サボ/だって君が寂しそうで
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「なぁカタル!俺のことキライって言ってみてくれ」
「キモイ」
「あっ!?」
お得意の帽子のつばをぐっと引っ張ってサボの顔を隠し、そのまま力任せに地面に押し付けた。サボは力の方向に抵抗することなく従い、ずしゃりと地面に帽子ごとめり込む。
周りからワハハハと沸き立つ笑い声。またやってんぞ、なんて見世物にされている。
「ん~一文字違いとはいえこれもまた破壊力」
「サボくん。カタルならもう行ったよ」
「ん。…そうか」
帽子で隠れた顔を直そうともしないまま、腕を組んでサボが何か言っている。その近くに膝を抱えて座ったコアラがそんなサボの言葉を拾ってあげる。
いつもの流れだ。特に気にもしない様子で立ち去る私も、いつものこと。
「……」
キライ、って言ってくれ。か。
サボにしてはちょっと、意地悪すぎる気がする。
―私が革命軍に入ってすぐの頃。
なかなか打ち解けられなくて、自分の居場所がほんとにここでいいのか、そんなことを考え始めたころだった。
サボが私にちょっかいを出すようになったのは。
皆の前でわざとらしくボケをかましたり、私に怒られるのがわかっててやらかしてみたり。
さっきみたいに私に冗談を言っては突っぱねられて、周りに笑われて。まるで私が、その笑いの輪の中心にいるような錯覚を作る。
正直それがきっかけでだんだん周りと話せるようにもなってきた。
総長の相手毎回大変だろう、とか。あんまりしつこいなら私に相談しなよ?とか。
皆優しく声をかけて気にかけてくれる。 きっかけは全部、サボのおかげ。
そんな私に、サボに対して、キライだと言えという。
「泣いてんのか?」
「!」
驚きと共に、本当に出始めていた涙がすっと引っ込んだ。
ほんとにこの人は。超人なのは別にいいけどデリカシーがない気がする。
「…泣いてない」
「ん。ほんとだ。てっきり泣いてんのかと思ったが気のせいだったか」
「……それはそれで、泣いてんのか?ってド直球に話しかけてくんのはどうかと思うけど」
「あ。やべ。またコアラにデリカシーないって言われちまう」
む、と唇が自然にとんがる。
またコアラ。わかってはいるけどサボの近くにはいつだってコアラ。
「…ほんと、デリカシーないよ」
「……なんだ。今度は怒ってんのか」
「誰のせい!」
「俺なのか?」
パン、と目の前のむかつく長身をおもいきり叩いてやる。びくともせず、反動で揺れるだけの大きな体。
俺のどこが悪いんだ?なんて目をぱちくりとさせてこっちを見ている。むかつく。
―でも。デリカシーがなくても。鈍感でも。
すごく優しい人だって知ってる。
ほんとは私の渾身のビンタでも微動だにしないたくましい体。私がちょっと帽子のつばを押さえただけで地面に沈むわけがない。
そもそも私の背でサボの身長に並べるわけがないから、あの時だって私に合わせてかがんでくれていたってことだ。
私が無言で睨んでいたのを、サボはどうやら本当にまずいと思い始めたようだった。
焦ったように苦笑いをして、「そんな怒るなって」なんて私のご機嫌をとろうとしてくるのがわかる。
「あ、わかった。あのキライって言え、ってのがまずかったか」
「!」
サボにしては、珍しくこういうことなのに鋭い。
「あそこでキライ!なんてはっきり言ったら、お前の立場が悪くなるとか思ったか?」
「…って全然違うし」
「なんだ違うのか。まぁ確かに、キモイって即答だったしな。…でもお前、好きって言え、の方が困っただろ?」
「…っ!!」
…この男は!
核心をそんな真顔でつくんじゃない!
「っそんなの…いうわけないでしょ!ばか!!」
「うお。怒って泣いてる。…わ、」
サボのスカーフをぐっと手前に引く。引かれるがままサボの長い体がぐっと折れ曲がって、私に向かって頭が下りてくる。
今度こそいけ。躊躇いなく振り切れ。
「ッい、」
ばちーん!!
さすがに怒った私は躊躇いなくサボの頬にビンタを振り切ってやった。
大きな乾いた音がたって、サボが「いってぇ!」なんて言いながら長い体をかくりと折る。
そして大股でそこを去りながら、恥ずかしいのと、怒りとで目じりに浮かんだ涙に誓った。
今度は私がサボに仕返ししてやる、と。
ふふっと自分でもよくわからない笑顔がこぼれた。悔しいけど、こんな気持ちも、サボの。
「キモイ」
「あっ!?」
お得意の帽子のつばをぐっと引っ張ってサボの顔を隠し、そのまま力任せに地面に押し付けた。サボは力の方向に抵抗することなく従い、ずしゃりと地面に帽子ごとめり込む。
周りからワハハハと沸き立つ笑い声。またやってんぞ、なんて見世物にされている。
「ん~一文字違いとはいえこれもまた破壊力」
「サボくん。カタルならもう行ったよ」
「ん。…そうか」
帽子で隠れた顔を直そうともしないまま、腕を組んでサボが何か言っている。その近くに膝を抱えて座ったコアラがそんなサボの言葉を拾ってあげる。
いつもの流れだ。特に気にもしない様子で立ち去る私も、いつものこと。
「……」
キライ、って言ってくれ。か。
サボにしてはちょっと、意地悪すぎる気がする。
―私が革命軍に入ってすぐの頃。
なかなか打ち解けられなくて、自分の居場所がほんとにここでいいのか、そんなことを考え始めたころだった。
サボが私にちょっかいを出すようになったのは。
皆の前でわざとらしくボケをかましたり、私に怒られるのがわかっててやらかしてみたり。
さっきみたいに私に冗談を言っては突っぱねられて、周りに笑われて。まるで私が、その笑いの輪の中心にいるような錯覚を作る。
正直それがきっかけでだんだん周りと話せるようにもなってきた。
総長の相手毎回大変だろう、とか。あんまりしつこいなら私に相談しなよ?とか。
皆優しく声をかけて気にかけてくれる。 きっかけは全部、サボのおかげ。
そんな私に、サボに対して、キライだと言えという。
「泣いてんのか?」
「!」
驚きと共に、本当に出始めていた涙がすっと引っ込んだ。
ほんとにこの人は。超人なのは別にいいけどデリカシーがない気がする。
「…泣いてない」
「ん。ほんとだ。てっきり泣いてんのかと思ったが気のせいだったか」
「……それはそれで、泣いてんのか?ってド直球に話しかけてくんのはどうかと思うけど」
「あ。やべ。またコアラにデリカシーないって言われちまう」
む、と唇が自然にとんがる。
またコアラ。わかってはいるけどサボの近くにはいつだってコアラ。
「…ほんと、デリカシーないよ」
「……なんだ。今度は怒ってんのか」
「誰のせい!」
「俺なのか?」
パン、と目の前のむかつく長身をおもいきり叩いてやる。びくともせず、反動で揺れるだけの大きな体。
俺のどこが悪いんだ?なんて目をぱちくりとさせてこっちを見ている。むかつく。
―でも。デリカシーがなくても。鈍感でも。
すごく優しい人だって知ってる。
ほんとは私の渾身のビンタでも微動だにしないたくましい体。私がちょっと帽子のつばを押さえただけで地面に沈むわけがない。
そもそも私の背でサボの身長に並べるわけがないから、あの時だって私に合わせてかがんでくれていたってことだ。
私が無言で睨んでいたのを、サボはどうやら本当にまずいと思い始めたようだった。
焦ったように苦笑いをして、「そんな怒るなって」なんて私のご機嫌をとろうとしてくるのがわかる。
「あ、わかった。あのキライって言え、ってのがまずかったか」
「!」
サボにしては、珍しくこういうことなのに鋭い。
「あそこでキライ!なんてはっきり言ったら、お前の立場が悪くなるとか思ったか?」
「…って全然違うし」
「なんだ違うのか。まぁ確かに、キモイって即答だったしな。…でもお前、好きって言え、の方が困っただろ?」
「…っ!!」
…この男は!
核心をそんな真顔でつくんじゃない!
「っそんなの…いうわけないでしょ!ばか!!」
「うお。怒って泣いてる。…わ、」
サボのスカーフをぐっと手前に引く。引かれるがままサボの長い体がぐっと折れ曲がって、私に向かって頭が下りてくる。
今度こそいけ。躊躇いなく振り切れ。
「ッい、」
ばちーん!!
さすがに怒った私は躊躇いなくサボの頬にビンタを振り切ってやった。
大きな乾いた音がたって、サボが「いってぇ!」なんて言いながら長い体をかくりと折る。
そして大股でそこを去りながら、恥ずかしいのと、怒りとで目じりに浮かんだ涙に誓った。
今度は私がサボに仕返ししてやる、と。
ふふっと自分でもよくわからない笑顔がこぼれた。悔しいけど、こんな気持ちも、サボの。
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