いぬこは小さな会社で働く普通の会社員。
生活できるだけの給料、夕方には仕事が終わる恵まれた労働環境、平凡ながら穏やかな日々を過ごしていた。

明日は休みだからバーにでも寄って帰ろうかな…そう思いバーに向かった。




「…臨時休業。」



ペラペラの紙に手書きで臨時休業の文字。
いつもそこにあるものが無いだけでこんなにも人は落胆してしまう。
とはいえやっていないものは仕方がないのだ。


「コンビニで何か買って帰ろっ。」


お洒落な雰囲気で飲みたかったけれど、今日は家飲みでゆっくり楽しもう。
そう思い交差点の先にあるコンビニへ足を向かわせる。
店員さんのいらっしゃいませの声を背中に受けながら酒類コーナーへ向かう。


酒類コーナーには新商品やオーソドックスな商品など、選びきれないほどの酒がずらりと並んでいる。



「あ！下の方においしそうなのがある！」



スカートの裾を足の間に入れてかがみ込み、目ぼしい缶ビールやチューハイをカゴに入れる。



「明日の分も買っておこうかな〜なんて、買い過ぎかな…？」




少し重みを増したカゴを両手で持ち、勢いよく立ち上がった。


その瞬間





ドンッ……





先程まで無かった大きな壁のようなものにぶつかった。
当たりどころが悪かったのかだんだん意識が遠のいていく。
なんだろう、金髪とサングラスのようなものが見える気がする。




「……気絶…全く面倒な…」




そんな低い声が聴こえ、視界は完全に暗転しふわりと良い匂いがしたところで完全に意識を失ってしまった。