その他
ドロロの素顔はいつ見ても慣れない。初めて見たのはいつだったか、それすらも覚えていないほど昔の記憶だが、とにかくひどく驚いたことを覚えている。俺はあまりの造形美に息を呑んだ。マスクの下にこれほどまでのものを隠していたとは。
いつものように夜になってから俺のテントで待ち合わせをし、必ず決まった時間にドロロは来た。いつもと同じ澄ました顔でそっと口布を外す。その所作にドギマギして毎回落ち着かない。つい指先が自然とリズムを刻んでしまう。そんな様子を見かねたように笑うドロロは一層綺麗で思わず見とれそうになった。
前にギロロ君の犬歯が好きだと言われた時にどきりとしたのを思い出す。父親譲りの鋭い犬歯は自分では好きでも嫌いでもなかった。だがキスをする時にドロロを傷つけないよう注意を払う必要があることだけがネックだった。ドロロは僕は大丈夫と言わんばかりに深く差し込んだ舌が犬歯を上からなぞる。背筋がぞくぞくすると同時に口の中に血の味が広がった。
「おい……」
慌てて口を離すとドロロは少しだけ舌先を出していた。
「すまん」
ドロロは首を振って僕のせいだと言った。
「前にも言ったよね、ギロロ君の犬歯が好きだって」
ドロロは少し俯く。言い淀むように唇を動かしてゆっくりと言葉を紡ぐように言った。
「だから、その、我慢できなくて……」
俺は体の中に巡る血が湧き上がるように熱くなるのを感じた。勢いよく貪るようにドロロの唇を食む。
「ん!? 僕血が出て……」
「構わん」
ドロロが目が閉じるのを見届けて俺は目を閉じた。もっとキスに集中して欲しい。血が出るくらい本気のキスをしたい。歯並びのいいドロロの口内を舌でじっくりとなぞるとドロロは俺の背中をバシバシと叩いた。ドロロの何かを言いたげに動き回る舌を無理矢理押さえつける。今だけは文句は受け付けない。
「ぎ、ろろく……」
何とか唇を離しながらドロロは俺の名を呼んだ。俺は返事をするようにキスを落とす。ドロロは再び俺の背中を叩くが先程とは比べ物にならないくらい強い力で背中がひりひりと痛んだ。容赦ないなと思いながら仕方なく唇を離した。
「何するの……!」
ドロロは涙目になりながら俺に訴えた。肩で息をするドロロは珍しい。
「すまん、つい……」
口の中の血の味が薄まった。ドロロはテントの壁をじっと見つめていた。怒ったような目をしていて声をかけるのを憚られた。だが元はといえばドロロが悪いのではないだろうか。焚き付けたのはそっちのせいだと俺は開き直って何事もなかったかのように口を開いた。
「血は大丈夫か?」
「うん、このくらい平気」
ドロロはこちらを見て言った。平坦な声色だった。
「気にしないで」
ドロロは口布を引き上げると頭の後ろで結び始めた。俺は慌ててその口布を下ろす。まだドロロの顔を見ていたい。ドロロは驚いたように目を丸くして俺を見た。そして俺の口へ手のひらをつけた。
「駄目だよ、これ以上は」
ランタンに照らされた青い目がじっと俺を見ていた。
「また今度」
ドロロは口布を結び終えると布越しに俺の手のひらにキスをした。そしてテントを開けて外へ出た。一人きりになったテントはやけに寂しく感じられた。何よりも物足りなさが俺をかき立てた。今度がいつなのかは分からない。早くその今度が来るのを待つしかなかった。
いつものように夜になってから俺のテントで待ち合わせをし、必ず決まった時間にドロロは来た。いつもと同じ澄ました顔でそっと口布を外す。その所作にドギマギして毎回落ち着かない。つい指先が自然とリズムを刻んでしまう。そんな様子を見かねたように笑うドロロは一層綺麗で思わず見とれそうになった。
前にギロロ君の犬歯が好きだと言われた時にどきりとしたのを思い出す。父親譲りの鋭い犬歯は自分では好きでも嫌いでもなかった。だがキスをする時にドロロを傷つけないよう注意を払う必要があることだけがネックだった。ドロロは僕は大丈夫と言わんばかりに深く差し込んだ舌が犬歯を上からなぞる。背筋がぞくぞくすると同時に口の中に血の味が広がった。
「おい……」
慌てて口を離すとドロロは少しだけ舌先を出していた。
「すまん」
ドロロは首を振って僕のせいだと言った。
「前にも言ったよね、ギロロ君の犬歯が好きだって」
ドロロは少し俯く。言い淀むように唇を動かしてゆっくりと言葉を紡ぐように言った。
「だから、その、我慢できなくて……」
俺は体の中に巡る血が湧き上がるように熱くなるのを感じた。勢いよく貪るようにドロロの唇を食む。
「ん!? 僕血が出て……」
「構わん」
ドロロが目が閉じるのを見届けて俺は目を閉じた。もっとキスに集中して欲しい。血が出るくらい本気のキスをしたい。歯並びのいいドロロの口内を舌でじっくりとなぞるとドロロは俺の背中をバシバシと叩いた。ドロロの何かを言いたげに動き回る舌を無理矢理押さえつける。今だけは文句は受け付けない。
「ぎ、ろろく……」
何とか唇を離しながらドロロは俺の名を呼んだ。俺は返事をするようにキスを落とす。ドロロは再び俺の背中を叩くが先程とは比べ物にならないくらい強い力で背中がひりひりと痛んだ。容赦ないなと思いながら仕方なく唇を離した。
「何するの……!」
ドロロは涙目になりながら俺に訴えた。肩で息をするドロロは珍しい。
「すまん、つい……」
口の中の血の味が薄まった。ドロロはテントの壁をじっと見つめていた。怒ったような目をしていて声をかけるのを憚られた。だが元はといえばドロロが悪いのではないだろうか。焚き付けたのはそっちのせいだと俺は開き直って何事もなかったかのように口を開いた。
「血は大丈夫か?」
「うん、このくらい平気」
ドロロはこちらを見て言った。平坦な声色だった。
「気にしないで」
ドロロは口布を引き上げると頭の後ろで結び始めた。俺は慌ててその口布を下ろす。まだドロロの顔を見ていたい。ドロロは驚いたように目を丸くして俺を見た。そして俺の口へ手のひらをつけた。
「駄目だよ、これ以上は」
ランタンに照らされた青い目がじっと俺を見ていた。
「また今度」
ドロロは口布を結び終えると布越しに俺の手のひらにキスをした。そしてテントを開けて外へ出た。一人きりになったテントはやけに寂しく感じられた。何よりも物足りなさが俺をかき立てた。今度がいつなのかは分からない。早くその今度が来るのを待つしかなかった。
