即興SS

 街で不思議な石を見つけた。胡散臭い露天に並ぶ色とりどりの石。目だけで石を見ながら通り過ぎようと思ったが、露天商に声をかけられた。
「お兄さん」
 僕はちらりと彼の顔を見る。怪しげではあるものの意外にも誠実そうな瞳。僕は足を止めた。そしてその場に屈み石を眺めた。
「綺麗だろう」
 露天商は石を見ながら言う。確かに石はとても綺麗で僕は心惹かれていた。その中でも僕が気になったのは青い石だった。青の中に緑が混ざっている。露天商は僕の目線に気が付いたのか口を開いた。
「オパール。地球土産」
 露天商は白い手袋をした手で石にそっと触れる。
「地球って星、知ってるかい?」
 露天商は石から手を離すと人差し指を立ててくるくると回した。僕は頭の中に地球を思い浮かべる。
「田舎にある星ですよね。あの、海に囲まれた……」
 そう言いながらその石が地球に似ていることに気が付いた。
「いいところだよ。自然豊かでのんびりした星だ」
 僕は値段を尋ねると財布からお金を取り出して露天商に手渡した。オパールは小さな紙袋に包まれて渡された。
「今日は素敵なものを見つけたんです」
 僕はジララ様の部屋のソファに腰掛けて言った。今日買ってきたオパールを紙袋から取り出すと隣に座るジララ様の手のひらに乗せた。
「地球土産のオパールです」
 ジララ様はそれをもう片方の指で掴むと光にかざすように持ち上げた。
「僕、いつか地球に行ってみたいんです。昔本で読みました。海に囲まれた青い星はとても美しいって」
 ジララ様は様々な角度からオパールを見ると、僕の手のひらにそっと返した。そしてゆっくりと頷く。
「地球を見たことはあるか」
 僕は首を振る。
「青い、美しい星だ」
 ジララ様は記憶を辿るように言葉を紡いだ。地球を見たことがあるのだろう。僕は昔見た海の写真を思い浮かべる。文明の遅れた遠い遠い田舎の星。
「きっとお前は気に入るだろうな」
 ジララ様は僕を見てそう言った。綺麗な物に心惹かれてしまうのは、アサシンとしては致命的かもしれない。地球に見とれて目の前のことに集中できなくなってしまったら、それは欠点になる。だが僕はこの気持ちをなくしたいとは思わない。手のひらの上の小さな地球をそっと握る。
「いつか、見せてやりたいものだ」
 ジララ様が呟くように言った。そして僕の手のひらの隙間から見えるオパールに目を遣った。僕はジララ様の肩に頭をもたれさせた。「待ってます」と呟いて僕は再びオパールを見つめた。
3/7ページ
スキ