京都校の一年と東京校の相性が良すぎた件について
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「やっぱりだ、退屈だよ伏黒」
いきなりやってきたと思ったら一方的に話を進められ
質問に答えたというのに東堂葵はそう言って涙を流した
刹那、ゾクッとした感覚に咄嗟に防御態勢を取った
しかし、その警戒はすぐに驚きへと変化した
グッと力ませていた身体の力が抜けていく
俺は少し視線を下げてその後ろ姿に目を見開いた
「――――どけ」
東堂から表情が抜け落ちた。空気が最低に淀んでいく。
こちらには向けられていないにもかかわらず
ビリビリと伝わってくる殺気を感じながら
東堂に睨まれている名字を見つめる
俺と東堂の間にいつの間にか現れた彼女は
何も言わずに俺の前に立っていた。
思わず彼女の名前を呼ぶと隣にいた釘崎が反応する
名字は少しこちらへと振り返ると軽く会釈をした
どうやら向こうも覚えているらしい
相変わらず長い前髪と巻かれた包帯で表情は伺えない
釘崎の視線がどうゆうことだと物語っているが
正直俺にも分からないため、ただ黙っているしか出来ない
もう一度、声をかけようとしたと同時、いやそれより前に
彼女に東堂の拳が迫っていた。大きな手が頭を鷲掴む
地面が割れるほどの威力で彼女の身体が叩きつけられる
俺と釘崎の混乱した叫びが揃った。
同じ学校の生徒だろ!? コイツは一体何をしてんだ!?
水のように流れ広がっていく血を見た釘崎が制止の声を
あげるも、東堂は追い打ちをかけるようにミシミシと
音が聞こえてきそうなほどに彼女の頭を握り潰そうとする
俺はやめろと叫びながら玉犬を呼び出すと
攻撃を避けながら東堂は彼女から離れた。
何ともない顔で首を鳴らしている東堂を睨む
釘崎が名字に駆け寄ろうとすると銃声が響く
ピタッと動きを止めた釘崎の足元には一発の弾痕
「何すんのよ」静かに怒りながら釘崎は
東堂と一緒に来ていた禪院真依先輩を睨んだ
「知らないわよね、ソレが人形だってこと」
ソレ、と指差されたのは地面に倒れている名字
「気にしなくていいのよ、痛みなんて感じてないから」
淡々と言い放ち、冷たい瞳で名字を見下す
「どーなってんだよコイツら……」
小声で拳を握りしめながら釘崎は呟いた
異様な空気の中で名字がスッと上体を起こす
「あ、アンタ…大丈夫…?」
立ち上がる名字に釘崎が声をかけると
「はい」
と、ごく普通なように頷いた。
頭から出血しているんだろう包帯は血に染まっている
とても、大丈夫な状態ではないはずなのに
名字は痛みを感じているようには見えなかった
「ほらね」
禪院先輩の声に嫌な予感がして視線を動かす
「―――ほんっと、気色悪い」
既に銃口は名字へと向けられていた
複数の銃声が響き、目の前で全ての弾が名字に命中した
弾丸が当たっていく瞬間がスローモーションのように
見えて、頭の中が真っ白になった。
倒れそうになる彼女の身体を急いで受け止める
スッと目の前に現れたのはニヤリと笑う東堂
玉犬は間に合わない。
釘崎は丸腰で禪院先輩が止めてしまう。
俺は名字を受け止めている。両手は使えない。
せめて、守らねぇと―――――
「……念力術式〝動〟」
拳が目の前に迫った直前、やけにその声はハッキリと
俺の耳へと聞こえてきた。〝何か〟が俺の中へと入る。
そんな感覚を感じていると身体がいつの間にか宙へ浮き
何かに引っ張られていくように名字から離れていく
「名字――――!」
何が起きているのか分からず勝手に開いていく距離に
混乱しながら名字に手を伸ばすもその手は届くことなく
目の前で小さな体を東堂の拳が砕いていく光景が広がった
風船のように宙へと飛んだ名字の身体
「伏黒ッ!」「ッわーってる!!!」
釘崎が俺の名前を叫ぶと同時に親指を交差させ
式神である「鵺」を召喚し名字を助けるように
命令を出す。その隙をついた東堂に投げ飛ばされようと
俺は鵺が彼女を捉えるまで視線を逸らすことは無かった。
* * * * * *
『動くな』
狗巻先輩の声が聞こえてきたと思ったら
パンダ先輩がやってきて東堂を殴り動きを止めてくれた
先輩たちの姿が視界に入ってきた途端にスイッチが切れる
先程まで戦いで昂っていた熱がスーッと冷めていくのを
感じつつ、ドサッとその場に座り込み、脱力した。
「ふーぎりぎりセーフ」と安堵の息を吐くパンダ先輩に
「おかか!」と狗巻先輩は否定をしていた
ぽたぽたと血が流れる感覚にぼーっとしていると
隣に誰かがやって来る、被さる影に無意識に顔が動く
「……無事か」「はい」
俺に反転術式を施しながら頷いた名字に
静かに息を吐いた。お互い血だらけだな。
東堂の相手はパンダ先輩に任せて
名字も座って休むように声をかけ
こちらに伸びている手首を掴み、軽く引っ張る。
無言で立ったままの名字に「ほら、座れ」と促す
すると、名字は正座をした。いや崩せよ…。
〝人形〟
一体、何があったら同じ学校の先輩にそう言われるのか
確かに機械じみていると思わなくもないが…
それにしたってあの二人の扱いは酷かった
「どうやら退屈し通しってワケでもなさそうだ」
こちらを見て楽しそうに笑った東堂にイラっとして
睨みつける。名字のことは視界にすら入ってねェのかよ
「乙骨に伝えとけ〝オマエも出ろ〟と」
「オレ パンダ、ニンゲンノコトバワカラナイ」
そのやり取りを最後に東堂は去っていく
それについていくように名字が立ち上がるので
何かを考える前にその腕を掴んだ
「……伏黒様」
まさかの様付けに俺は驚き、呆然と名字を見た
何も言わない俺に立ち上がれないと思ったのか
両手で俺の手を握り、くいっ…と引っ張った。
その感触にハッとして悪いと謝りつつ立ち上がる
「たかな~?」「二人とも血みどろだな」
先輩二人がこちらへと近づき俺たちを見比べた
「ツナマヨ?」
先輩に尋ねられて名字が京都校の一年であることを
説明すると二人は納得したように頷いた。
が、少しして二人は首を傾げつつ名字を見る
そして、俺を見た。何となく言いたいことが分かり
「俺じゃありませんよ……東堂です」
俺がそういうと二人は驚いて目を見開いた
なんで京都校の名字が、その理由は俺にも分からない
「…ま、とりあえず真希たちと合流するか」
「しゃけ!」
俺はされるがままにパンダ先輩に担がれる
ドッと疲れたからか抵抗する気力にもならない
お日様の匂いとふわふわの毛皮の感触に目を閉じる
「明太子!」
狗巻先輩の声にゆっくりと瞼を開け
「あ…?」と俺は間抜けな声を出した。
ちょ、何で、名字が狗巻先輩に――――
身体ぼろぼろのアイツが痛みを感じてないか
心配になったが俺にはそれを指摘する気力すらなく
俺は暫くどうすることも出来ないまま
ずっと視界に映る名字をお姫様抱っこする先輩を
パンダ先輩に降ろされるまで見ることになった。