短編集まとめ
グランドグラフシステム、というものが導入されると風の噂で聞いたのは、新年の忙しい時期だった。
どうやらマスターが好きなサーヴァント七騎をグランドクラスにできるらしい。そんな馬鹿なと思いはしたが、カルデアの記録を見る限り冠位サーヴァントが冠位を返上しているから、理論上可能なのかもしれない、と思い直した。
マスターが七騎選ぶとして、その中に自分が入っているであろうことは想像に難くない。
「あ、はじめちゃん!いたいた!…て私の部屋だったわ」
そのような事を考えていれば僕のマスター……なのはちゃんが部屋まで帰ってきた。僕を見つけてぱっと顔が明るくなった彼女は、走ってきて隣に座った。
「僕のこと探してたの?」
「急用ってわけじゃないんだけど」
もう噂で聞いたかもだけど、グランドシステムのことで、と付け加えた。
先にグランドにしたいサーヴァントに声でも掛けているんだろうか。
それなら自分に声がかかるのは順当か、と思い、続きを促した。
ま、僕がグランドとか柄じゃないけど、ここまで強くされてれば、ねぇ。
「分かってそうだけど私はお前をグランドにしようと思ってて、それでね?」
私考えたの、と言って彼女は話を続ける。
「別にグランドって最大七騎選べるってだけでさ、別に七騎選ばなくてもいいわけじゃん?」
「…それもそうだけど」
戦力として増強するためにグランドにする、という目的ならばできれば多い方が良いのではないか?というのは僕の意見。
「グランドにするにも条件があってさぁ、うちだとセイバーが多くなっちゃうんだよね」
と言って条件を話してくれた。なるほどね、確かにグランドセイバーを半数以上抱えるなら、考える余地があるかも。というか確かに、それなら…僕だけがグランドセイバーじゃないか。彼女はセイバーが好きだから、順当なのかも。……ちょっと、残念だけどね。そうも言ってられないでしょうし。
「だからね、もういっそグランドサーヴァントはお前だけでいいんじゃないかって思って〜」
ま、君が嫌じゃなきゃ、だけどね。と言いながら僕の顔を覗き見た。
「……自分が何言ってるか分かってる?」
驚いてそう返すことしか出来ず。彼女は何かと僕に特別なものを与えたがるが、ここまで大きいと、その…何も返せない、と思ってしまうのは性だろうか。
それを言ったところで、‘私がやりたいからやってるだけだから気にするんじゃないぞ’って言いそうではあるんだけど。
「?何が?私は君だけを私のグランドサーヴァントにしようとしているだけだけど、なんか変なこと言ってるっけ」
そういえばそうだ、彼女は一切その気がない時はこういうことを平気で言ってのける人間だった。僕の方がなんか勝手に意識してるみたいじゃないか。…まぁ実際今はそんな感じなんだけど!
「変なことは言ってないけど…」
「……?…………あ。」
どうやら彼女は自分が小っ恥ずかしいことを言ったことに気がついたようで、うわ、恥ずかし、と言いながら顔を赤くして手で覆った。こういう所が可愛いんだよな。
「今言ったことは〜えっと忘れなくていいんだけど忘れて欲しくてその、でも事実だからァ〜〜〜 あっそう嫌じゃないかどうか!嫌じゃないかどうかですよ」
だいぶ挙動不審になったな。ここで変に溜めて意地悪するとまた今度は拗ねるから、まだ見ておきたいけど辞めておこう。
「嫌か嫌じゃないか、で言われたら、嫌じゃないよ」
むしろ嬉しいくらい、と言って笑うと、それを聞いた彼女は安堵した様子でふぅ、と息を吐いた。
「断られたらどうしようかと…だってお前ってグランドって柄じゃないし」
やっぱり彼女もそう思っていたのか。
「まあ、良くしてもらってるし、期待されてるならそれには応えなきゃでしょ、マスターちゃん」
そう言うと彼女は、
「じゃあよろしくね!はじめちゃん!」
と嬉しそうに言った。
この顔を見ていると、いつかこんな日々が終わって、普通の女の子に戻って欲しい、と思うけど。彼女が望む限りは一緒に居よう、と改めて思い直した。
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