即興SS
昨日も、そして今日も雨が降っていた。天気予報によれば当分雨続きだそうだ。こんな梅雨真っ只中であろうがドロロはいつもと変わらずに家を出た。そして大きな葉っぱを傘代わりにして近所の森を歩く。これはパトロールではない。ただの散歩だった。ドロロは数日前森の中に気に入った場所を見つけ、毎日そこへ通っていた。雨が降っていようと向かいたいほど気に入っているのにはある理由があった。
ドロロは森の奥で自生している紫陽花を見つけたのだった。緑の中に周囲から浮くような紫色。その紫色に強く惹かれ、思った。ドロロはその紫陽花を見ているとジララ大尉を思い出すのだった。未だに彼に心を囚われ続けていることが自分の心の弱さなのだろうかとも思う。綺麗さっぱり忘れてしまいたい気持ちもあるが、自分がアサシン部隊にいた期間の記憶をなくしたくないのはそれほどジララが大事な存在だからなのだろう。畏れるべき存在だというのに、恋い焦がれる気持ちが止められなかった。傘に雨が落ちる。洗い流せない強い気持ちが今も心の奥底で火を灯し続けている。火が消えたことは一度たりとてなかった。
ドロロは傘の下から腕を伸ばしてそっと紫陽花に触れた。しっとりと雨に濡れた紫陽花は冷たく、ジララの手のようだと思った。遥か昔訓練で少しだけ触れた冷たい手を思い出す。金属の義手は驚くほどに体温を持っていなかった。本当に生身の人間なのかと疑うほど冷え切っていた手は心と同じ温度だったのかもしれない。ドロロがどんなにジララを思おうと振り向いてくれることは決してないのだから。そう分かっていようと気持ちは止められるものではなかった。
ドロロは手を引いて傘の中に戻した。紫陽花なら、簡単に触れられるのに。あっけないくらい近くにあっていつでも会いに行けるのに。それに比べてジララは。ドロロは空を見上げた。薄曇りの灰色の空からは雨が降り続け、止む気配などなかった。ドロロはもう一度紫陽花を見た。そして小さく口を開く。
「きっと、明日も来るでござる」
その柔らかい眼差しが優しくまぶたで隠れるとドロロは紫陽花から背を向けた。誰も知らない、ドロロと紫陽花との約束だった。
ドロロは森の奥で自生している紫陽花を見つけたのだった。緑の中に周囲から浮くような紫色。その紫色に強く惹かれ、思った。ドロロはその紫陽花を見ているとジララ大尉を思い出すのだった。未だに彼に心を囚われ続けていることが自分の心の弱さなのだろうかとも思う。綺麗さっぱり忘れてしまいたい気持ちもあるが、自分がアサシン部隊にいた期間の記憶をなくしたくないのはそれほどジララが大事な存在だからなのだろう。畏れるべき存在だというのに、恋い焦がれる気持ちが止められなかった。傘に雨が落ちる。洗い流せない強い気持ちが今も心の奥底で火を灯し続けている。火が消えたことは一度たりとてなかった。
ドロロは傘の下から腕を伸ばしてそっと紫陽花に触れた。しっとりと雨に濡れた紫陽花は冷たく、ジララの手のようだと思った。遥か昔訓練で少しだけ触れた冷たい手を思い出す。金属の義手は驚くほどに体温を持っていなかった。本当に生身の人間なのかと疑うほど冷え切っていた手は心と同じ温度だったのかもしれない。ドロロがどんなにジララを思おうと振り向いてくれることは決してないのだから。そう分かっていようと気持ちは止められるものではなかった。
ドロロは手を引いて傘の中に戻した。紫陽花なら、簡単に触れられるのに。あっけないくらい近くにあっていつでも会いに行けるのに。それに比べてジララは。ドロロは空を見上げた。薄曇りの灰色の空からは雨が降り続け、止む気配などなかった。ドロロはもう一度紫陽花を見た。そして小さく口を開く。
「きっと、明日も来るでござる」
その柔らかい眼差しが優しくまぶたで隠れるとドロロは紫陽花から背を向けた。誰も知らない、ドロロと紫陽花との約束だった。
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