長め

「タッパーを返しに来たでござる。……あの、すごく美味しかったよ」
 ぼそぼそと先輩は言った。そして俺に近づいてタッパーを差し出す。俺は先輩がカレーを食べてくれたことに驚いた。てっきり毒でも盛られたと思い、中身ごと捨てられたと思っていた。そして先輩は少しずつ話した。
「クルル殿のことだから散々拙者に信頼させてそこから突き落とす作戦なのかと思っていたのでござるよ。申し訳なかったでござる」
「俺はただカレーを食べて欲しかっただけで。他意はないんスよ、本当に」
「分かってるよ」
 先輩は穏やかな口調でそう言った。何だか心の荷が降りたように軽くなった。
「なんていうか、断られたのがすげーショックで」
 先輩は俺の言葉に戸惑いを見せた。傷をつけてしまったことに申し訳なさを感じているようだった。
「先輩もひどくねェか? 俺のこと警戒しすぎ」
「それはクルル殿にも非があるでござるよ」
 そういや今俺と先輩の距離がとても近いことに気が付いた。これはチャンスと俺は先輩に言う。
「先輩、ここに乗ってください」 
 俺はポンポンと膝を叩く。先輩はぎょっとした顔で俺を見た。
「嫌でござるよ!?」
「ちっ、ダメか」
 膝乗せには失敗したが、先輩とだいぶ距離が縮まった気がした。

 その日先輩はブログを更新した。
「今日は友人の手作りカレーをごちそうになったでござる♪ 非常に美味でござった!」
 友人、という言葉に思わず口角が上がった。先輩の中でも俺の存在が少しランクアップしたのかもしれない。このままもっとランクアップして膝に乗せられるようになるのが目標だ、なんて言ったら先輩はまた俺のことを警戒するだろうか。
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