二人とその星漿体が来て
黒井の救出を成功させるはずだったのだが
名字が解決してしまったといっても過言ではない。
「…そうだ、連絡を、連絡をさせてください!」
黒井は状況を伝えるために必要な手段を
名字へと要求する。
携帯などは拉致犯に盗られたままだったのだ
携帯、と言われて名字は単語の正体を思い出す
多分あるとすれば先程の場所だろう
必要かどうかを質問すれば
黒井は必要だと即答した。
それに分かりましたと名字は頷き
黒井をその場に待機をさせ元の場所へと戻る
術式範囲を越えた距離にいたため
拉致犯は動けるようになった身体で
それぞれが血眼で黒井を探していた。
「星漿体はまだ到着してないはずなのに…!」
「その携帯に連絡は来てないんだろう!?」
耳を澄ませるとそんな会話が聞こえてきて
気配の主が何か手に取ってるのを感じ取る
名字は落ちている葉っぱを手に取ると呪力を込めた
〝動〟で操られた葉っぱ風に舞うように
ごく自然に携帯へと舞い落ちる。
馴染ませた呪力は術式発動のための起点となるが
名字の呪力操作によりその起点は変更が出来る
葉っぱに馴染んだ呪力は携帯に触れたことにより
呪力が宿る対象が携帯へと変化した
それにより術式によって握られていた携帯は
拉致犯の手を離れ、名字の手へと納まる
自分の手に持った携帯を眺めながら
その場をすぐに移動した
背後では拉致犯の動揺が広がっているが
名字は真っすぐに黒井の元へと戻っていく
ガサゴソとした人の気配に黒井はバッと身構えた
そして名字の姿を視認すると幼い子供の姿に呆然とする
放心状態の黒井の前に彼女の携帯が差し出された
間違いなく先ほど自分を助けてくれた相手なのだと
黒井は理解をしてお礼を言いながら携帯を受け取り
勢いよくその場で電話をかけた。一度のコール後
すぐに電話が繋がりパッと表情を変える
楽しそうな、安心したような雰囲気を
名字はじっと何も言わずに観察をした。
どうやら携帯で話している相手は沖縄に到着したらしい
少し涙目になって声も震えている
「―――はい、夏油様も五条様もありがとうございます」
数少ない名字が覚えていた二つの名前が
黒井の口から出てきた。名字の足が一歩下がる。
今こうして自分で動けているのはあの人が
夏油が呪術師を教えてくれたからだ。
今こうして隠れているのは五条悟に会わないためだ。
これ以上接触は出来ない。命令に反する。
すぐに沖縄自体から去ることにした。
念力術式〝縮〟
広がった自身の呪力を圧縮させる拡張術式
呪力を込めたものであれば
力ごとサイズを縮めることが出来るが
今回の目的はそれではなく
自身の呪力が集まる性質を利用する
「実は助けてくれた方が――――――!?」
黒井が振り返った瞬間には名字の姿はどこにも無かった
* * * * * *
何時ぶりかの名字家での物置と化している自室にて
名字は沖縄での出来事を思い返していた。
呪術師を目指すことになった名字だが
呪術の歴史や情報については
全くと言っていいほど知識が無い。
学校での勉学も、呪術師としての育成も
誰にもされないままの日々で過ごしており
家の者ともまともに交流しないままだったため
ピンポイントで現れた夏油と五条の名前に
どうすればよかったのかと考えていたが
一向に答えが浮かんでくることは無かった。
埃っぽい部屋の畳みに寝転がる
最近過ごしていたどの場所よりも
安心出来るその寝心地に名字の瞼が
うつらうつらとしてきた。朝からの呪力の使いすぎか
自室に到着した安心感からかスッ…と眠ってしまった。
その時訪れる、二度目の死の直感、光景――――
一度目は名字家の長男である男に殺されそうになった時
あの時は未来が視えたことに気付かず
結果未来通りになってしまい大怪我を負ったが
そのかわり呪力の核心を感じ取り
反転術式を会得し何とか生き延びた。
そして二度目の未来視で視えたのは
自身の死ではなく
名字が自分の意志で助けた黒井の姿
そしてもう一人の少女。黒髪の男。
それぞれ三人の最期だった。
隠された瞳の上に手を沿わせ、視えた光景を思い出す
死ぬ。多分あの三人が死ぬ。それがいつかは分からない。
死ぬ。人が終わる。恐怖、痛み。痛みなどないはずなのに
少女の傷痕が妙に疼く感覚に前髪をくしゃっ、と鷲掴む。
呪術師として人を守り、人の役に立つ
夏油との出会いで得たものは名字の中で自身が
気付かないほどにとても重要な思想となっていた
だから、五条悟との接触の可能性があることは
彼女の中で天秤にかけられることはなかった
* * * * * *
包帯をほどき赫眼の制限解除により名字に視覚が戻る
晒すことは禁止されているため人に見られないように
細心の注意を払いながら名字は呪眼を使い
視えた未来が訪れる場所、東京にある高専を目指す
彼女が宿す生きた呪物
赫い瞳はとある家系の相伝として名前が知られており
御三家の一つである五条家の六眼と
同等の力を持っているとされているが
最大の特徴は術式が眼球に刻まれていることである。
それは五条家当主
とある家系―――桑原家当主でしか
共有されていない機密情報とされており
赫眼という名前が知れ渡っているのは
本来の真名を隠すためのもの
未来と過去を視ることが出来る術式を宿す
――その眼の名前は、
天元、六眼、星漿体という呪いの因果関係が存在するが
天眼はその呪いの因果よりも高い希少価値があり
生まれてくるのは実に、千年ぶりであった
赫の瞳では順転の〝未来視〟
蒼の瞳では反転の〝過去視〟
生まれてくるのは奇跡のような存在である名字だが
彼女はそれに加えて本来ならばあり得ない
二つの術式を持った存在となる。
術式が眼に刻まれていることで常識を覆していたのだ
名字の魂に刻まれている生得術式である
念力術式は精神の力による術式であり
詠唱や印を必要としない
そのかわりあくまで
〝呪力を操る〟という単純な術式効果であり
今彼女が様々な拡張術式を編み出してこれたのは
生まれてからずっと呪力操作をし続けたことによるもの
加えて天眼による六眼と同等の呪力を視る力により
繊細な呪力操作を可能にしていたのだった。
しかし、名字が生み出した奇跡はこれでは終わらない
天眼、念力術式はそれぞれ独立した術式であるが
呪力を見通す力、精神の力、そして馴染む呪力
色々な奇跡が重なったことによりバグが発生する
―――彼女の眼は、千里眼と化した
天眼はその力の強さにより視界を隠してしまった場合
術式は発動出来るが、視覚としては機能しない
しかし、精神の力である念力術式が繋がっていることで
感じ取る力が強化され、視覚がなくとも名字は
行動することが出来るようになったのだった
遠くの場所にいる対象の索敵や術式範囲拡大による
遠隔での術式発動をも可能にしたのだ。
その巨大な力を持つ名字を知る者は―――存在しない。
* * * * * *
京都から東京へと数時間をかけて高専に辿り着いた名字
登録されていない呪力を宿している名字が潜入する場合
アラートがなってしまうが既に夏油の呪霊の召喚や
伏黒甚爾の保管していた大量の蠅頭により
名字が足を踏み入れた時には既にアラートがなっていた
もう視ていた未来はすぐそこに迫っている
千里眼を使い、あらゆる情報を処理しながら
天元の結界に迷うことなく真っすぐに
高専最下層となる薨星宮、参道へと向かった。
更に奥へと進む、前の道にて三人の姿を視認し
今生の別れに涙を流しながら抱擁し合う
黒井と天内に名字は接近した。
夏油は少し離れたところから見守っていたが
名字の気配に気付き身構えるも気配の主は
あの時の少女だと気付き、驚きで身体の動きが止まる。
誰だと驚いている天内に黒井は昨日助けてくれた方だと
説明をすると瞳を丸くさせ少女の手を掴み
ありがとう、と天内は心の底から感謝を述べた
「いいえ」
と、名字は途中で逃げてしまったことを思い出しながら
首を横に振り二人に呪力を流し込む。
不思議な感覚に少し首を傾げた二人
黒井は呪力の扱い方は心得ていたため
その正体が呪力であることは察したが
少女の目的は分からず
そのまま手が離れていくのを見ていた。
「…理子ちゃん」
夏油が名前だけを呼んだ。
二人はその意図を察し改めて抱擁をした後
夏油と天内が中に入っていくのを
姿が見えなくなるまで黒井と名字は見送った。
隣で堰を切ったように溢れ出す思いに
黒井の涙腺は決壊をする。
苦しそうに流れる涙を名字はじっと見ていた
そしてゆっくりと振り返り
小さな手で何かを掴んだ。
前髪の隙間から呆気とられた顔を見つめる。
泣いている黒井は未だ、自身の背後に迫った
自身を殺す暗殺者に気付いていない。
静かな空間に黒井の嗚咽だけが木霊する
血を垂れ流しながら切っ先を鷲掴んだ小さな手に
――伏黒甚爾は内心マジかよと苦笑いを溢した。
しっかりと気配を消していた
確実に奇襲を出来ていた
はずだったのに全て分かっていたように掴まれた
背後を取った自身の気配を悟られたのは
先ほど殺した幼少期の五条悟以来、二人目だった。
先程までいなかった情報のない相手、しかも餓鬼
五条家の人間か?
と、冷静に判断するも正直謎だらけだ。
明らかに戦えば捻り殺せるはず
しかし、己の勘が告げている
負けはしないが殺せもしない、と。
時間も無い、どうするかと考えていた時
伏黒の身体に名字の呪力が流れ込む
未知の感覚に咄嗟に握っていた呪具から手を離す
カランと言う音に黒井がハッとして気付き
勢いよく振り返った。
伏黒はしくじったなと
舌打ちをしながら一度距離を取る
呪具を回収したいが、一体、何をされたのか―――――
天与呪縛〝フィジカルギフテッド〟
呪力を全くもたない代わりに五感を強化される
呪具を伝い流し込まれた名字の呪力が
伏黒甚爾の身体へと馴染む
・・・・・・
その瞬間、伏黒甚爾に呪力が宿った
破られた縛りによってバグが発生し
バグの原因である呪力の放出と共に
伏黒甚爾の口から血が吐き出された。
溢れ出す鮮血と鼻腔を差す鉄の匂いに
膝をつき、口を押えながら伏黒は呆然と血を眺める
黒井は目の前の光景に理解が出来ず
言葉も出ないまま視線を交互に伏黒と名字へと移す
毒の術式か、しかし、自身の身体は天与呪縛により
内臓も強化されており呪霊を格納しても
その猛毒に耐え得る身体を持っていた…はずだ。
口の中に残っていた血を吐き出しつつ口元を拭う
まさか、強制的に呪力を宿らせられて
天与呪縛のバグを利用されるとは
任務以外のことをやるもんじゃねぇな
と、乾いた笑いを溢した。
ジッと名字を見るも全然感情が読み取れない
手のひらは深い傷を負っていたはずだが
既に血が止まっている様子を見た伏黒は
反転術式も持ってんのかとウゲッと表情を歪ませる
追って来られたらめんどくさいが
星漿体を殺せれば任務は達成だ。
多分、それは簡単に出来る。
今は、全力で先に進む。
伏黒の最高速度での移動で
落としてしまった呪具の回収後
薨星宮の本殿を目指す。
横切る際に仕返しのつもりで拾った呪具で一振り
しかし、名字は簡単に回避をした
その様子に化け物かよと苦笑するが
不意に見えた無感情の赫い眼とその大きな傷跡が
妙に頭に残ったまま彼は星漿体の元へと向かった
全くついていけなかった黒井はその場にへたり込み
本殿の方を遠く見つめる名字の後姿を見つめる
ぼんやりと男の姿を思い出しながら
五条や天内のことを考えて、ハッとする。
理子様が危ないと焦ったように
伏黒を追いかけようとするが
「大丈夫です」と淡々と告げる名字に
涙目になりながら「ですが…!」と抗議する
「大丈夫にします」
名字はそう言うと黒井を気絶させた
長い前髪の間から〝紫〟の瞳が遠くを視ている
「申し訳ありません」
小さな声が、本殿の奥にいる夏油たちに謝罪をする
――天内理子がたった今、脳を打ち抜かれた。
* * * * * *
意識を失ってしまった黒井を連れて
盤星教本部、星の子の家へと名字は辿り着く
誰も居ない場所で静かにその紫の瞳を輝かせる
瞬きをせず
何も無い場所を見つめているように見えるが
実際には無数の情報を処理している
常に視たままで発動している術式や
遠くにいる五条と伏黒の戦いの観戦
未来視で自分がすべき行動を把握しておく
全てをフル稼働させているせいか
名字の鼻からは鼻血が垂れ始めていた
その血を拭いながら名字は立ち上がり
今始まっている最強の覚醒の場所へと向かう
五条悟は覚醒した影響かハイになった状態で
伏黒の相手をしており、名字の気配には気付いておらず
ただただこの世界の心地よさを体感していた。
発動した虚式「茈」が伏黒甚爾を殺す直前
何かが彼を掴む。いつの間に現れたのか
名字が彼の片腕にぎゅっと抱き着いていた
コイツ、死ぬ気かよとゆっくりと翡翠の瞳が丸くなる
先ほどの天与呪縛のバグを理解した名字は
伏黒に呪力を馴染ませることを出来ないと判断し
自身に起点を作り〝縮〟による
自身の呪力の圧縮されることによって起きる高速移動で
「茈」の範囲から何とか逃げ切ることに成功した。
本来ならばあまり障害物がない箇所に起点を
作っておくのだが五条悟に出来るだけ気付かれない
場所に伏黒を避難させておく必要があった。
そのため木や地面にぶつかりボロボロになりながら
ごろごろと転がった先で名字はスッと起き上がり
伏黒に反転術式を施した。至る所をぶつけた伏黒は
打った頭を押さえながら上体を起こし
間近にいた名字の姿にギョッとする。
「……意味分かんねェな」
どこか考えることを放棄しつつ
されるがままに脱力した伏黒は目を閉じる
自分を肯定するためにいつもの自分を曲げた
結果、その時点で負けてた、はずだった
「
自分も他人も尊ぶことのない
そういう生き方を選んだんだろうが
そう呟きながら瞼の裏には
一緒に過ごした女性の姿が思い浮かんでいた
ザッ、とこちらへと近づく気配に目を開ける
いつの間にか俺を生き残らせた少女の姿は無い
代わりにあるのは何故か五体満足で生き残っている
伏黒の姿を見に来て「はぁ?」と言う風に顔を歪ませた
五条悟の姿だった。そんな姿を見て伏黒は吹き出しつつ
木の幹にもたれたまま両の手のひらを上げ、降参した。
「ニ、三年もしたら俺の子供が禪院家に売られる
好きにしろ」
* * * * * *
その後、天内理子の死体を回収した五条の所に
夏油が集合し、星の子の家を出た所で
目を覚ました黒井が二人の元へと合流した。
死んでしまったかもしれないと思っていた夏油は
ここにいるとは思っておらず目を見開いた。
黒井は二人の元へと近づくと五条が抱えている白い布
その布に納まりきっていないだらっと垂れる手足に
悲痛な表情で顔を歪ませ、その場で声を上げて泣いた。
五条はそれを無言で見つめ、夏油はクッと唇を噛みながら
黒井の傍へと膝をつき、その背中を擦った。
――――その姿を見ていた名字が術式を解除する
直後、ピクッと五条の腕の中で微かに動く
それに反応した五条の六眼が大きく見開かれた。
バサッと白い布が地面へと落ちる
三人の視線が集まった先で閉じられていた瞳が開き
五条を見る。その瞳は自身の状況を飲み込めておらず
困惑したように揺らいだ。辺りを見ると同じように
困惑した表情の夏油と黒井の表情。
「…――――――――理、子…様…?」
その日、星漿体は確実に死んだはずだった
暗殺事件後、死んだと思われた天内理子は
生き返ると同時に星漿体としての適性を失い
天元との同化は不可能になっていたのだった
そのおかげで彼女は今、黒井と共に
普通の生活を心の底から満喫している
夏油は言う、目の前で脳を打ち抜かれていたと
五条は言う、どう視ても本当に死んでいたと
五条以外の四人は告げる。
―――ある一人の少女がいたのだと。