#09.絶対幸せにしてくれるから!
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スミアに案内してもらい、幾度か道すがら転ぶ彼女を助けながら、名前はルフレに会いに来た。城の一室を借り切って、戦略書を読み解く彼は、疲れはあるがそれよりも知識を得る喜びに満ちあふれていた。そんな彼の邪魔をするのは忍びないけれど、とあえて長引かせようとした前置きをルフレ自身に遮られて、名前は彼と相対した。
「スミアから聞いたよ。何か相談したいことがあるんだって?」
「は…はい…」
もじもじと下を向いてしまった名前に対し、ルフレは笑みを絶やさなかった。何か言い辛いことだと察したスミアが急いで部屋から退出したのを機に、優しく声をかける。
「今までぜんぜん力になれなかったからね。なんでも言ってくれ」
「は…はい……あの…でも……」
「うーん…そうだな。じゃあ、君の悩み、当ててみせようか?」
「え……?」
「クロムのことだろう?」
「!!」
かくり、と左右に揺れ動く首が一瞬にして固まった。ルフレはしてやったり、と笑みを輝かせる。
「クロムとはあまり話していないんじゃないかな?聖王代行の仕事は忙しいみたいだから…政はもちろん、外交、財務管理、社交場への出席といろいろあるからね。でも、朗報だよ」
「………」
「次の屍兵退治には、久しぶりにクロムも参加することになったんだ。なんだかんだで一番の気がかりはイーリスの民達のことみたいで。彼らの内情を知るのはやっぱり自警団での活動が一番だからってね」
「そ…そうですか………」
「…あまり嬉しくないかい?」
「………」
名前はうんとは言わなかったし、首を振ることもなかった。だが、その沈黙が意志を示している。ルフレは訝しく思いながらも声音を変えることはなかった。
「苗字?」
「…これ…」
「……?」
名前が差し出したのは件の指輪だ。ルフレはそれを一見、何かを感づいたのか目を見開いただけで声をあげはしなかった。名前の事情を知ろうと計ったのである。思惑通り、名前は辿々しくも言葉を紡ぐ。
「これ…クロム様から預かって…」
「…クロムから?」
「……。…ルフレさんから、返してもらえませんか?大事な…指輪みたい、だから…」
「……」
沈黙がしばし時を支配する。にこやかだった青年からは笑みが消え、困惑で眉が寄っている。名前も変な願いを言ったと自覚している手前、押し切るかどうかを迷っていた。
しかし、一手踏み込んだのは軍師の方。やはり、声のトーンは優しかった。
「大事な指輪だから、君に託したんだろう?そんなものを僕に渡していいのかい?」
「……うん…」
「…本当に?」
「…………」
頬を染めて、今にも泣き出しそうに顔を歪ませた名前だったが、それでも本心をひけらかしたりはしない。
迷っていると、ルフレの方が観念して言葉を足していく。
「それは本当に預かったものかな?」
「…え?」
「君にあげたものじゃないのかい?」
「えっ!そ、それはないです…!」
「絶対?」
「う……うん……だって、そう…お守りだって…だから、返さなくちゃ…」
「お守り?」
「うん…戦いの前に預かってほしいって…」
「だったら、やっぱり自分の手で返した方がいいよ」
「…っ…でも……わ、私…異邦人、だから…」
「そんなこと気にしてたのかい?」
「………みんなは、あまり表にださないけど…やっぱり私は…」
「仲間だ」
「!」
「大事な仲間。表に出さないんじゃなくて、表も裏もないからだと僕は思うよ」
「……」
「まぁ…クロムには裏があるのかもしれないけれど」
「…!」
「とにかく、それを僕は受け取れない」
「ルフレさん…」
「そ、そんな目で見ないで…いいかい?なににしても、一度よく話してみるといい。クロムには僕から話してみるから」
ルフレは、焦燥する名前をスミアに任せて退室させた。
それから何事もなかったように日課の戦術書を読み解いてから深夜、ようやく床に着く前のクロムの部屋を訪れた。実はこれも日課である。先に警護に付いていたフレデリクと入れ替わりでクロムの話し相手を務めるのだ。内容は国の行く末から世間話まで様々。
場を盛り上げて後、ルフレはそうそう、と話を展開させる。
「今日苗字が会いに来たんだよ」
「!…苗字が?何をしに?」
「君から預かった指輪を僕から返してほしい…って」
「!…そ、それで?あ…預かったのか?」
「ううん。大事なものだから、自分で返した方がいいと言っておいた」
「そう…か」
クロムは平静を装ってはいたものの、僅かに緊張し、そしてルフレの返答にほっと胸を撫で下ろした。ルフレは観察を続ける。
「指輪、見つからないわけだ」
「…!」
「君らしくない。隠し事なんて。でもちゃんと伝えないと。彼女、預かっただけだって」
「…指に填めようとしたら、勘違いされたんだ。預かったものを身につけるわけないって」
「だと思ったよ。彼女の世界には、指輪を贈る習慣はないのかな?」
「そうかもな」
クロムは穏やかに笑って溜息を吐いた。
「苗字は元気だったか?食事はしているのか?」
「うん、最近はちゃんと食べられるようになったみたいだ。以前のように、クロムも一緒に過ごせばいいのに」
「……」
「何かあったの?」
「…いや、何もない」
「……何もないから、困っているんじゃないのか?」
「!」
クロムは一度視線を反らしたきりだったが、ルフレの一言一言に眉間に皺を寄せて唇を噛みしめる。
もう少し、と、ルフレはまだ口を開く。
「彼女は言っていたよ。自分は異邦人だから、君に会えないと」
「な…!?そんなこと、俺は…!!」
「…そう思わせてしまうほど、君の態度に不安を持っていたんだ」
「……そうか…すまないことをした」
「……」
「異邦人だから気にしていないなんて、嘘だ。気にしないわけがない。…あいつには…帰る場所がある」
「……」
「親も生きている。友もいる。…夢だってあるだろう。そんなあいつに…この世界で俺は何かしてやれるのか?」
「……クロム…君は…迷っているのかい…?」
淡々と語り始めたクロムの真意に、今度はルフレが言葉を濁す。しかし、クロムは薄く笑ってはっきりと首を振った。
「いいや。迷ってなんかいない。もう決めたんだ」
「決めた?」
「俺はあいつを故郷に帰してやりたい。これ以上この世界で生きて…苦しませたくはない」
「……」
「戦いなんて存在しない平和な日常…命が脅かされることもなく、大事な人たちに囲まれて生きていける…あいつにはあいつの世界がある。そこで苗字は幸せになるべきだ」
クロムは淡々とした口調だったがどことなく力のない様子も見せる。ルフレには真意が透けて見えた。
「それで君は本当にいいのか?」
「……」
「だから別の女性を愛せるのか?」
「…俺は妻を娶るつもりはない」
「それは…!」
「イーリスにはリズがいる。あいつは結婚もするだろうし子も出来るだろう。そうなれば聖王の血は絶えない」
「…クロム」
「苗字には…幸せになってほしいんだ。我慢することもなく、笑えるようになってほしい。…それが俺の今の願いだ」
「今だって…今だって君は彼女を傷つけているじゃないか。そうやって距離を置いて、不安にさせて、悲しませている!…そう思わないのか?」
「……」
「クロム…!」
「苗字には、父も母もいる…血をわけた家族を…どうして俺が奪えるんだ?」
「…だけど…」
「捨てろと言うのは簡単だ。だが、その痛みを受けるのは苗字だ。…俺は親を早く亡くしている。そんな俺が、あいつに迫れるわけがない。俺が幸せにしてやるから、親兄弟を忘れろなんて。言っていいはずないだろう?」
「……」
「これでいい。…俺の気持ちは、あの指輪に込めた。後は苗字次第だ。捨てても、売ってしまうのも…な」
ルフレはしばらく返答を考えていたが、先にクロムがフレデリクを呼びつけてしまい、話は区切りをつけられてしまった。
部屋を出て、警護のために残ったフレデリクに別れを告げて、廊下を歩きながら、それでも、とルフレは長い間思案し続けた。
それが幸せであっていいはずはない。
名前は隠してはいたが、クロムへの思いは特別だろうし、クロムの方はもっとはっきりしている。
しかし、名前にとって帰郷と胸中のどちらがより幸福か、選べるのはクロムではなく名前自身なのだ。
何がより不幸なのかも、ルフレにだってわからない。
(本当にこれで…いいのか、クロム)
愛しい人の幸せを願うのは誰にだって出来る。だけど実現するのは何時だって当人だ。妻を迎えたルフレだからこそ、そう確信する。
そして何よりも半身と称してくれたクロムにだって幸せになってほしいのだ。
それでもルフレには現状を打破する一手が思いつかなかった。何故ならこの問題はクロムと名前の二人の間で解決すべきであり、他人が深く介入するのに気が引けた。
クロムはもう指針を決めてしまった。ならば、名前自身がクロムとぶつからねばならない。あの、他人と仕切りを付けたがる独特の美徳に生きる少女に、果たしてそんな大胆なことが出来るのか。
ルフレには不安を巡らせることしか出来なかった。
やっぱり直接話した方がいいよ、と、ルフレに見放されて、名前は酷くショックを受けて部屋に閉じこもった。焦りと不安が胸の中で踊り、ぐちゃぐちゃと心の平穏を汚していく。
出来ればルフレに場に入ってほしかった。二人で話をすることはどうしても避けたい。
ルフレは名前の都合の良い解釈をしてくれたが、自惚れを許せない名前はそう思えなかった。裏がある、と聞かされればマイナス面を連想するのが定石だ。だからこそ両者信頼の厚いルフレに間に入ってもらえればどんなに安心したか。
だが頼みの綱を引きちぎられた以上、いよいよ名前自身でどうにかしなければならない。
クロムが傭兵団の団長として戻る一日。それがラストチャンスだ。
「スミアから聞いたよ。何か相談したいことがあるんだって?」
「は…はい…」
もじもじと下を向いてしまった名前に対し、ルフレは笑みを絶やさなかった。何か言い辛いことだと察したスミアが急いで部屋から退出したのを機に、優しく声をかける。
「今までぜんぜん力になれなかったからね。なんでも言ってくれ」
「は…はい……あの…でも……」
「うーん…そうだな。じゃあ、君の悩み、当ててみせようか?」
「え……?」
「クロムのことだろう?」
「!!」
かくり、と左右に揺れ動く首が一瞬にして固まった。ルフレはしてやったり、と笑みを輝かせる。
「クロムとはあまり話していないんじゃないかな?聖王代行の仕事は忙しいみたいだから…政はもちろん、外交、財務管理、社交場への出席といろいろあるからね。でも、朗報だよ」
「………」
「次の屍兵退治には、久しぶりにクロムも参加することになったんだ。なんだかんだで一番の気がかりはイーリスの民達のことみたいで。彼らの内情を知るのはやっぱり自警団での活動が一番だからってね」
「そ…そうですか………」
「…あまり嬉しくないかい?」
「………」
名前はうんとは言わなかったし、首を振ることもなかった。だが、その沈黙が意志を示している。ルフレは訝しく思いながらも声音を変えることはなかった。
「苗字?」
「…これ…」
「……?」
名前が差し出したのは件の指輪だ。ルフレはそれを一見、何かを感づいたのか目を見開いただけで声をあげはしなかった。名前の事情を知ろうと計ったのである。思惑通り、名前は辿々しくも言葉を紡ぐ。
「これ…クロム様から預かって…」
「…クロムから?」
「……。…ルフレさんから、返してもらえませんか?大事な…指輪みたい、だから…」
「……」
沈黙がしばし時を支配する。にこやかだった青年からは笑みが消え、困惑で眉が寄っている。名前も変な願いを言ったと自覚している手前、押し切るかどうかを迷っていた。
しかし、一手踏み込んだのは軍師の方。やはり、声のトーンは優しかった。
「大事な指輪だから、君に託したんだろう?そんなものを僕に渡していいのかい?」
「……うん…」
「…本当に?」
「…………」
頬を染めて、今にも泣き出しそうに顔を歪ませた名前だったが、それでも本心をひけらかしたりはしない。
迷っていると、ルフレの方が観念して言葉を足していく。
「それは本当に預かったものかな?」
「…え?」
「君にあげたものじゃないのかい?」
「えっ!そ、それはないです…!」
「絶対?」
「う……うん……だって、そう…お守りだって…だから、返さなくちゃ…」
「お守り?」
「うん…戦いの前に預かってほしいって…」
「だったら、やっぱり自分の手で返した方がいいよ」
「…っ…でも……わ、私…異邦人、だから…」
「そんなこと気にしてたのかい?」
「………みんなは、あまり表にださないけど…やっぱり私は…」
「仲間だ」
「!」
「大事な仲間。表に出さないんじゃなくて、表も裏もないからだと僕は思うよ」
「……」
「まぁ…クロムには裏があるのかもしれないけれど」
「…!」
「とにかく、それを僕は受け取れない」
「ルフレさん…」
「そ、そんな目で見ないで…いいかい?なににしても、一度よく話してみるといい。クロムには僕から話してみるから」
ルフレは、焦燥する名前をスミアに任せて退室させた。
それから何事もなかったように日課の戦術書を読み解いてから深夜、ようやく床に着く前のクロムの部屋を訪れた。実はこれも日課である。先に警護に付いていたフレデリクと入れ替わりでクロムの話し相手を務めるのだ。内容は国の行く末から世間話まで様々。
場を盛り上げて後、ルフレはそうそう、と話を展開させる。
「今日苗字が会いに来たんだよ」
「!…苗字が?何をしに?」
「君から預かった指輪を僕から返してほしい…って」
「!…そ、それで?あ…預かったのか?」
「ううん。大事なものだから、自分で返した方がいいと言っておいた」
「そう…か」
クロムは平静を装ってはいたものの、僅かに緊張し、そしてルフレの返答にほっと胸を撫で下ろした。ルフレは観察を続ける。
「指輪、見つからないわけだ」
「…!」
「君らしくない。隠し事なんて。でもちゃんと伝えないと。彼女、預かっただけだって」
「…指に填めようとしたら、勘違いされたんだ。預かったものを身につけるわけないって」
「だと思ったよ。彼女の世界には、指輪を贈る習慣はないのかな?」
「そうかもな」
クロムは穏やかに笑って溜息を吐いた。
「苗字は元気だったか?食事はしているのか?」
「うん、最近はちゃんと食べられるようになったみたいだ。以前のように、クロムも一緒に過ごせばいいのに」
「……」
「何かあったの?」
「…いや、何もない」
「……何もないから、困っているんじゃないのか?」
「!」
クロムは一度視線を反らしたきりだったが、ルフレの一言一言に眉間に皺を寄せて唇を噛みしめる。
もう少し、と、ルフレはまだ口を開く。
「彼女は言っていたよ。自分は異邦人だから、君に会えないと」
「な…!?そんなこと、俺は…!!」
「…そう思わせてしまうほど、君の態度に不安を持っていたんだ」
「……そうか…すまないことをした」
「……」
「異邦人だから気にしていないなんて、嘘だ。気にしないわけがない。…あいつには…帰る場所がある」
「……」
「親も生きている。友もいる。…夢だってあるだろう。そんなあいつに…この世界で俺は何かしてやれるのか?」
「……クロム…君は…迷っているのかい…?」
淡々と語り始めたクロムの真意に、今度はルフレが言葉を濁す。しかし、クロムは薄く笑ってはっきりと首を振った。
「いいや。迷ってなんかいない。もう決めたんだ」
「決めた?」
「俺はあいつを故郷に帰してやりたい。これ以上この世界で生きて…苦しませたくはない」
「……」
「戦いなんて存在しない平和な日常…命が脅かされることもなく、大事な人たちに囲まれて生きていける…あいつにはあいつの世界がある。そこで苗字は幸せになるべきだ」
クロムは淡々とした口調だったがどことなく力のない様子も見せる。ルフレには真意が透けて見えた。
「それで君は本当にいいのか?」
「……」
「だから別の女性を愛せるのか?」
「…俺は妻を娶るつもりはない」
「それは…!」
「イーリスにはリズがいる。あいつは結婚もするだろうし子も出来るだろう。そうなれば聖王の血は絶えない」
「…クロム」
「苗字には…幸せになってほしいんだ。我慢することもなく、笑えるようになってほしい。…それが俺の今の願いだ」
「今だって…今だって君は彼女を傷つけているじゃないか。そうやって距離を置いて、不安にさせて、悲しませている!…そう思わないのか?」
「……」
「クロム…!」
「苗字には、父も母もいる…血をわけた家族を…どうして俺が奪えるんだ?」
「…だけど…」
「捨てろと言うのは簡単だ。だが、その痛みを受けるのは苗字だ。…俺は親を早く亡くしている。そんな俺が、あいつに迫れるわけがない。俺が幸せにしてやるから、親兄弟を忘れろなんて。言っていいはずないだろう?」
「……」
「これでいい。…俺の気持ちは、あの指輪に込めた。後は苗字次第だ。捨てても、売ってしまうのも…な」
ルフレはしばらく返答を考えていたが、先にクロムがフレデリクを呼びつけてしまい、話は区切りをつけられてしまった。
部屋を出て、警護のために残ったフレデリクに別れを告げて、廊下を歩きながら、それでも、とルフレは長い間思案し続けた。
それが幸せであっていいはずはない。
名前は隠してはいたが、クロムへの思いは特別だろうし、クロムの方はもっとはっきりしている。
しかし、名前にとって帰郷と胸中のどちらがより幸福か、選べるのはクロムではなく名前自身なのだ。
何がより不幸なのかも、ルフレにだってわからない。
(本当にこれで…いいのか、クロム)
愛しい人の幸せを願うのは誰にだって出来る。だけど実現するのは何時だって当人だ。妻を迎えたルフレだからこそ、そう確信する。
そして何よりも半身と称してくれたクロムにだって幸せになってほしいのだ。
それでもルフレには現状を打破する一手が思いつかなかった。何故ならこの問題はクロムと名前の二人の間で解決すべきであり、他人が深く介入するのに気が引けた。
クロムはもう指針を決めてしまった。ならば、名前自身がクロムとぶつからねばならない。あの、他人と仕切りを付けたがる独特の美徳に生きる少女に、果たしてそんな大胆なことが出来るのか。
ルフレには不安を巡らせることしか出来なかった。
やっぱり直接話した方がいいよ、と、ルフレに見放されて、名前は酷くショックを受けて部屋に閉じこもった。焦りと不安が胸の中で踊り、ぐちゃぐちゃと心の平穏を汚していく。
出来ればルフレに場に入ってほしかった。二人で話をすることはどうしても避けたい。
ルフレは名前の都合の良い解釈をしてくれたが、自惚れを許せない名前はそう思えなかった。裏がある、と聞かされればマイナス面を連想するのが定石だ。だからこそ両者信頼の厚いルフレに間に入ってもらえればどんなに安心したか。
だが頼みの綱を引きちぎられた以上、いよいよ名前自身でどうにかしなければならない。
クロムが傭兵団の団長として戻る一日。それがラストチャンスだ。