第一章 ゲロ以下の出会い
What your name
夢の扉
「夢の扉の先には貴女を満たす欲望と憧れが広がっていることでしょう。」
いいえ、ただの私の自己満足夢小説です。
長編、短編集、チャットなんでもありきで、JOJOと銀魂中心にやって行きます。
誰得かわかりませんがいつしかオリジナルのファンタジー夢小説を書きたいと目論んでいます
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名前はようやく家に着けば、荷物をテーブルの上に置いてすぐさま台所に向かう。
冷蔵庫を開けて、結局あの商店街で買い込んだ冷凍牛肉を取り出して電子レンジにぶち込む。
暫くするとチンッという甲高い機械音共に蓋を開けて解凍された生肉を取り出す。
その取り出したものを麻の布で包んで思いっきり捻りあげて器に牛肉の血を絞り出した。
「おい、何をしている」
「あの…、貴方は血ならなんでもいいんですか?」
「…なんだ?怖くなったのか?私に血を奪われるのが」
DIOは血に満たされた器を足でつつく。
「あんなに自信満々に断言した私がこんな事言うのは無責任だと思いますが…その…まだ」
「…まったくだな。」
名前の発言の意思が思いのほか上っ面だけであった事に呆れを隠しきれなかったDIOだが、おもむろに血で満たされた器を自分に寄せてそれを吸収する。
不思議な事に、飲むのではなく足から吸収されてみるみる内に減っていく血を名前は目を丸くしながらみつめた。
「…フン、家畜の血も人間の血も大して変わらんな。」
それは皮肉なのか、人間の血でもなくても大丈夫だと言いたかったのか名前には分からなかったが、とりあえず問題は解決出来た事に安心する。
するとDIOがテーブルの上に置かれている例のネックレスが入った袋に目を止めて目線で指を指す。
「ところで女。あれは何だ。帰り際大切そうに抱えていたが」
「あ、あれは…」
手を拭いていたタオルを投げ出していそいそとテーブルにあるネックレスの箱を取り出す。
こうして手に持って眺めるのは初めてで、感動しつつも腫れ物に触るようにして優しく優しく手に取る。
それをDIOはなんとも不思議そうに眺めていたが何を感じたのか、少し焦った様にして名前の持っていたネックレスを奪い撮ろうとする。
しかし名前はその感じをいち早く察知し、すぐさま持っていたネックレスを引っ込めて隠した。
「何するんですか!傷がついたら…」
「チッ…」
「…」
言葉を詰まらせた名前は、ネックレスの紅い宝石とDIOの現実味のない紅い瞳を見比べた。
両者とても良く似ている赤で、最もお似合いな身に付けるべき者だと感じた。
自分には確かに似合わない物。やはりこういう物は似合う人に付けてもらうべきなのだろうかと名前は密かに葛藤していた。
(ただ飾るよりは…)
「何だ…」
名前はゆっくりと隠していたネックレスを前に出して恐る恐るDIOの首に掛けようとする。
しかし、鷹の体にネックレスは馴染むものなのかと考えたが、何だか欲しそうにしていたので取り敢えずと近づく。
近寄るなと物凄く警戒と威嚇をされるかと名前は思ったがDIOは伸びてくる手に特に敵意を向けることなくただ黙ってそっぽを向いていた。
「よ、よしと…うん…意外と似合う…」
「当たり前だろう…。フム…コレは…」
またお得意の自画自賛かと思いきやDIOはネックレスを少し翼で浮かせてそれをまじまじと見つめていた。
暫くそうしていたかと思いきや、いつもより邪悪な表情を見せて名前に近づく。
「な、なんですか…」
「フン…女。貴様、名はなんだ」
「え、名前…ですけど…」
「そうか…」と呟いたかと思えば、DIOが飛びついてくると同時にその体が突如淡い光を放った。
その勢いと驚きに名前は思わず腕で顔を覆い隠した。
「…?」
来るはずであった衝撃は来ずに、来たのはそっと誰かに顔を覆っていた手を捕まれた事だった。
そっと目を開けると目の前には見たことも無い程に美しいと言うべきか…そんな名前が見たことも無い綺麗な大柄の男が立っていた。
一瞬恐怖が襲ったが、その目はあの鷹そのもので首にはあのネックレスがチラついている。そして、明らかに日本のものでは無い艶のあるブロンドの髪は、鷹の飾り羽と同じ色。
信じたくは無かったがその人物が鷹であった者だと名前はグルグルと回る思考の中で理解した。
魔法が解けた美女と野獣の野獣のようである。
「ならば名前。…貴様にしては良くやったな。」
「…ぇ」
チカチカと部屋の電気が怪しく点滅する。
「…なんだ?見惚れているのか?」
DIOは何故か勝ち誇った様な表情を見せ、名前に言わゆる顎クイをし固定をする。
名前は暫く固まっていたが現状を理解し、慌てて振りほどき距離を取る。
その時、恥ずかしさのあまり変な強がりがつい出てしまう。
「!な、なわけ!そんなハートマークがついた変なベルトしてる黒ノースリーブインナーと金色ズボンをした奴なんか!」
咄嗟の発言で自分でもよく分からない悪口にも似た悪態をつくが、それに負けじとDIOも殺気立たせる。
「何だと?」
一触即発な雰囲気になりかけたが、静寂後の名前の笑い声で制裁が加えられる。
「…何が可笑しい」
「いや…なんか、変わらないんだなって…」
DIOはその言葉に相変わらずな表情をしつつ?を浮かべていたが名前は気の抜けたような感覚に陥りその場でへたり込む。
DIOはと言えば壁にもたれかかって腕を組みながら綺麗な顔を歪ませて名前を見下ろしていた。
「でも…こんな不思議な事もあるんですね…。人の姿になれるなら先に言ってくださいよ」
「フンッ!この体になれるなら最初からしている。誰が好き好んであんなチンチクリンな体になるか。」
「それって…」
名前の目線がネックレスに向けられるのを確認したDIOはニヤつきながらソファーにどかりと座って、余程気分が良くなったのか珍しく饒舌に話し始めた。
「貴様が買ってきたと言うこのネックレスはどうやら不思議な力があるらしい」
「どんなですか…?骨董品店でただ売ってた物なのに…」
「さァな…。ただ一つだけ分かるとすれば、このネックレスがあれば私は本来の姿にもなれて力も僅かながらだが蘇る」
「もとの鷹の姿にも戻れるんですか」
「そういう事だろうな」と吐き捨てたDIOはいつも以上に満足そうに寝室に戻ろうとソファーから立ち上がる。
しかし、ドアの前で何故か立ち止まり数秒黙ったあと、名前の方を向かないで首だけ少し横に向けてボソリと何かを呟く。
「お前はこの私に無礼を言いつつも、使える時は使えるようだな。…気に入ったぞ。少しだけ褒めてやる」
名前の返事を待たずしてDIOは相変わらずと言ったように、ふてぶてしそうに寝室に入って行った。
「承太郎さん以外であんな背の人初めて見たなぁ…」
どうやらDIOの呟きは名前には聞こえていなかったようだが。
名前は今日は色んな事件があったなと思い耽りながら入浴と、少し遅めの夕食を済ませて今ではもう慣れ始めたソファーのベッドに横になって眠りにつく。
明日からはいよいよ仕事だと気合を入れながら夢に堕ちた。
「なんだかなぁ…」なんて頬杖を付きながらボヤく名前は、仕事帰りに通りがかった公園で夕日の眺めの良さで立ち寄っていた。
なんだかなぁというボヤキの理由は昨日の出来事からDIOとの距離がすこし縮まったことに理由があった。
朝起こしてくれたり、無言ではあったが名前が家を出る時には見送ってくれたりと、変わりすぎて名前は少しながら嬉しさと困惑の狭間にいた。
困惑というよりは名前の中では慣れていないという感じだが。
良い大人が一人静まり返った公園で何してるんだろうと笑えてくるが、この環境が心地よくつい長居してしまっていた。
そこに水を差すように頭上から今ではもう聞き慣れた声が聞こえてくる。
「こんな所で何をしている。」
「!あぁ…貴方ですか」
近くの木の上から聞こえ、振り向くと案の定DIOが鷹の姿になって木の枝に止まっていた。
その首には、あのネックレスが掛けられている。
「あ、鷹の姿なんですね」
「…外に出る時はこちらの方が皮肉にも便利なのでな。」
「…今更なんですけど、吸血鬼って日光駄目だったんじゃあ…」
「このネックレスさえはれば本来の姿になってもやけることは無い。まぁ…この姿であればネックレスなどなくとも大丈夫なのだがな。」
色々と実験をしたのかが伺える発言に名前は苦笑いをしつつもまた美しい夕日に目を移す。
再び暖かい色の夕日に微睡みながら思い耽っていると遠くから聞き覚えのある元気な声が聞こえてそちらを向く。
しかし、元気と言ってもどうやら様子がおかしく、なにか慌てふためき切羽詰まったような荒々しい雰囲気だった。
「名前さん!少しいいっスか」
「仗助君?どうしたの?そんな慌てて」
息を荒くした仗助が何か焦った様子で名前に駆けつける。
「あの、今調べてる事があって、」
「う、うん」
「名前さんって亀ゆうデパートで働いてるじゃないっスか。そこに吉良吉影って人居ません?」
「吉良さんがどうかしたの?」
仗助から思いもよらぬ人物の名前がでて名前は驚きつつもある重要な事を思い出す。
それは、あの滅多に休まない吉良がここ最近全くもって会社に顔を出さない事で、しかも風の噂では行方不明になったとか聞いたが名前は信じていなかった。
「名前さんありがとうございましたっス!」
そう言って風のように去っていく仗助の背を見つめていると、上から「何なんだあの妙な髪型をした奴は」と言う言葉に名前は顔を青くしながら
「それ、本人の前で絶対に言わないでくださいね…」
と忠告にも似た言葉をかけるが、お決まりのようにDIOは鼻で笑うだけだった。
「そろそろ帰りましょうか…えっと」
「DIOだ」
「え、あ…DIO、さん」
「貴様…今更にも程があるぞ。」
「それは…すみません…。でもなんだかんだでお迎えとかしてくれるんですね!帰りましょうか〜」
「調子に乗るなよ女」というDIOの怒りの言葉は名前にギリギリ届かず虚しく夕焼けに溶けるだけだった…。