第一章 ゲロ以下の出会い
What your name
夢の扉
「夢の扉の先には貴女を満たす欲望と憧れが広がっていることでしょう。」
いいえ、ただの私の自己満足夢小説です。
長編、短編集、チャットなんでもありきで、JOJOと銀魂中心にやって行きます。
誰得かわかりませんがいつしかオリジナルのファンタジー夢小説を書きたいと目論んでいます
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名前は途方もなく杜王町を歩き回った。
街はあんな事件が相次いでいたのに、あたかも何も無かったようにいつも通り賑わっていた。
そんな中を気晴らしに商店街へ入ればチラッと視界に映った精肉店に目を留める。
しかし、名前は動物の血をあのプライドの塊とも言うべきDIOが飲むと言うのか…。「このDIOに家畜の血を飲めと?」等と言うのでは…と思い小さく首を振ってそのまま通り過ぎる。
またもう少し進んで行くと骨董品店の前に通り掛かり見たことがある物を見つけて足が止まった。
「あ…」
その物が会社の帰り際にいつの日か見つめていたあのネックレスだということに気づきハッと辺りをよく見渡すと名前が良く通る帰り道だった。
ここに至るまで自分はいかに無心だったのかを少し怯えつつ、例の骨董品店にせっかくだからと入る事を決める。
名前はガラスの向こうのネックレスを眺めながら骨董品店に入った。
中に入れば、古びた様なそれでもって優しく落ち着く様な匂いが鼻をつつく。
中には色々なアンティークな物から少しばかり怪しさ満点な物まで様々。
そして例のネックレスは目と鼻の先で値札と共に赤く煌めいていた。
しかし、その値札には思ったより値が張っていた数字が書かれており、思わず唸ってしまう。
(うわー…このネックレス意外としてた…)
シンプルな見た目からは少し驚くような値段。この質素さと宝石が値が張る理由なのか。だからと言って何故か諦めることも出来ず…暫く考えた後「よし…」と小さく呟き、、、
「買ってしまった……。」
少し高価そうな入れ物を包んだ袋を宙にかざしながらじっくりと見つめる。
しかし、その目は期待や喜び、満足の目線ではなく、これで良いのか、こんな高い物を衝動買いしてしまった後悔の念といった眼差しを向け、名前は溜息をつく。おまけに日はどっぷりと既に暮れていて名前の溜息は増える一方だった。
ついDIOの姿が脳裏を過ぎり、あの存在のせいで……などと思ってしまっていた。
やがて暗い夜道を照らす街頭は少なくなっていき、都会の夜の不気味さが徐々に名前を侵食していく。
(こういう物を持ちながら人気の少ない所を通ってる状況ってあまり良くないような……)
名前は片手にぶら下がっている見るからに金目なものを見つめる。
そして不幸な事に、ドラマやアニメでよく見るようなあんな展開になるのは数えるよりも速くにやって来た。
向かいの道から誰がどう見てもヤンチャをそこら辺でしている20歳前半の男達3人がガヤガヤしながら名前と通り過ぎようとしていた。
名前は極力目を合わせないようにその男達を見ないものとして華麗に躱したつもりだったのだが、
「ン?おーおー、君こんな夜に一人で徘徊かい?え?」
神は居ないのかと絶望感を久々に抱いた気がした。
だが、名前は話しかけられてもなお、目線だけは決して合わさなかった。
「危ないからやめといた方が良いぜ?」
「…おい、これ見てみろよ。お姉さん、なーんか高そうなもん持ってんじゃん」
「これは……」
3人の中で1番お金にがめつそうな男がやはりと言うべきか、名前の持っている手提げ袋を指さした。
「ねェ、お姉さん。俺達に怖い事されたくなかったらそれ…頂戴」
男は名前を子供の様に扱い嘲笑いながら見下していた。
名前は何故かそれに無性に腹が立った。
何故毎日ちゃんと働いて渋い貯金から叩いてまで買った苦労の結晶とも言うべきこれを、こんな下賎な輩にやらねばならんのか。あと、+αでもう見くだされるのはDIOだけで十分だと。
「馬鹿にしないで。そこら辺のか弱い女じゃないんでッ。」
頭が真っ白になりつつも名前は一時のスッキリとした感覚を得るが、同時にやってしまったという事実に目を背けたくなった。
男達は数秒間固まった後、お決まりの大笑いをかまして見せる。
「へぇー!君、キモ座ってんじゃん。」
「言うよねぇ~。ここには俺達以外誰もいないんだけどなぁー」
「ッ……」
名前はあたかも自分が戦える強い女だから掛かってこいよ的な事として男達に伝わったのだと理解し、変な汗が滲み出る。
後ずさりしつつ走って逃げるチャンスを伺う。しかし、向こうもそれを理解したらしく、変な笑みを浮かべながらジリジリと攻めよってくる。
その圧迫感から速く逃れたくて一か八かで挑んだ逃走は男に強く掴まれて無念に終わった。
男の煽り文句や嘲笑、息遣いがすごく気持ち悪くて不快で仕方なかった。
名前は今にも暴行を加えられそうになり、時期に来るであろう激痛に腹を括って目を瞑る。
その時に、来もしない助けを求めようとしたが名前の頭の中でその助けを求める対象が何故か、仗助でも無ければ承太郎でもない会って間もないあのDIOだった。
何でだと思い名前はその驚きの衝撃で瞑っていた目を開ける。
すると、目の前の男が自分を殴りかけていた拳をダラりと力なく体諸共落ちていく。
壁のようになっていた男の体が落ちる垂れ幕の様に退き、他の男達までもが倒れている事に気づく。
「え……」
「フンッ……人間風情が…。帰りが遅いと思えばコレか。」
そこには気絶しているであろう男2人が積み重なった上に佇むDIOの姿があった。
「何で……」
「……気まぐれだ。」
名前は開いた口が塞がらないでいた。
なんせあのDIoが、頼まれていなければ浸しくもなく、お前がどうなろうが知ったことではないなどと豪語していたのに…と。
餌を求める鯉のように口を開けていると、DIOはうっとおしそうに目を細め、口を開く。
「で、今日一日中こんな時間までほっつき歩いて何か思い付いたのか?」
DIOは若干の皮肉を交えながらも名前の傍にある木に飛び乗った。
名前は俯きながら小さく首を振る。
するとDIOはいつもの様に鼻で笑って「だろうな。」と言うだけだった。
名前にはその言葉がいつも以上に心に刺さり、考え込んだ。
そしてある事を決意し影に落としていた顔を月夜に照らし、紅い目を光らせるDIOに向き直る。
「私…私の血でどうですか。」
「…ほう……」
吸血という形で血を奪われると死んでしまうのだろうか。
現に数名死者が出ているではないか。自分もその人達のように血を吸われてシオシオになって死ぬのだろうか、と名前は考える。
「その場合…私も死ぬんですか?」
「…何故良い道具を殺さねばならないのだ。」
じっと名前はDIOを見つめる。
半殺しにでもするのかと、そんな目線を送るがある事に気づき一転する。
よく見るとDIOの体が昨日よりも萎んでいると言うべきか、くたびれた感じが少しだけ滲み出ており、毛並みも悪い様でもあった。
極端な話、出会った頃よりも元気が無さそうな雰囲気がしていた。
別に名前は鳥について詳しいとかではなかったが、素人目でもそれなりに分かる程には変
わっている。
「あの、もしかしてですけど…。あの約束を守っててくれたり…」
「…うるさい黙れ。」
ムスッとした表情でそっぽを向くDIOが何だか姿も相まって少し可愛いというか小さく見えるようでつい気が緩む。
だからという訳では無いがなんだか距離が近ずいた様な気がして口がでしゃばってしまう。
「へぇー…、大人しくしててくれたんですかァ…」
意外や意外という目線を送るとDIOは青筋が入ったのか食いしばりながら今までにない程に睨みつける。
「調子に乗るなよ…」
「私を殺して早速血を吸うんですか?いいんですか?貴方みたいな人匿ってあげられるの私だけだと思うんですけどねー」
「貴様ァ…黙っていればヌケヌケと…。第一別に約束なんてものをした覚えは無いし守ったとかそんな事も知らん!それに色々と私へのデメリットが大きいからであって」
「ハイハイ。帰りますよー」
「ッおい!聞いているのか!?」
先程までの険悪なムードが嘘のように2人はある意味の賑やかさを保ちながら帰路につくのであった。
その後ろではグチグチといつもより無駄に口数が増えたDIOが、何だかんだで名前に鳥特有の地上の苦手さでついて行く。
そんなDIOの後ろ姿はなんとも愛らしいものであったとか無いとか…。
「そう言えば貴様。先程の礼の言葉はないのか。このDIOが貴様ごときを助けてやったのだぞ。」
「ありがとうございました」
「フン、貴様も精々私の為に…、おいッだから置いて行くな!」