京都校の一年と東京校の相性が良すぎた件について
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「一緒に戦おう」
俺は順平の手を握って揺らぐ瞳を真っ直ぐ見つめる
何も分かっていなかった俺は順平を傷付けた
だけどもう、俺と順平は呪い合う必要は無いんだ
そう安心していると何処からか気配を感じて
暗闇の向こうを見つめ目を凝らす
帳が降りて夜になった学校
辺りを照らすものは何も無く向かってくる正体を掴めない
順平から手を離し、立ち上がって身を構える
「え」と驚いている声が聞こえ、順平とは目を合わせずに
「誰か来る」と警戒しながら伝えると
「え!?」と驚いた順平がしまったという風に
口を覆うが広い廊下には既に声が大きく木霊していた。
俺の背後に回り身を潜めて同じ方向を警戒する
コツコツと足音が段々ハッキリと聞こえてくる
それと同時に刀の切っ先が顔を見せた
キッとそれを睨みつけながらグッと拳を握る
緊張している順平の喉の音がゴクッと鳴った。
もしかしてナナミンか…と思っていたけど
予想とは大きく違って現れたのは小さな女の子
長い前髪から見えるのは白い包帯
持ってる日本刀は物騒だけど……制服、だよな?
なんか、五条先生みたいだな…と、思ってしまうと
さっきまで研ぎ澄ませていた警戒心が薄れちまった
てか、さっきからこの子めっちゃ無言なんだけど
順平も忙しなく視線が俺と女の子を行き来してる
反応から見るに順平の知り合いでもないみたいだ
もしかしなくても…高専関係者…だよな?
生徒…タメじゃないなら先輩? てか先輩っていんの?
アレ? 俺、この子に会って大丈夫、なんかな?
誰も何も喋らない変な空気の中、後ろを見る
「…え、と~…?」「虎杖君の知り合い…じゃないの?」
「順平の」「違うよ!」
「ッスよね~…?」「…虎杖様」
俺と順平以外の小さな声が聞こえた
順平の方見てたから分かんないけど多分この子の声だ
ゆっくりと視線を彼女の方へと戻す
「虎杖悠仁様」
「……様ァ!?」
いきなりの様呼びに吃驚してオウム返しをしてしまう
声が反響してめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…
「えと…俺、会ったことあったっけ…?」
フルネームで様付けされるとは思っておらず
混乱のまま頭をかきながら首を傾げて尋ねると
帰ってきたのは無言。答えの代わりに彼女は
手を伸ばして俺の胸に手を置いた。
何だコレ、呪力が流れ込んで来る
意図が分からずにされるがままでじっとしていると
彼女は背後にいる順平に
同じように呪力を流し込んでいるようだ。
順平は視線でこちらに訴えかけてくるけど
ごめん順平、俺もよく分かんねぇわと首を横に振った。
彼女から手を離され、呪力を流された感覚が不思議なのか
身体をペタペタと触りながら順平は確認していた。
それから俺を盾にしつつ「えと……君も呪術師…なの?」
と恐る恐る順平が尋ねると「はい」と彼女は返事をした
ナナミンや伏黒以上にドライな反応――――
突然、身体がバランスを崩す…いや、崩された
あの子に押されたんだと分かった時には
大きな何かが彼女の身体を掴むと
そのまま勢いよく窓ガラスを割って外へと放り出した
咄嗟に口を開くが名前すら知らないという事に気付く
だけどもう何もかも遅かった。
「―――はじめましてだね、宿儺の器」
* * * * * *
「説教は後で、現状報告を」
間一髪のところを助けられた救出直後
冷静にナナミンに問われて変わり果ててしまった
順平の姿を思い出しながら
二人助けられなかったこと伝えると
「まずは君の身体のことを」と言われる。
「俺は平気、いっぱい穴空いてっけど」
学校の人たちは体育館で倒れることを追加報告しつつ
目の前の真人を警戒しつつナナミンに彼女のことを聞いた
もしかしたらナナミンと合流してたかと思ってたけど
どうやら違うらしい。あの子、無事なんかな…。
「全く思い当たりません、誰ですか」
「…名前も知らない、俺も初めて会った」
そう言いつつ、不安に思っていると
それに応えるように俺の中にあった呪力が動き始めた。
怪我した手のひらを見ると血が止まり、傷が塞がっていく
それを見て、一つだけあの子について分かったことがある
「あの子は、絶対味方だよ」
そう言いながら治っていく手のひらを見せると
サングラスの奥の瞳が見開かれた
「自動回復の反転術式…それも他者に
いや…驚いてる場合ではないですね」
今はそれより、という風にお互いの動きがシンクロする
「なんだピンピンしてるじゃん七三呪術師
お互い無事で何よりだね、ハグでもするかい?」
再会を祝してなんてふざけたことを言いやがる相手を睨む
コイツだけは、今ここで絶対に祓う―――!
* * * * * *
目の前でナナミンだけが捉えられて俺は弾かれた
突然現れた黒い空間を「ざけんな!!」と叫びながら殴る
けど、ビクともしねぇ。
なんで、なんでナナミンだけ…!
このままじゃ…このままじゃ…!!
焦る気持ちのまま結界を殴り続ける
拳から血が出るけど痛みなんて無くて
ただただナナミンを救いたかった
「クソッ!!!!」
誰か、誰かナナミンを…!!
心から願った瞬間だった。
誰かが空間の上に降り立つ。
ふわっと現れたのはあの時の女の子だった
その背中が視界に入った瞬間俺は口を開き叫ぶ
「頼む!!! ナナミンを助けてくれ!!!!」
俺がそう言うと同時に彼女は日本刀を両手で持ち
黒い空間を突き刺した。瞬間、空間が歪み
―――黒い火花が、散った
初めて見る光景に一瞬、思考が停止する。
しかし、ピキッと黒い結界にヒビが入ったのが見え
ハッとして俺は拳を握って、全力で領域の壁を殴る
壊れた空間に飛び込むとナナミンと真人が見えた
真人と目が合った瞬間、奴の身体が大きく引き裂かれて
噴水のように血が噴き出した。
真っ暗な空間が消え、景色が元の学校へと戻る。
「何が起こったんだ…?」
左肩を抑えながら膝をつく真人の姿
突如倒れた怨敵を前に、0.1秒の自失
その間走った思考の上澄み
失血、限界、七海、生存、領域―――殺せる
ダンッと走り出す。
〝殺す!!〟
殺意に満ち溢れながら呪力を絞り出す
大きく身体を膨らませた真人
的がデカい、呪力の流れも凪いでいる
カウンターはない。確実に攻撃を当てられる。
最後の好機、駆け引きはもういらない
そこにあるのは限りなく、透明な殺意
「逕庭拳」
俺はまだ呪力操作が未熟だから変則的な呪力の流れが
出来ている…らしい。自分じゃよく分からんけど。
だから、俺の拳がぶつかった直後、遅れて呪力がぶつかり
一度に二度の打撃が生まれるらしい
確かに、俺の拳は大きな的に当たったはずだった
けどパァンと弾けた真人の身体には何の手応えも無かった
何故、と動きが止まった俺の隣をナナミンが駆ける
そこには「バイバぁ~イ」と呑気に手を振る姿
排水溝へと溶けていくアイツは「楽しかったよ」
とだけ言い残して姿をくらましてしまう
「待て!!」と叫び後を追いかける
バコッとナナミンが排水溝ごと殴るも
アイツは逃げ切ってしまったらしい
追いかけねーと…!!!
そう思っていたのに視界が傾いていく
「虎杖様」
名前を呼ばれても、もう答える気力がない
心の中で必死に動け動けと念じても
俺の意識は薄れていく一方で
ナナミンが何かいってるけどもう何も聞こえて来ない
俺は真人に殺意を抱きながら、瞼が閉じていった。
* * * * * *
俺が目を覚ますと傍にナナミンがいてくれた
冷静に容態を聞いてくれてたけどその声は優しかった
どうやらあの子———名字が反転術式で
俺の怪我を治してくれたらしい。
ナナミンは過去に会ったことがあるって教えてくれた
そっか、と相槌をうちながら名字はどこかと聞くと
家入さんと何か大事なことをしているらしい
大事なことって何、って聞こうとした時に
俺たちがいた部屋の扉が開く
そこにはかなり疲れた様子の家入さんがいて
「丁度良かったみたいだな」と俺を見た。
見てもらいたいものがあると言うと
起きれるかと確認され
俺が頷くとついてくるように言われて
ベットから起き上がる
廊下を歩いている途中で家入さんとナナミンに
見てもらいたいものって何と聞いてみても
二人とも見た方が早いって教えてはくれなかった。
正直今からかわれる元気ないんだけど…と内心思いながら
案内してもらった扉を開ける。そこは病室みたいで
定期的な機械音がピッピッと響いていた。
家入さんがスタスタと歩き、ベットを覆うカーテンを
俺に見せるように開いた。
「―――え…」
俺は少し顔色は悪いが安らかに眠っている姿に腰が抜け
その場に膝をついた。家入さんが隣で内側の内側を
彼女が守ってくれたとか、後遺症とか色々言ってけど
俺にはなんも頭に入って来なくて
ただただ、そいつを見ながら
「生きてるんすか…?」と聞く
「―――あぁ、吉野順平も吉野のお母さんも、な」
家入さんが頷いた瞬間
俺はベットのシーツをしわくちゃにするほどの力で
握り締めて顔を埋めた。ベットに染みが広がっていく
だけど、もう止められなかった。
* * * * * *
京都の高専の生徒である名字は俺たちに合流する前に
吉野宅で真人と出会い、その戦いのうちに吉野凪を救出
学校に来てくれたのも自身の独断だったようで
彼女は本来、複数の任務をしに神奈川に来ていたらしい
だから、治療が終わった直後には極秘の報告を済ませて
「任務がある」とだけ言って高専を出て行ったのだと言う
忙しくて確認が出来なかったらしいが
任務が終わってしばらく経っても
俺の存在は公になっていないらしく
彼女が自分の意志で秘密にしてくれている
というのがナナミンの見解だった。
なんつーか至れり尽くせりで
まともにお礼も言えてないまま俺の復帰が近づいていた。
順平の方は要保護観察対象となり
俺と一緒で存在は公にはなっていない。
順平は術式の影響で脳に後遺症が残ってしまった
けど日常生活に大きな影響は無くて
少し歩きずらそうだけど
順平は生きてるだけでありがたいと
母親と一緒に笑っていた。順平のかーちゃんは
呪霊に右腕を食べられてたらしいけど名字が
その日のうちに反転術式で治療をして
自身が泊まっていたホテルで休ませていたらしい
本人はずっと寝ていたから
起きた時には高専だったみてーだけど。
「…あー名字に会えねーかな~」「え、会えるよ?」
ある日ぼーっとして呟くと
五条先生があっけらかんとそう言った
「え!?」と俺が驚いていると「言ってなかったっけ?」と
五条先生は俺が全く知らない京都姉妹校交流会の話をして
運良く名字は見学として一年生ながらも参加している
ということらしいけど、情報量が多すぎて追いつけない
五条先生、まじでそういうのは早く言ってくんねぇ…!?