ロー/心のおくすり
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とある海賊団のとある一室。空調、室温とよく整備されたその部屋は、私とローさんしかほぼ立ち入らない小さな部屋で、主に薬剤を管理するのに使用している。
「4、5…うーんもうちょっとあった方がいいかな」
オペオペの実の能力を持つローさんは、ごくたまにだけど一般の医療や手術も行うこともある。その時に使用する薬剤はだいたい私が管理していて、今日もその手伝いの一環で一日の最後に薬剤の数を点検しているところだ。
そんなローさんは最近なかなか帰ってくるのが遅い。姿を見かけることも時々しかなくて、だけどこうして調剤室を点検していると薬の数は減っているから、夜には帰ってきているのだろう。
…夜だけでもいいから一目、姿だけでも見たい。そんな浅はかな願いで、本来ならさほど時間がかからない薬剤の点検に時間をかけてしまっている自分がいる。
「……」
鎮痛剤の数を数える。……8、9…。
……――――。
「…カタル。おい、カタル」
「はっ」
―バッと顔をあげたところで、自分が突っ伏してしまっていたことに気づく。少し遅れて、先ほどまで調剤室でうたた寝してしまっていたことに気づいて、焦って後ろを振り返った。
「あっ…ローさん」
そこにはずっと会いたかったローさんがいて。
久しぶりに見たローさんの姿なのに、私はというとうたた寝を見られてしまってなんだか申し訳なさと同時に気恥ずかしく、真正面から顔を合わせられない。
「あ、えと…おかえりなさい」
「…あぁ。……珍しいな。お前がうたた寝なんて」
「ご、ごめんなさい」
かぁっと顔が赤くなるのを感じる。ローさんにじっと見られているのがわかって、叱られるんじゃないかと視線と体が縮こまる。
「……お前、ちゃんと休んでんのか」
「えっ?」
「こんなところで寝ちまうほど疲れてんじゃねぇのか。…薬はもういいから寝ろ」
そう言ってローさんはくるりと背を向けて調剤室の奥へと向かっていく。
普段から決して器用ではない彼の物言い。…だけど、タイミングとしてやはり怒られたような、愛想をつかされてしまったような気がして。
「あっ…ローさん!…その、ごめんなさい。今残りを確認したら、すぐ寝ますから」
彼に見切られたくない。もっと頑張らなきゃ。その一心で再び薬剤の確認に戻ろうとすると、アンプルを数えていた腕を掴まれて。
いつの間にか近くまで来ていたローさんが、険しい表情で立っていた。
「…おい、俺はもう寝ろって言ったんだ」
「う…」
睨まれているようでびくっと体が震えてしまう。それを見たローさんが、何か考えるような表情をして、「…悪い」と言いながら私の腕をそっと放した。
「…怯えさせたか。俺はただ、お前に無理してほしくねぇだけだ」
「あ……」
「……怒ってるわけじゃねぇんだ。お前が、ふらふらしながら薬数えてるから」
「え…ふらふら、してました?」
思い当たらないことを言われ、ローさんの方を向こうと机に肘をついて向きを変えようとしたところで、ぐらりと脳が揺れた。
突然視界が回転して、あ、と思った瞬間には目の前のローさんに体を抱き止められていた。
「っ、ほら、言わんこっちゃねぇ」
「あ……。ほんとだ、」
「お前は昔から無茶しすぎなんだ。……そんなに気つめなくても、お前が頑張ってることはちゃんとわかってる」
ぽん、ぽんとローさんに頭を撫でられる。
暖かい手がゆるゆると頭の上を行き来して、なんだかその温かさと、ローさんの言葉が嬉しくてほろりと涙腺が緩んだ。
つい涙を流してしまった私に、ローさんがぎょっと焦ったような表情をしている。
「っ、な、また俺は何か変なこと言ったか…!?」
「…い、いえ、……嬉しくて。…私、ローさんのお役に立ててましたか…?」
毎日帰りが遅いローさん。私のことよりローさんの方が働きすぎて心配だった。
何か手伝えることがもっとあればいいのに。私にできることは毎日薬剤を数えて常備を整えておくくらいしかできないと歯がゆい思いをしていたところだったから、思いがけぬ優しい言葉につい涙腺が緩んでしまった。
ローさんは、ぐすぐすと泣く私に困りながら、暖かい指で私の涙を何度も何度も拭ってくれた。
「当たり前だろう。お前が薬剤を数えてくれてるから、スムーズに補充できてるんだ。十分に助かってる」
「…よ、よかった。嬉しいです」
「おい、もう泣くな…」
おろおろとしながらも、私の頬をぬぐってくれる指はとても暖かい。
こんなに優しい人だって知ってたはずなのに、時々見せる怖い表情にうっと怖気づいてしまうのは私の悪いところだなぁ、と反省した。
「…嬉し涙です。ありがとうございます、ローさん」
「……、大丈夫ならいい」
「ローさんも、頑張りすぎですからちゃんと休んでくださいね…?」
にこっと笑いかけると、ローさんは言われてから気づいたような驚いた表情。
「…俺はいい」
「だめですよ!じゃあ私も寝ません」
「な、なんでそうなる」
「私だってローさんが心配だからです」
ローさんが私のことを心配してくれたように、私だってローさんのことが心配なんだ。
そう伝えると、ローさんはうっと何も言えないといった様子で、しばらくしてから観念したようにはぁ…とため息をついた。
「…わかったよ。今日はもう仕事はしねぇ」
「よかった…、」
「その代わり」
ほ、と胸を撫でおろしているところを、手首をローさんに掴まれてはっと目が合う。
いつの間にか鼻先が触れるほどの距離に彼がいて、吐息を感じるほどで。
「…夜はちゃんと、お前が俺の相手してくれるんだろうな」
「ふぇ、」
―…意味を一瞬で悟り、耳までかぁっと顔が熱くなる。
そんな私を見てローさんがふっと余裕な笑みをみせて、刺青が入った長い指ですらりと頬の輪郭を撫でられると、もう動けない。
…今夜休むというか、明日の昼間で強制的に休むことになりそうだと、彼に唇を塞がれながら心の中でひっそりと覚悟をするのだった…。
…翌日。ローを起こしに来たペポが、二人寄り添ってベッドでぐっすりと眠っている様子を見て、安心した様子でほろりと泣いていた。
(船長もカタルも、ずっと働きづめだったからちゃんと休んでて安心したよ~)
END.
「4、5…うーんもうちょっとあった方がいいかな」
オペオペの実の能力を持つローさんは、ごくたまにだけど一般の医療や手術も行うこともある。その時に使用する薬剤はだいたい私が管理していて、今日もその手伝いの一環で一日の最後に薬剤の数を点検しているところだ。
そんなローさんは最近なかなか帰ってくるのが遅い。姿を見かけることも時々しかなくて、だけどこうして調剤室を点検していると薬の数は減っているから、夜には帰ってきているのだろう。
…夜だけでもいいから一目、姿だけでも見たい。そんな浅はかな願いで、本来ならさほど時間がかからない薬剤の点検に時間をかけてしまっている自分がいる。
「……」
鎮痛剤の数を数える。……8、9…。
……――――。
「…カタル。おい、カタル」
「はっ」
―バッと顔をあげたところで、自分が突っ伏してしまっていたことに気づく。少し遅れて、先ほどまで調剤室でうたた寝してしまっていたことに気づいて、焦って後ろを振り返った。
「あっ…ローさん」
そこにはずっと会いたかったローさんがいて。
久しぶりに見たローさんの姿なのに、私はというとうたた寝を見られてしまってなんだか申し訳なさと同時に気恥ずかしく、真正面から顔を合わせられない。
「あ、えと…おかえりなさい」
「…あぁ。……珍しいな。お前がうたた寝なんて」
「ご、ごめんなさい」
かぁっと顔が赤くなるのを感じる。ローさんにじっと見られているのがわかって、叱られるんじゃないかと視線と体が縮こまる。
「……お前、ちゃんと休んでんのか」
「えっ?」
「こんなところで寝ちまうほど疲れてんじゃねぇのか。…薬はもういいから寝ろ」
そう言ってローさんはくるりと背を向けて調剤室の奥へと向かっていく。
普段から決して器用ではない彼の物言い。…だけど、タイミングとしてやはり怒られたような、愛想をつかされてしまったような気がして。
「あっ…ローさん!…その、ごめんなさい。今残りを確認したら、すぐ寝ますから」
彼に見切られたくない。もっと頑張らなきゃ。その一心で再び薬剤の確認に戻ろうとすると、アンプルを数えていた腕を掴まれて。
いつの間にか近くまで来ていたローさんが、険しい表情で立っていた。
「…おい、俺はもう寝ろって言ったんだ」
「う…」
睨まれているようでびくっと体が震えてしまう。それを見たローさんが、何か考えるような表情をして、「…悪い」と言いながら私の腕をそっと放した。
「…怯えさせたか。俺はただ、お前に無理してほしくねぇだけだ」
「あ……」
「……怒ってるわけじゃねぇんだ。お前が、ふらふらしながら薬数えてるから」
「え…ふらふら、してました?」
思い当たらないことを言われ、ローさんの方を向こうと机に肘をついて向きを変えようとしたところで、ぐらりと脳が揺れた。
突然視界が回転して、あ、と思った瞬間には目の前のローさんに体を抱き止められていた。
「っ、ほら、言わんこっちゃねぇ」
「あ……。ほんとだ、」
「お前は昔から無茶しすぎなんだ。……そんなに気つめなくても、お前が頑張ってることはちゃんとわかってる」
ぽん、ぽんとローさんに頭を撫でられる。
暖かい手がゆるゆると頭の上を行き来して、なんだかその温かさと、ローさんの言葉が嬉しくてほろりと涙腺が緩んだ。
つい涙を流してしまった私に、ローさんがぎょっと焦ったような表情をしている。
「っ、な、また俺は何か変なこと言ったか…!?」
「…い、いえ、……嬉しくて。…私、ローさんのお役に立ててましたか…?」
毎日帰りが遅いローさん。私のことよりローさんの方が働きすぎて心配だった。
何か手伝えることがもっとあればいいのに。私にできることは毎日薬剤を数えて常備を整えておくくらいしかできないと歯がゆい思いをしていたところだったから、思いがけぬ優しい言葉につい涙腺が緩んでしまった。
ローさんは、ぐすぐすと泣く私に困りながら、暖かい指で私の涙を何度も何度も拭ってくれた。
「当たり前だろう。お前が薬剤を数えてくれてるから、スムーズに補充できてるんだ。十分に助かってる」
「…よ、よかった。嬉しいです」
「おい、もう泣くな…」
おろおろとしながらも、私の頬をぬぐってくれる指はとても暖かい。
こんなに優しい人だって知ってたはずなのに、時々見せる怖い表情にうっと怖気づいてしまうのは私の悪いところだなぁ、と反省した。
「…嬉し涙です。ありがとうございます、ローさん」
「……、大丈夫ならいい」
「ローさんも、頑張りすぎですからちゃんと休んでくださいね…?」
にこっと笑いかけると、ローさんは言われてから気づいたような驚いた表情。
「…俺はいい」
「だめですよ!じゃあ私も寝ません」
「な、なんでそうなる」
「私だってローさんが心配だからです」
ローさんが私のことを心配してくれたように、私だってローさんのことが心配なんだ。
そう伝えると、ローさんはうっと何も言えないといった様子で、しばらくしてから観念したようにはぁ…とため息をついた。
「…わかったよ。今日はもう仕事はしねぇ」
「よかった…、」
「その代わり」
ほ、と胸を撫でおろしているところを、手首をローさんに掴まれてはっと目が合う。
いつの間にか鼻先が触れるほどの距離に彼がいて、吐息を感じるほどで。
「…夜はちゃんと、お前が俺の相手してくれるんだろうな」
「ふぇ、」
―…意味を一瞬で悟り、耳までかぁっと顔が熱くなる。
そんな私を見てローさんがふっと余裕な笑みをみせて、刺青が入った長い指ですらりと頬の輪郭を撫でられると、もう動けない。
…今夜休むというか、明日の昼間で強制的に休むことになりそうだと、彼に唇を塞がれながら心の中でひっそりと覚悟をするのだった…。
…翌日。ローを起こしに来たペポが、二人寄り添ってベッドでぐっすりと眠っている様子を見て、安心した様子でほろりと泣いていた。
(船長もカタルも、ずっと働きづめだったからちゃんと休んでて安心したよ~)
END.
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