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モブ、プロヒーローを拾う。~大・爆・殺・神ダイナマイト編~


それは突然だった。

爆豪さんと食べたお昼で食料を
思いのほか使ってしまっていたため
馴染みのスーパーで
自身を労わるために少し贅沢な買い物をして
のんびりと大・爆・殺・神ダイナマイトのグッズでも
探していいものがあったら買っちゃおうかなぁと
鼻歌交じりに家に向かった。
気分良く家の鍵を開けるとガチャ、と
音がしなかった。やば、鍵閉め忘れた〜!
と、思いながら扉を開け、私の身体は固まった。

「…っえ…?」

「あぁ! お帰りなさい、お邪魔していますよ」

昨日、大・爆・殺・神ダイナマイトが戦闘し
身体を傷だらけにしながらも勝利して
彼が倒したはずの敵が私の家に土足で入り込んでいた
家の中は荒らされまくりぐっちゃぐちゃだ。
「な、なんで…!?!?」するっとスーパーの袋を手放し
驚きで声が出ない私を見て、敵――アインツは笑う。
「…大・爆・殺・神ダイナマイトはどこです?」
不思議そうに首を傾げられる。その問いは
間違いなくここにいるはずなのに
という、確信を感じさせる。
「し、知るわけないでしょ……安静中なんだからっ!」
言い逃げするようにドアノブに手を伸ばすと
ガンッという音が響く頬を掠った熱さに顔を歪める
私の目の前には氷の刃がドアに深く突き刺さっていた。
浅く吐き出した息が白い。敵にゆっくり視線を戻し
寒さと恐怖で震えているとパキパキと音を立てて
部屋の中が凍っていく。
アインツは氷系の〝個性〟の持ち主だった
幻でも偽物でもなく、本物なんだと理解する。
「教えてくだされば見逃して差し上げますよ」
一歩一歩、敵がこちらへと進んでくる。
何も言わない私にドンッと背後のドアに拳をぶつけ
無言の圧力で私を脅してくるが
首を横に振ると顎をクイッと上げられる
「死にたくねェならさっさと吐けよ」
瞳孔が開いた瞳で威圧される。それをやけくそで
「知らないってば!!」と大声で返事をして
目をぎゅっと閉じて頭を振り敵の手から逃れる
「ふむ、本当に知らなさそうですね?」
何回もそう言ってるじゃん心の中で反論する
が、一般人には震えていることしか出来ない。

「…じゃあ、ここは敵らしく姫を攫いますか」

「もう姫の城の中ですけど、ね?」そう言って
敵は私を担ぎ上げる。私は「何!? 離してよ!!」と
声を上げ必死になって暴れるが全く意味をなさず
ベットの上に乱暴に放り投げられた。
「やだ、いやっ!!!」と両手をバタバタさせるが
大の男に馬乗りになられては碌な抵抗も出来ない。
アインツは私の駄々っ子はなんのそので
ベットに置いてあった黒いバックをごそごそと漁る
そこからはカメラや三脚やら首輪やら手錠やら
嫌な予感がする物がうじゃうじゃと出てきた。

「な、なななな何それっ、変態! どS!」

「こうゆうのは初めてでしたか」

「当たり前でしょっ!? ちょ、見えないっ、やだ!!」

「はいはい、暴れないでくださいね」

目隠しをされて視界が真っ黒に染まると
腕を掴まれてガシャンという嫌な音がする
手足が動かせない。多分道具で拘束されててしまった
やばい、やばい、やばいと頭の中で警報が鳴り響く
「カメラは…あぁばっちりですね」
少し遠くから聞こえてくる声の方を向き
「…な、なに、する気なの」と震えた声で聞いた
敵はクスクスと笑うと「そんなに心配なさらず」と
声に心が躍っているのが手を取るようにわかった

「…では、配信を始めましょうか」

ベットが軋む、多分アイツがベットに座っている
「皆さん、見えてますか?」うきうきと声を弾ませ
視聴者へと話しかけているアインツ。
私は、多分、というか絶対人質の役割を担っており
彼を、大・爆・殺・神ダイナマイトを呼ぼうとしている
「皆さん、酷く混乱しているようだ」
大丈夫ですかと心配しているかのような声を出す
嫌味なクソ野郎、と。唇を噛む。
「では、答え合わせを致しましょうか」

アインツは自身の計画を話し始めた。
昨日、ヒーロー達と戦っていたのは
作り出された偽物クローンだった。
回線の不具合は自身の仲間が死に物狂いで
役割を果たしてくれたのだと
とほほ、なんてわざとらしく泣き真似をする敵
回線が混乱し仲間と連絡が取れないヒーローは
碌に回復出来ず疲弊したところを潰していく
という目的だったようだけれどどうやら
私がそうしたように三人ともどこかで保護されていて
どこにいるかが分かっていなかったのだと言う。

「ま、他二人も見つかっていますし
 これからが楽しみです」

「大・爆・殺・神ダイナマイト」
アインツはカメラに向かって話しかける
「見ているでしょう!」と高揚して大きな声を出す敵
「貴方はこの女性に恩がありますね?」
救けを乞う一般人がここに一人
愉快そうに弾む声を聞いて
あぁ、コイツは敵なんだと今更実感した。
大・爆・殺・神ダイナマイトは
ヒーローとしてここに向かわなければならない。
サイドキックや同僚を向かわせれば
世間は彼を「腰抜け」などと批判する可能性もある
彼を表面上でしか見ていない人たちは多かった
そういう立場の人なんだ。

「ですが一番最悪なのはヒーローが間に合わないこと
 ―――お楽しみといきましょうか」

ギシッとベットが軋み気配が近づく
「っやめて、ください…」
「ふっ、そんなに怖がらないで?」
指先が頬を撫でる、気持ち悪さにぶるっと震えた
足の枷を外され大きく足を開かされた
すかさず閉じようとするもその前に入り込まれてしまい
敵の感触を嫌というほど実感してしまうだけだった
「おや、配信の皆様もなかなか良い趣味をしている」
「ひっ、や、あっ!」身体を引っ張られて怯えながら
身を固めていると上体を起こされ背後に奴の体温
視界は未だ暗く何をされているのか把握出来ない。
「えっ!? や、やめっ…」
「おや、着痩せするタイプでしたか」
コイツ、胸触りやがった…!?!?
身体を捩るが胸を揉みしだく手は止まらない
そうならばと手を振り払おうとするが
グッと手枷のチェーンの部分であろう箇所を引っ張られ
腕は後頭部へと固定されてしまった。
「やだっもう、離してっ」
「そう言って、好きな癖に」
「好きじゃないっ!!!!! ド変態!!!!」
「もっと色気のある反応していただけます?」
ヤレヤレというため息が聞こえてきて
コイツ…!と自身の腸が煮えくり返るのが分かる
「いい加減にッ…!!」叫びきる前に背中を押され
うつ伏せの状態になった。うぐっと呻き
ベットに顔を埋めている間に腰を掴まれた
「わっ!?」と驚くとグッと引き寄せられる。
冷たい手が直に肌を触り「ひっ!?」と
身体がビクッと反応した。
アインツは背中に密着して覆いかぶさる
耳元に聞こえる息がフゥ―ッと荒い。
「冷たいっ、離して!!!」と訴えるも
「貴方で温めてくださいよ」と親父臭いことを
耳元で囁かれてゾゾゾッと鳥肌が立ち

「ひぃ~~!? 絶対、やだ!! キモイっ!!! 臭い!!!」

「ハァ、本当に色気のない…
 身体目当ての男に振られるタイプですね」

「うっせェ!!!」

「おやおやおや、これは何かおありで、失敬」

謝る気のないうわべだけの言葉に悔しさが募る
この野郎、本当にぶん殴りたいっ
「…じゃあ、オンナにしてやるよ」
その言葉に反論する前に耳の穴に生暖かい感触に驚き
言葉は掻き消えた。冷たい手が身体を弄る。
コレ、ヤバい気がする。雰囲気の違いに委縮してしまう
「あー気持ち、肌触り最っ高、ンッ」
「やめてっ、や、っだ…ぁ」
「ハッ、そそる反応、いいね」
じゅるじゅると音を立てながら耳を嬲るアインツは
じわじわと上半身を彷徨っていた指先を
下へ下へと沿わせて行く。後ろに熱を押し付けながら
履いているズボンを脱がせようと
ボタンとファスナーに手をかけ始めた。

「ちょ、ちょっと! や、やだ、やだ」

「アレ、泣いちゃった?
 目隠しお似合いだったので外してませんでしたが
 さて、どうしましょうか…」

そう言いながら簡単に私をひっくり返して
ズボンを剥ぎ取り、上着をめくりあげ
手錠の部分でせき止める。寒さで心が寂しくて
あの温もりが頭を過って無意識に口が開く

「ばくごうさんっ、救けてぇ……!!!」

「死ねやァアアアア!!!!!」

閃光弾スタングレネードという聞いたことのある声で叫ばれる必殺技
目隠し越しにも分かる白さに威力が伺える
近くで敵の驚く声が聞こえてきて派手な音を立てた
「くっ、楽しみすぎましたね」
直後、硝子が割れるような音がした
何が起きてるのか分からないが「…クソッ!!」という
声と一緒に上着が戻され、何かに包まれた
「…悪かった」視界が開けて声を聞こえた方に
顔を上げるとそこには苦しそうに顔を歪めた彼の顔
苦虫を嚙み潰したような表情で手枷を外してくれた
私は何も言わずに爆豪さんに抱き着くと
「…グッ」と痛みを我慢する声が聞こえてきて
謝りながら慌てて力を抜いた
「謝ンのは俺ェの方だろーが、馬鹿が」
距離を離した私を元の位置に戻すように引き寄せた
その心臓が思ったより早い鼓動を刻んでおり
もしかして、かなり急いで来てくれたのかと想像して
胸がきゅっと詰まった気がした。
「…アレがカメラか」温もりに安堵していると
低く唸るような声が聞こえてハッとする
爆豪さんはドスドスとカメラに近づくと
それを鷲掴み「……全員、ぶっ殺す」と呟き
鬼神のようなオーラを放ちカメラを爆破させた。
すると、パキパキと割れた硝子の上を踏み歩き
ベランダに出た。戦いに行くんだって背中を見て悟る

「負けないでね、爆豪さんっ!!」

「ったりめェーだ」

こちらを見ずに彼は静かに私に応えてくれた
「あと、さっきから違ェンだよ」そう言われ
私が首を傾げると彼はこちらを見て「ハッ」と笑う
「俺は大・爆・殺・神ダイナマイトだァ!!」
そう言って爆破で空へと飛んだ爆…


――大・爆・殺・神ダイナマイトはアインツの元へ。

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